大妃殿、静寂の重み
晩秋の陽射しが、大妃殿の障子を斜めに染めていた。
香はすでに燃え尽き、香炉の灰だけが静かに敷き詰められていた。
その瞬間、大妃ママ様の声が、冷たく広がる静寂を破った。
「中殿、今、正一品嬪と申しましたか?」
言葉の終わりは柔らかかったが、声は明らかに昂ぶっていた。
とても頭を上げることができなかった。
指先が震え、両手をぎゅっと握りしめ、唇は固く閉ざされた。
「…はい、お母様。殿下の意図がそのようにございます。」
扇子を手に持った大妃ママ様の手が、そのまま止まった。
しばらくの間、広げられることも、閉じられることもなく、静かに留まっていた。
妙な静寂の中、
ゆっくりと目を上げた。
「お母様…私が殿下のご意向を承り中殿となったのは事実でございますが、
尚宮を正一品嬪に据えることは…朝廷と内命婦の秩序までも揺るがすことでございます。
しかし…殿下が…」
知らず知らずのうちに、頭が深く下げられた。
首筋にひんやりとした空気が染み込んだ。
一瞬の静寂に頭を上げると、
大妃ママ様は何も言わず私を見ていた。
ただその眼差しが、以前とは異なり、素早く動いていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「主上が嬪の座に固執すると申したか。」
「…はい、ママ様。」
しばらく思案にふけったママ様は、扇子を畳みながら頷いた。
「やはり中殿の言葉もまた正しい。
後継ぎもいない尚宮に正一品の嬪の座を下すことは、
難しいことであろう。」
ママ様の言葉に、深い安堵感が湧いた。
(私は間違っていないんだ…)と。
当然、このとんでもないことに、お母様は私の味方をしてくださるだろう。
「お母様…」
しかし大妃ママ様は、その言葉が全て終わるよりも早く
扇子をパンと広げ、口元を覆った。
「それならば、淑儀程度であれば──
主上も受け入れるのではないか。」
その言葉に、指先が凍りついた。
初めて聞く言葉を聞いたかのように、目を瞬かせた。
ママ様の意図が理解できた瞬間、再び胸がゆっくりと締め付けられた。
「いかがですか、中殿?
この母が前に出て、主上を説得してみましょう。」
大妃ママ様はそう言い、
再び広げた扇子の後ろに、口角をそっと隠した。
その微笑みが優しいものなのか、冷徹なものなのか、分からなかった。
しばらくの間、その場に呆然と座り、動くことができなかった。
体が水に沈んだように、耳がぼうっとする気分だった。
「お母様のご意向、承知いたしました…」
心臓は激しい鼓動を止めなかった。
席から退くため、静かに立ち上がった。
手の甲が震えていた。
唐衣の中に手を入れ、指先を包んだ。
交泰殿へ向かう足取りを遅らせることはなかった。
この国の国母はたった一人、まさに私だけだ。
ゆっくりと沈む太陽と共に、
雲も徐々に気配を隠していた。
8月14日と15日の二日間、短い休暇をいただきます。
しっかりと心身を recharging し、さらに素敵な小説をお届けできるよう努めます。
いつも作品を読んでくださる読者の皆様に、心から感謝申し上げます。