秘められた本心
夜が静かに降り立った交泰殿の中、灯火が細く揺れていた。
四方が静かであったが、私の心の中は一寸たりとも静かではなかった。
筆を持って教旨を書こうとしたが、指先が思うように動かなかった。
張淑媛──その名三文字を口にすることさえ、私には容易ではなかった。
冊封は儀礼であった。
内命婦の位階と品格を守るための、中殿としての責務。
しかし私の手が止まったのは、単なる権威の問題だけではなかった。
何かが──とても深いところで、得体の知れない不快感が湧き上がっていたのだ。
その時だった。
門の外から静かに足音が聞こえてきた。
予告のない気配であった。
「中殿ママ様、主上殿下がお越しになられました。」
聞き慣れた尚宮の声、しかしその音色がいつもより浮き立っていた。
一瞬、顔が熱くなった。
(この遅い時間に、殿下が私をお探しになったと?)
ほんのわずか残っていた期待感に胸がドキドキした。
しばらく身なりを整え、最大限毅然とした声で言った。
「お通しなさい。」
いつも無味乾燥だった戸を開ける音までも、躍動感が感じられた。
だが、その期待は彼が敷居を越えた瞬間から完全に打ち砕かれた。
殿下は何も言わず部屋の中を見回した。
眼差しは静かであったが、その中に宿る気流は冷たかった。
「この遅い時間に、どのようなご用件でございますか、殿下。」
しばらく何も言わなかった彼が、慎重に言葉をかけた。
「中殿に頼みがあって立ち寄った。」
彼の言葉は低く静かであったが、刃物のような気運が宿っていた。
息をのんだ。
頭を上げられぬまま唇を開いた。
「何なりと仰せつけくださいませ、殿下。」
言葉が終わるか終わらないうちに、彼の声が突き刺さった。
「張尚宮を、正一品嬪に冊封してくれ。」
その言葉が矢が突き刺さるように心臓に突き刺さった。
その言葉を聞いて何も言えなかった。
あまりの驚きに礼儀をわきまえることも忘れ、正面から殿下を見つめた。
首筋を冷たい空気が通り過ぎていった。
指先が冷たくなった。
しっかりと気丈に振る舞わなければ、震えが目に見えてしまうかもしれない。
「で…殿下?」
最大限落ち着こうとしたが、
震えはそのまま露わになってしまった。
「殿下、これはあり得ないことにございます。
どうして尚宮の身分から、一瞬で嬪へと封じろと仰せられるのですか。
これは前例のないことにございます。」
彼は沈黙した後、一歩近づいた。
影まで私の前を覆うほど近くなった。
「前例はない。私が最初なのだから。
そして張尚宮も、以前にも今後にも現れることのない者だからだ。」
その瞬間、胃がねじれるようだった。
血が冷めるという感覚があるとしたら、まさにこのようなものだろう。
まるで誰かの罪を問うときのように、私を見つめた。
「中殿がまだ閨秀だった頃に訪ねて来られたとき、私に約束されましたよね。
私はその約束を信じて頼んでいるのだ。」
声を出すまでに三度、息を整えた。
そうしなければ、声が出ないほどだった。
「ですが殿下、後宮の爵号は内命婦の秩序と繋がっております。
正一品の座は…礼曹と朝廷の臣下たちまで納得できることではございませぬか。
嬪への冊封は…あまりにも度を越し、急ぎすぎにございます。」
私の声が思ったよりはっきりと出て、私自身が驚いた。
しかし、すでに心の中は遠い闇に染まり始めていた。
彼はしばらくの間、何も言わずに私を見つめた。
その視線があまりにも重く、息さえ長く吐くことができなかった。
「張玉貞が私にとってどのような女か、中殿が知っていたら、
私の前でそんなことを口にできないはずです。」
低く唸るような声に、私も知らずにその目を見つめた。
彼の目には感情が静かに揺らめいていた。
怒りと憐憫、そして所有欲。
そのどれも隠そうとはしなかった。
(張氏が…これほどまでに殿下にとって重要な人物だったのか。
ただ心が留まるだけの情ではなかったと…?)
彼の心がこれほど私の心を打ったことはなかった。
こんな風に感情を露わにする性分ではなかったし、
自分に対してはなおさらであった。
とうてい上がらない口角を、無理に引き上げた。
小刻みに震える指先を、唐衣の下に急いで隠した。
顔に痙攣が起きるかのように震える感覚に、急いで頭を下げた。
崩れ落ちる気持ちを、品位という殻でしっかりと包まなければならなかった。
そうしてこそ、この心がばれないだろうから。
彼が背を向け、きっぱりと言葉を残した。
「嬪に冊封してくれ。私の意思だ。」
戸が閉まる音が聞こえるまで、
そして人気が絶えて何も音がしなくなるまで、
頭を上げることができなかった。
嬪。正一品嬪。
私は静かに座り、
とうてい書けず埋められなかった教旨を、ビリビリと引き裂いた。
紙が引き裂かれる音に、心も共に砕け散るようだった。
もうこれ以上流す涙もなかった。
波紋は静かに始まっていた。
星の光の下、お茶が冷めていくように、ゆっくりと。とてもゆっくりと。