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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第二章 破局の始まり、そして深まる心
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秘められた本心





夜が静かに降り立った交泰殿キョテジョンの中、灯火が細く揺れていた。

四方が静かであったが、私の心の中は一寸たりとも静かではなかった。

筆を持って教旨きょうしを書こうとしたが、指先が思うように動かなかった。

張淑媛チャンスクウォン──その名三文字を口にすることさえ、私には容易ではなかった。

冊封は儀礼であった。

内命婦の位階と品格を守るための、中殿チュンジョンとしての責務。

しかし私の手が止まったのは、単なる権威の問題だけではなかった。

何かが──とても深いところで、得体の知れない不快感が湧き上がっていたのだ。


その時だった。

門の外から静かに足音が聞こえてきた。

予告のない気配であった。

「中殿ママ様、主上殿下がお越しになられました。」

聞き慣れた尚宮サングンの声、しかしその音色がいつもより浮き立っていた。

一瞬、顔が熱くなった。


(この遅い時間に、殿下が私をお探しになったと?)

ほんのわずか残っていた期待感に胸がドキドキした。

しばらく身なりを整え、最大限毅然とした声で言った。


「お通しなさい。」


いつも無味乾燥だった戸を開ける音までも、躍動感が感じられた。

だが、その期待は彼が敷居を越えた瞬間から完全に打ち砕かれた。

殿下は何も言わず部屋の中を見回した。

眼差しは静かであったが、その中に宿る気流は冷たかった。


「この遅い時間に、どのようなご用件でございますか、殿下。」


しばらく何も言わなかった彼が、慎重に言葉をかけた。


「中殿に頼みがあって立ち寄った。」


彼の言葉は低く静かであったが、刃物のような気運が宿っていた。

息をのんだ。

頭を上げられぬまま唇を開いた。


「何なりと仰せつけくださいませ、殿下。」


言葉が終わるか終わらないうちに、彼の声が突き刺さった。


「張尚宮を、正一品嬪チョンイルプムピンに冊封してくれ。」


その言葉が矢が突き刺さるように心臓に突き刺さった。

その言葉を聞いて何も言えなかった。

あまりの驚きに礼儀をわきまえることも忘れ、正面から殿下を見つめた。

首筋を冷たい空気が通り過ぎていった。

指先が冷たくなった。

しっかりと気丈に振る舞わなければ、震えが目に見えてしまうかもしれない。


「で…殿下?」


最大限落ち着こうとしたが、

震えはそのまま露わになってしまった。


「殿下、これはあり得ないことにございます。

どうして尚宮の身分から、一瞬でビンへと封じろと仰せられるのですか。

これは前例のないことにございます。」


彼は沈黙した後、一歩近づいた。

影まで私の前を覆うほど近くなった。


「前例はない。私が最初なのだから。

そして張尚宮も、以前にも今後にも現れることのない者だからだ。」


その瞬間、胃がねじれるようだった。

血が冷めるという感覚があるとしたら、まさにこのようなものだろう。

まるで誰かの罪を問うときのように、私を見つめた。


「中殿がまだ閨秀だった頃に訪ねて来られたとき、私に約束されましたよね。

私はその約束を信じて頼んでいるのだ。」


声を出すまでに三度、息を整えた。

そうしなければ、声が出ないほどだった。


「ですが殿下、後宮の爵号は内命婦の秩序と繋がっております。

正一品の座は…礼曹イェジョと朝廷の臣下たちまで納得できることではございませぬか。

嬪への冊封は…あまりにも度を越し、急ぎすぎにございます。」


私の声が思ったよりはっきりと出て、私自身が驚いた。

しかし、すでに心の中は遠い闇に染まり始めていた。

彼はしばらくの間、何も言わずに私を見つめた。

その視線があまりにも重く、息さえ長く吐くことができなかった。


張玉貞チャン・オクチョンが私にとってどのような女か、中殿が知っていたら、

私の前でそんなことを口にできないはずです。」


低く唸るような声に、私も知らずにその目を見つめた。

彼の目には感情が静かに揺らめいていた。

怒りと憐憫、そして所有欲。

そのどれも隠そうとはしなかった。


(張氏が…これほどまでに殿下にとって重要な人物だったのか。

ただ心が留まるだけの情ではなかったと…?)


彼の心がこれほど私の心を打ったことはなかった。

こんな風に感情を露わにする性分ではなかったし、

自分に対してはなおさらであった。


とうてい上がらない口角を、無理に引き上げた。

小刻みに震える指先を、唐衣タンウィの下に急いで隠した。

顔に痙攣が起きるかのように震える感覚に、急いで頭を下げた。

崩れ落ちる気持ちを、品位という殻でしっかりと包まなければならなかった。

そうしてこそ、この心がばれないだろうから。


彼が背を向け、きっぱりと言葉を残した。


「嬪に冊封してくれ。私の意思だ。」


戸が閉まる音が聞こえるまで、

そして人気が絶えて何も音がしなくなるまで、

頭を上げることができなかった。


嬪。正一品嬪。


私は静かに座り、

とうてい書けず埋められなかった教旨を、ビリビリと引き裂いた。

紙が引き裂かれる音に、心も共に砕け散るようだった。

もうこれ以上流す涙もなかった。

波紋は静かに始まっていた。

星の光の下、お茶が冷めていくように、ゆっくりと。とてもゆっくりと。

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