花びらが散っても
秋が深まる夜、
応香閣の軒下には月明かりが静かに差し込み、
部屋の中では、おぼろげな灯火だけが小さな息遣いのように瞬いていた。
ひどく険しくなっていた彼の顔が、徐々に元に戻った後、
日常的な会話以外は口にしようとしない彼の様子を見て、得体の知れない違和感を覚えた。
あまり話したがっていないようだったので、
敢えて些細な話で会話を続け、
夕食を共にした後、しばらく便殿に行ってくると言った彼を待っていた。
彼と共に眠った場所。
その腕の中で朝まで目を閉じて休んでもよさそうだったが、
どういうわけか眠気が来なかった。
(はあ…どうも最近、寝つきが悪くて…。)
彼なしで眠りにつくと、
必ず金縛りにあったように動けなくなり、
その闇に閉じ込められて抜け出せない夢を見るのだった。
(ここ、殿閣の地相でも悪いのかな…。)
現実では一度も感じたことのない金縛りの感覚を、
彼がいないたびに感じていると、
すっかり精魂尽き果てるような気分だった。
雨戸を半分開けたまま、
両手で茶碗を包み込んでいた。
その上に落ちた小さな花びらが可愛らしかった。
指先にはまだお茶の温もりが彼の指先のように残っており、
胸の片隅からゆっくりと小さな不安が静かに広がっていった。
そうして一人でいる時間が長くなったその時、
物音もなく近づいてきた温もりが、静かに背中に着地した。
息遣いと温かさ、そして彼の匂い。
わざわざ顔を向けなくても分かる人。
肩に潜り込む彼の行動が、小さな震えを誘った。
「殿下…。」
私の呼びかけに、チュッと音を立てて肩にキスをし、ニヤリと笑う彼が
どれほど愛おしく見えたことか。
「後ろ姿までもこれほど美しいのだから、私がじっとしていられるはずがないではないか。」
これがバックハグのイチャつき?
(はあ…心臓がもたないわ、殿下。)
少し微笑んで彼を離した。
何だかとても疲れているように見える彼の姿に、
そっと彼の頭を腕の中に抱きしめた。
ドキドキと高鳴る心臓もまた、彼を抱きしめ、慰めた。
「何かございましたか。」
彼の頭を抱きかかえていたので、びくりとしながら首を横に振るのを同時に経験した。
(何かあったのね…。)
「もしかして、私のことで困ったことが…。」
言葉が終わるよりも早く、私の腰をぎゅっと抱きしめる
彼の子どものような姿に、
思わず笑いがこぼれた。
言われなくても分かる。
朝廷では毎日私を追い出せと歌い、
大妃ママ様の小言に中殿ママ様の存在まで、
朝鮮の王と呼ばれているが、その名は誰よりも重い足かせであった。
「愛している、玉貞よ。」
息を吸い、そして吐いた。
長く静かな呼吸の終わりに、彼の唇が降り立った。
(またこうやって、なあなあにしようとしてるのね…。)
聞きたいことが山ほどあったが、ただ触れ合った唇に溶けていくこと以外に
できることはなかった。
不安な心を、彼の腰を抱きしめることで代わりとした。
突然の私の動きに、一瞬戸惑った彼は、
少しだけさらに深く、私の方へと入り込んだ。
表に出せない不安な心を察したかのように、
彼はさらに激しく私を追い詰めた。
指先が彼の胸のあたりを探った。
ドキドキと高鳴る心臓が感じられた。
まるで私の手が触れる前から、
彼の心臓が私を呼んでいたかのように。
長くて長い呼吸を交わした後に、彼が私をぎゅっと抱きしめた。
耳元に留まる息遣い。囁きよりも静かな声。
「お前の居場所は私の隣だ。どこにも行くな。」
小さく降り立った声。
震える心に、何も言葉を発することができなかった。
ただ静かに頷いた。
襲い来る得体の知れない不安感を、静かに心に埋めた。
話すこともできなかったし、話したところで信じてもらえないだろうから。
ただ私は
花びらが散ったとしても、
あなたの手を離さないと──
静かに誓うこと以外に、できることはなかった。
その夜、
愛は言葉もなく、さらに深く育っていった。
月明かりはさらに透明になり、
灯火は息を潜めたまま、私たちの時間の中でゆっくりと揺れていた。