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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
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柔らかな陽射しが宿る



他の日と変わらない平凡な日、ヒジェは黙って茶を飲んでいた。

澄んだ茶碗の上に軽く湯気が立ち上り、部屋の中は静かな静寂が漂っていた。のどかな午後だった。


その時、そののんびりとした静けさを破って、慌てて走ってきた下男が、戸口で頭を下げた。


「あの…旦那様、宮廷からお便りが参りました。奥様が…事故で頭をお怪我なされたとのことです。」


ヒジェの指先が止まった。

茶碗を置いた彼は、短く息を吸い込んだ。


「どうやって怪我をしたのだ。」


「詳しい内情は存じませんが、意識はお戻りになったとのことです。」


ヒジェはしばらく窓の外を眺めた。

しかし、下男はためらいながら付け加えた。


「ですが…奥様が記憶を失われたそうです。」


ヒジェの眉間がゆっくりと狭まった。


「……それは…どういうことだ?」


低く呟く声。

彼はやがて首を振り、ゆっくりと席を立った。


「支度をしろ。今日、宮廷に行く用事がある。そのついでに、オクチョンに会ってこよう。」


慌ただしく支度をして出て行ったヒジェの部屋には、相変わらず湯気の立ち上る茶碗だけが、その場に残っていた。


ヒジェが動いたという知らせは、宮廷内にもあっという間に広まった。


「チャン・ヒジェ旦那様ですって!?」

「あの方、一度お顔を拝見するのが夢でしたわ!」

「いや、一度微笑んだだけで、女官が三人も同時に倒れたって話よ…!」


チャン・ヒジェ


張玉貞チャン・オクチョンの兄。

端正で真面目ながらも、どこか遊び人のような余裕が漂う男。

誰が見ても張玉貞の兄だと信じるほど、美しい容貌で人を惑わす才を持った人物だった。


馬に乗って宮廷の門に到着した彼は、絹の道袍トポを軽く払って馬から降りた。

数えきれないほどの視線が一斉に彼に向けられた。ヒジェは視線など気にもしなかった。

いつもそうしてきたかのように自然に手綱を渡し、悠然と歩いた。

道袍の裾を掠める風さえ、計算されたかのように自然だった。


女官たちの居所の前。

ヒジェは静かに歩みを止めた。

居所を通りかかった宮女が駆け足で中へ知らせ、

しばらくして、花の香りがほのかに漂う道の先に、オクチョンが姿を現した。


ヒジェは一歩前へ出た。

ゆっくりと歩いてくるオクチョンの姿を見つめる彼の目が、細く震えた。

奇妙だった。

外見は以前のままだが、何かが確かに変わっていた。

自分がこれまで見てきたオクチョンは、いつも真っ直ぐでしっかりとした雰囲気を持っていた。

溢れんばかりの気品、乱れのない身のこなし。


だが今、オクチョンの姿には、何かそのすべてが崩れ落ちたような違和感があった。

ヒジェは近づきながら、軽く微笑んだ。


「これはこれは。我らの堅物なオクチョンではないか。」


ああ…この人がお兄さんだったのね…。


明るく笑う微笑みに、記憶の片隅にいた「お兄さん」という人物が浮かび、私は本能的に顔をしかめた。


(……何これ、本当に。このお兄さん、なんでこんなにイケメンなの。遺伝子どうなってるの…。)


お兄さんは私の隣に座り、平然と話し始めた。


「前はあまりに堅苦しくて、周りにいじめられたりしないかと心配だったけど。今は少し人間らしく見えるな、お前。」


彼の言葉に、私はどもりながらかろうじて口を開いた。


「お兄様、私は…今、体が優れず…記憶も定かではありませぬ…」


ヒジェは軽く失笑を漏らした。

そして、すべて承知しているかのように言葉を続けた。


「だから良いんだ。お前は今、宮廷で一番輝く星じゃないか。」


そう言いながら、慎重に私の髪をかき上げた。

手つきは優しかったが、言葉は冷たかった。


「殿下も、お前にもう完全に夢中になったようだ。違うか?」


一線を越えるような行動に、私は思わず声を荒げた。


「何を仰るのですか!私はっ」


(なんでお兄さんまで来て、私を混乱させるのよ…。)


彼は私をからかうように笑いながら言った。


「そうだ、そのままでいい。戸惑った眼差し、知らないふり、それでこっそり微笑んでやれば、殿下は全部お前の望み通りにしてくださるさ。」


的を射ていた。

何も知らないという目をしながらも、その奥には冷たく鋭い刃を持つ人だった。

宮廷の人々をすべて騙せていると思っていたのに、この人は正面から私を見抜いていた。

やはり兄妹は兄妹だった。

その長い年月で培われた感覚は無視できなかった。


ヒジェは最後に窓の外を眺めた。


「お前の行く先に邪魔になるものは、俺が全部片付けてやるから、お前はただ前だけを見て行けばいい。」


遊び人のようにふざけた態度で話したが、その言葉には、確かに骨があった。

過去の記憶を辿ってみると、間違いなくこの人は、私が宮廷に入った理由の一つだった。


しばらく考えにふけっていた、その時だった。

お兄さんが静かに顔を近づけ、

私をじろじろと見つめた後、微笑んで言った。


「なあ、お前、今の方がずっと綺麗だ。」


……このお兄さん、味方だと思っていたのに、なんだか悪役みたいだ。

遊び人のようにイケメンな、悪役のようなお兄さん。

立て続けに畳み掛ける彼の言葉に、呆れて思わずふふっと笑いがこぼれた。

記憶を辿ってみても、この人は家門と家族のために生きてきた人だった。

オクチョンには悪意もなく…関係はただ良かったらしい。

風がそっと頬をかすめて通り過ぎた。

お兄さんの余裕のある微笑みが、そのかすかな風の筋の間に、ゆっくりと広まっていった。


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