大妃殿の朝
陽が窓枠を越える前、
宮廷には先に静寂が訪れた。
ほのかに広がる古くからの香のように、
朝の時間は大妃殿の庭を静かに包んだ。
大妃はいつものように席に着いており、
その前に中殿となった素衣が慎重に歩みを進めた。
美しい音さえ立てまいと爪先を丸め込み、
端正に腰をかがめて礼を捧げた。
「おばばさま、張尚宮を…宮へお迎えしたいと存じます。
殿下のお志もございますゆえ、どうかお汲み取りくださいませ。」
その言葉が全て届くまで、
部屋の中では慎重な息遣いすら許されなかった。
大妃は長い間、視線を伏せていた。
(そうだ、おばばさまならば…
反対なさるかもしれない。
叔父様は、誰よりも張尚宮と敵対してきたと仰らなかったか。)
思ったよりも長い大妃の沈黙に、頭を垂れていた顔を上げた。
その扇の向こうの無表情な顔からは何も読み取れなかった。
ついに目を上げ、ごく小さく頷いた。
「中殿の思うようにしなさい。この母も殿下のお志に従いましょう。」
短い一言。
感情の余白──
それは許諾であった。
中殿はしばし立ち止まった。
何かを打ち付けられたように、
自分が望んだ答えではないというように、しばし眉根を寄せた。
その瞬間、大妃の眼差しが素早く変わった。
そして、すぐに我に返ったように再び頭を下げた後、
「はっ、それでは、殿下のお志を奉じ、入宮を進めさせていただきます、おばばさま。」
震える声を抑えようと何度息を吸い込んだか分からなかった。
大妃は分かったというように頷き、
中殿は最大限に丁重で淑やかな姿勢で礼を整えた後、背を向けて出て行った。
その後ろ姿からは、いかなる感情も読み取れなかった。
ただ静かに、何かを固く閉ざした唇のように、硬い線がそこにあっただけだった。
その場に残された大妃は、静かに窓の外を眺めた。
梅はもう散り、萌黄色の葉が風に少しずつ揺れていた。
眼差しは遠かったが、その中には穏やかな心がたたえられていた。
「宮が…私邸よりは安全であろう。」
誰も聞くことのできなかったその言葉は、
ただ静かに静寂の下へ沈んでいった。
中殿が再び中宮殿に入った時、宮の中にはいつの間にか陽が広がり始めていた。
しかし、その光の下に立つ彼女の影はひときわ長く重かった。
張尚宮を迎え入れることが避けられない「取引」であったという事実が、
襟のように心を締め付けてきた。
席に着き、教旨を書く準備をしながら、
彼女は長い間、筆を手に取ることができなかった。
指先は以前から震えていた。
彼女は分かっていた。
張尚宮が再び宮へ入ってくれば、この場所の空気は変わるだろうと。
誰よりもその女がもたらす波紋をよく知っていた。
しかし、抗うことのできない波となった以上、
今、彼女はその波を受け入れる立場に立たねばならなかった。
彼女はついに筆を取り、教旨を書き綴った。
筆先が紙を押す感覚が、心を圧し潰す感覚と似ていた。
その夜、
中殿は布団の中でも目を閉じることができなかった。
月光が障子を伝って広がり、彼女の横頬を撫でた。
静かな夜、
内面は休む間もなく揺れ動いていた。
宮の静寂の中で、最も大きく波打つのは
中殿自身の心であった。
しかし結局、彼女は深く息を吸い込んだ。
「守らねばならぬ…中宮の座を。」
独り言のようであったが、その言葉は自らの決意でもあった。
目を閉じた彼女の顔の上に
風が静かに、触れるように降り注いだ。
眠った顔のようであったが──
彼女はまだ、
目を覚ましていようと努めているようであった。
まぶたの下で、語られぬ心が静かに流れた。