冊封の朝
秋の入り口。
漢陽都城にはまだ深い緑の気が残っていたが、
宮中は既に息詰まるような緊張感に包まれていた。
夜明け前から大闕は巨大な軍が動くように慌ただしく、
赤い塀は青い空の下、鋼鉄の城郭のように高くそびえ立っていた。
大殿の前庭は、五色の絹で飾られた帳と
金色の龍の紋様の旗で埋め尽くされていた。
百官たちは、まるで堅固な兵士のように寸分の乱れもなく整列し、
各品階の宮人たちは蒼白な顔でそれぞれの持ち場を守っていた。
銅鑼と太鼓、笛の音が低く響き渡り、
その荘厳な音律は、単なる祭典ではなく、
朝鮮という巨大な戦場で、新たな国母を迎える
悲壮な宣戦布告のように天地に鳴り響いた。
玉座の上の粛宗の顔は、冷たい氷のように端正で、
その眼差しは深淵を測り知れぬほどであった。
感情を宿しつつも露わにせぬ瞳。
全てを見通しながらも、
いかなる人間的な温もりも含まぬ冷たさ。
彼の存在だけで、その場は息をするのも憚られるほどであった。
やがて、華やかな儀仗隊が整列した道を、一人の女性がゆっくりと歩み入った。
足取りごとにほのかな香りが立ち上り、
刺繍された衣の裾が擦れる音までもが、息を潜めた大殿の静寂を鋭く引き裂くようであった。
五色の絹で刺繍された最高品階の翟衣は
彼女の細い体をまるで甲冑のように圧倒するかのごとく、
頭には数多くの龍と鳳凰が彫られた大首が
その重さで肩を圧し潰した。
その巨大な影が地面を長く引きずっていた。
西人の領袖、閔維重の娘、今まさに国母となる女性、素衣であった。
紅と坤脂で化粧した顔は、
儀礼の静寂の中で一層はっきりと浮かび上がったが、
その目の下に滲む微かな震えまでは隠しきれなかった。
一国の「中殿」となる至厳なる宿命。
しかし同時に、この苛烈な政略の中にあっても、
自身を見つめてくれる一人の男の情婦であることを願う切なる欲望。
その全てが薄い瞼の間で炎のように危うく交錯した。
彼女の心臓は、ドクン、ドクン、ドクン。
まるで戦争を告げる太鼓の音のように激しく鳴り響いた。
彼女は慎重に顔を上げ、玉座の上の粛宗の視線を探した。
その視線に、か細い希望をかけた。
たった一度の温かさ、
たった一瞬の人間的な温もりを望んだ。
しかし、その願いもまた、落ち葉が砕けるようにカサカサと音を立て、
胸の奥底へと埋もれてしまった。
粛宗の目は、まるで虚空を見るかのように焦点が定まっておらず、
生きている人間を見る目ではなかった。
精巧に削り出された冷たい彫像のように、
粛宗の視線の中にはいかなる感情も、
いかなる約束も含まれていなかった。
彼女は心の中で小さくため息を飲み込んだ。
彼の深く無関心な瞳は、彼女の胸の奥で
微かに燃え上がっていた小さな火種までも、残酷に消し去った。
彼女の頬に広がりかけていた淡い紅潮は痕跡もなく消え失せ、
顔には避けられない絶望と、青ざめた冷ややかな諦めだけが満ちていた。
王の無関心という刃が、
何よりも鋭く彼女の心臓を正確に突き刺す瞬間であった。
玉座の下、大妃は簾の奥に座り、この全ての光景を見守っていた。
彼女の顔は影の中にあったが、
その眼差しだけは誰よりも鮮明であった。
中殿の登場、西人の歓喜、そして粛宗の無表情な顔。
この全ての断片を静かに瞳に収めていた。
その深さを測り知れぬ眼差しには、奇妙な冷たさが宿っていた。
一方、西人の大臣たちは歓喜を隠しきれなかった。
彼らの領袖である閔維重の顔には、勝利感に満ちた笑みが溢れていた。
自らの党派が、ついに宮中の中心に確固たる地位を築く瞬間であった。
彼らの眼差しは征服者のそれのように燃え盛っていた。
朝鮮の全ての権力が完全に彼らの手に入ったかのようであった。
この勝利の祭典の中で、
中殿の冷たく凍りついた眼差しは、静かに埋もれていった。
冊封の儀式が続いた。
教命文が朗読され、
玉冊と金印が授けられる全ての行為は、
寸分の狂いもなく法度に則り厳粛に執り行われた。
粛宗と素衣は向き合って再拝を捧げ、
合巹礼の酒杯を交わした。
この全ての至厳なる儀礼が、華やかな礼服と
厳粛な雰囲気の中で繰り広げられたが、
その中心にはただ冷たい冷気だけが満ちていた。
素衣の手は、確信のない未来と避けられぬ悲劇への深い恐れに
微かに震えていた。
きれいに整えられた爪の下に、
冷たい真実が隠されていた。
彼女が触れることができるのは王の温もりや愛ではなく、
ただ冷たい王室の法度と重い責任だけであるという事実。
殿下の瞳は相変わらず無関心で、
その中に彼女のための場所は、ほんのわずかたりともなかった。
太鼓の音、銅鑼の音、その全てが彼女の耳には巨大な
戦争の序幕を告げる不吉なこだまとして響くばかりであった。
その瞬間、
彼女は悟った。
この燦爛たる冊封式こそが、最も過酷な戦いの序幕であると。