決定の夜明け
数日後、真昼の宮廷。
三簡択の結果は、たちまち広まった。
「閔氏家の素衣様が中殿に簡択された」という知らせが、
内命婦を越え、宮中内外に広がり、
瞬く間に朝廷を覆った。
大妃殿の奥、空色が薄く敷かれた板の間の端。
大妃はすでに沈黙で全てを整理していた。
粛宗からの伝言が届いたのは、前日の夜。
短い言葉だった。
「簡択を完了せよ。」
たった一行、その一言に、
王の心がどちらの方向を選んだかが込められていた。
閔維重はその知らせを誰よりも早く知った。
きちんと結ばれた道袍の紐を整えながら、
静かに頷いた。
彼はまるでこの結末が
最初から決まっていたかのように
静かに笑った。
「素衣よ。」
低い声が廊下の端をかすめた。
彼女が体を向けると、
閔維重の眼差しが短く揺れた。
「簡択が完了した。
もう…立派な中殿ママとなられるだろう。」
その言葉に、
閔素衣はしばらく息を止めた。
彼女の顔に薄い笑みが浮かんだ。
「…左様でございますか。」
囁くように、
唇の端に結ばれた短い返事。
その笑みは、
苦労の末に望む目的を手に入れた者のものだった。
遠ざかる彼女の後ろ姿に向かって、
閔維重は静かに頭を下げた。
◆◆◆
市場。
提灯が早くも灯り、
両班も常民も関係なく、
人々は酒杯を手に陽気な噂話を交わしていた。
「ついに中殿ママが簡択されたそうだよ!」
「閔氏の家門だそうね、やはりすごい家門だわ!!」
一方では管弦楽が鳴り響き、
子供たちは飴を分け合いながら走り回っていた。
宙に舞った紙凧の一つが
ひらひらと揺れながら、ある男の肩に落ちた。
張希載だった。
口角をわずかに巻き上げた表情は
歓喜でも、冷笑でもない
得体の知れない気色だった。
彼は紙凧をゆっくりと取り外し、
市場の真ん中を静かに歩いた。
人々の間を滑るように通り過ぎ、
道袍の裾を撫で、
視線を上げて目の前に立つ古い屋敷を見上げた。
「久しぶりだな。」
希載の声は低く、
その中には何か古い軌跡が埋もれていた。
大門が慎重に開き、
彼は足を踏み入れた。
門が閉まる瞬間、
外の歓喜は
彼の影の向こうへ静かに消えた。
◆◆◆
その時、便殿。
蝋燭は半分ほど燃えていた。
風は穏やかで、
障子戸の向こうの夜は限りなく暗かった。
粛宗は机の前に座り、
何もせずにいた。
手には筆が握られていたが、
灯火の下に広げられた文書には
一文字も書かれていなかった。
彼は頭を下げた。
まぶたがゆっくりと降り、
その中で遥かなる光景が一つ浮かんだ。
—
池のほとり。
彼女の笑い声。
水面に落ちた花びら。
その笑い声の果てに、
「殿下…」と呼ぶ
あまりにも鮮明な声。
心が少し痛んだ。
心臓が静かに締め付けられていた。
そっと手を上げ、
文書の端をなぞった。
しかし何も書けないまま
筆を置いた。
そして静かに席を立った。
「尚膳。」
門の外で待機していた気配が
小さく揺れた。
「はい、殿下。」
粛宗は板の間の端まで進んだ。
「私邸へ行く…準備せよ。」
尚膳は頭を下げて退がった。
宮中はまだ静かだった。
夜は深く、
星の光は届かなかった。
しかし、
彼の足元は揺らがなかった。
彼女がそこにいること。
彼女がまだ、
自分の息の中に生きていること。
その事実一つだけでも
今この足取りは
ためらいなく進んでいた。
そして彼が再び、
彼女に向かって歩き始めた。