冷たい謁見
早朝、便殿の前。
静かな風が衣の裾を撫でた。
日差しは静かに広がっていたが、
素衣の足元は重く震えていた。
尚膳が慎重に中に入った。
「殿下、閔氏家の素衣様が
殿下への謁見を請うております。」
しばらくの間、静寂が流れた。
粛宗は顔を向けた。
わずかに眉を寄せたが、
すぐに無関心なように頷いた。
「通せ。」
門が開いた。
素衣ははにかむように、
花のような笑みを浮かべた顔で慎重に入って行った。
幾重にも重なった裙子の裾を丁寧に整えながら、
床に膝をつき、丁重に礼を尽くした。
「殿下、玉体安寧でいらっしゃいますか。」
粛宗は冷たく凍った眼差しで
彼女を静かに見下ろした。
しばらくの間、何も言わず
その場に座っていた。
そして低く言った。
「ええ、おかげで。座られよ。」
素衣は慎重に身を起こし、
きちんと席に着いた。
指先は静かに組まれていたが、
その中で微かに震えていた。
短い静寂が流れ、粛宗が口を開いた。
「どういう…ご用件で参られたのですか。」
一度息を呑み、
明るい笑みを浮かべた。
「殿下、恐縮ながら小人は…
朝鮮のために命を尽くす覚悟ができております。」
息を整えるように言葉の終わりを整えながら続けた。
「どうか、小人に中宮の座を満たす機会をお与えください。」
粛宗は微動だにしなかった。
その冷たい視線は
彼女の顔を通り過ぎ、
見えないどこかを見つめていた。
そこには
池のほとりで明るく笑っていた玉貞の姿が重なっていた。
胸の奥深くがずきりと痛んだ。
彼女は彼の視線を読み取らないふりをして
慎重に言葉を続けた。
「併せて…
私邸におられる張尚宮も
殿下の傍にお迎えになるべきではございませんか。」
粛宗の眉が
目には見えないほど微かに震えた。
彼女はその小さな震えを見逃さなかった。
心の片隅で
確信が静かに頭をもたげた。
手をきちんと組んだまま、
閔素衣はより明るく笑い、囁くように言った。
「中殿となった内命婦の首長が
彼女を呼び入れるのであれば、
それについてあれこれ言う者はいないでしょう。」
粛宗は何も答えなかった。
素衣は慎重に深く頭を下げた。
そしてはっきりと告げた。
「殿下のお答えを…お待ち申し上げます。」
その言葉を残し、
素衣は慎重に身を起こし、
ゆっくりと退がった。
裙子の裾が床を擦る音だけが
便殿の中に長く響いた。
便殿の門を出た途端、
明るく咲き誇っていた笑顔は影も形もなく
一瞬にして冷え切った。
両手を固く組んだまま
空っぽの庭を通り過ぎながら
しばらく空を見上げた。
日差しは相変わらず燦爛だったが、
胸ははるか遠く、重かった。
これが…本当に正しい道なのだろうか。
指先は冷たく固まっており、
内側では小さな震えが絶え間なく広がっていた。
それでも
彼女は唇を閉じ
小さく、ごく小さく笑みを浮かべた。
近くにいれば…いつかきっと…。
便殿を振り返った。
そこは、
まるで手に届きそうに近くにありながらも
一生届かない
はるかな空のようだった。