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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第二章 破局の始まり、そして深まる心
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語られぬこと

大妃殿は今日も静寂に包まれていた。

お母様は慣れた席に端座し、寸分も乱れることがなかった。

まだ夜が明けきらぬ朝の気配が、かまどの灯りを避けるように、静かに奥へと染み込んでいく。


丁重に挨拶を捧げた。


主上チュサンをこうしてお呼びしたのは、私的な理由ではございません。」


淡々と落ち着いた声。恭しいが、断固としていた。


「ご推察のことと存じます。」


頭を下げたまま、動かなかった。

お母様は茶杯を手に取り、梅の紋様がその曲線に沿ってほのかに浮かび上がる。

長い沈黙だった。

茶が冷めていく間、

何の言葉も交わされなかった。

しかしその中に、

数えきれないほどの無言の言葉が行き交っていた。


お母様はそっと指先を離し、茶杯を置いた。


「あの子…主上の手の内にございますか。」


質問というよりは、

既に知っている者の最後の確認のように、

漏れ出た言葉だった。

顔を上げなかった。

一文字、一呼吸さえ、

軽々しく吐き出すことはできなかった。

その言葉を否定せず、

かといって肯定もせず。


少しして、


「無事ならば、それで良いでしょう。」


眼差しも、言葉の尻も、

何一つ揺らぐことはなかった。

しかし私は、

その短い余韻の中で、

静かに息を整えた。


立ち上がろうとした瞬間、

少し立ち止まった。

後ろを振り返ることはなかった。

ただ、

重々しい気配の裏に隠された、

硬い何かが感じられた。

全てを知りながらも覆い隠し、

それを知りながらも揺るぎなく座している人。

お母様は、

どんな言葉よりも多くのものを示していた。


部屋を出ると、

一歩一歩が慎重になった。

私が心に抱いていることを、

彼女は結局問わなかった。

それは、

あの子への配慮であり──

もしかしたら、私への信頼。


信じても…いいだろうか。


短い独り言が、

静かに喉元を通り過ぎていった。


便殿ピョンジョンに戻る道。

内官も、護衛も静かだった。

宮殿の塀を回り出ると、

胸の奥に静かに押し込めていた息が、

少しずつ漏れ出た。

思ったより長く、

お母様の眼差しが心を捉えていた。


戸を開けて入った便殿の中、

道袍の裾を脱ぎながら、

静かに長い息を吐き出した。

少しは…

安心してもいいだろうか。



席に着くや否や、

目を閉じた。

彼女が思い浮かんだ。

赤みを帯びた頬。

寝汗に濡れた額。

動くたびに震えていた指先。


…体は少しは良くなっただろうか。


なんとなく胸元が重くなった。

あれほどか弱い人を、

腕の中に抱きしめた夜が、

あれほど深かったことが、

今になって妙に押し寄せてくる。


静かに目を開けた。

この全ての混乱の中心に、

彼女がいた。

彼女が…

とても恋しい。


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