目覚めの朝、彼の温もり
まぶたが、くすぐったい。
おぼろげに降り注ぐ、朝日の先。
痛いほどの暖かさに、そっと目を開けた。
絹の布団の隙間から染み込む朝の空気には、
少し前まで肌を覆っていた、誰かの体温が、まだ残っていた。
息を吸い込むと、慣れ親しんだ香りが、鼻先をくすぐる。
温かく、そして、濃密だった。
昨日とは、完全に違う世界が、
今、私の内側に、確かに存在していた。
そして──
少し、動こうとした、その刹那、
骨の関節一つ一つが、神経質に反応した。
腰のあたりを中心に広がる痛みが、
あの夜の、全ての記憶を、静かに巻き戻すように、呼び起こした。
…あああああ、くぅっ。
本当に…。
生きてきて、初めて経験する、痛みだった。
筋肉や骨の関節が、それぞれにその存在感を誇示するように、
悲鳴を上げている。
特に腰。腰…その腰が…。
布団をぎゅっと握りしめ、息を吸い込んだ。
…どうかしてる、私。
本当に。
壊れるかと思うほど、強く抱きしめられ、
息が、全て絡み合った瞬間。
本当に、体と体が、溶け合ってしまうかと思った。
昨夜は…
確かに、夢ではなかった。
ゆっくりと、顔を上げた。
そして──
あの人。
隣に横たわる顔を見た瞬間、
再び込み上げてくる幸福感に、
自然と笑みがこぼれた。
長いまつ毛の下を掠める光、
まっすぐに伸びた鼻筋、
絵画のように整った唇のライン、
顎の先から首筋へと続く、完璧な曲線。
一本の筋までもが、鮮明だった。
…わぁ。
わぁ、本当に、粛宗の肖像画を描いた絵師は…
三族滅ぼされてもおかしくないわ。
私の目の前のこの人は、それよりも、遥かに、遥かに、とんでもなく魅力的だ。
あまりにも、端正な顔立ちをしている。
あまりにも、あまりにも、整いすぎている。
彼を、ただ、あてどなく見つめていたら、
水が流れるように、ゆっくりと移った視線が、
じわりと、下の方へと、滑り落ちていってしまった。
あ。
ああああああああああああ。
一瞬、頭の中が真っ白になった。
本当に顔が破裂しそうだった。
顔を背けようとした、その瞬間──
こつん。
目が合った。
「……。」
「……。」
彼が、目を開けた。
少し、とろりとした瞳。
わずかに乱れた髪。
その全てが、昨夜へと繋がっているようだった。
そして、かすれた彼の声が、聞こえてきた。
「……オクチョン。」
彼が、名を呼ぶやいなや、私は跳ねるように身を起こした。
「あやややややややややっ!!!」
腰。
腰が痛い…。
私は、ほとんど倒れ込むように、その場にへたり込んだ。
腰を抱きしめ、うずくまる。
頭はくらくらするし、本当に、あまりに痛くて死にそうだった。
彼が驚いて身を起こし、
あらわになった…その体に、
再び、私の顔が、カッと熱く燃え上がった。
私は、泣きそうな声で言った。
「見ないでください…本当に…ひっ…」
少し、ためらった彼は、慌てて布団を整えると、
私を抱きかかえて、そっと横たわらせた。
布団を優しくかけ直し、静かに言った。
「動くな。」
真剣で…あまりにも、優しい声だった。
彼が、額に口づけをしながら、続けた。
「今日は、決して微動だにするな。」
短い一言。
その中には、心配と、愛が、あまりにも深く染み込んでいた。
首元まで上げてくれた布団を、目の下まで引き上げる。
恥ずかしくて、顔から火が出るようで、なんだかおかしくて…
でも、心が、あまりにも温かくて。
少し、笑みがこぼれた。
そっと、彼の、手を、探して握った。
少し緊張していたかのような手は、
私の手の中で、ゆっくりと、力が抜けていく。
彼は、低く、囁いた。
「動くな。今日だけは。
これ以上、お前を苦しめたくはない。」
その眼差しは、真剣そのものだった。
…いや、本当に、疲れないのかしら…
静かに布団を引き上げながら、何も言わずに彼を見つめた。
優しい瞳。
その中に、私がいた。
朝日は、柔らかく部屋の中を照らし、
風も、そっと窓枠を撫でて通り過ぎる。
彼との視線が、何も言わずに行き交った。
昨日よりも、
今日よりも。
愛する人と、
互いの腕の中で。
世界が止まったかのような、この瞬間。
ただ二人だけが存在する場所。
その中で、
もう一度、互いに微笑み合うことができた。
永遠に。
そうして、共にいられることを、願っていた。
1幕が終了いたしました。至らない点や不自然な部分もあったかと思いますが、ここまでお読みいただいた読者の皆様に、心より感謝申し上げます。
日曜日一日お休みをいただき、より豊かで面白い2幕で戻ってまいります。どうぞ楽しい週末をお過ごしください。