重なり合う息遣い、永遠の誓い
彼の手で導かれ、足を踏み入れた部屋の中。
彼の胸に残る余韻が、私を朦朧とした心地に誘う。
その胸元に、そっと、深く、身を埋めた。
月光さえも息を潜める夜、彼の吐息が、私の耳元を優しく撫でる。
「オクチョン…」
低く、そして奥深い響き。
心臓が、まるで引き裂かれるように痛んだ。
さらに深く、彼の胸へと潜り込む。
ゆっくりと顔を上げると、唇が触れ合いそうな距離で、
濡れた瞳で私を見つめる彼が、
ひどく愛おしく見えた。
彼は、片手で、私の頬を、いとおしむように包み込んだ。
切ない彼の指先が、私の全ての感覚細胞を、目覚めさせるようだった。
しばし息を整えていた彼が、ぎゅっと、瞼を閉じた。
そして、すぐに、私を、そっと離した。
ああ──。
承恩尚宮に冊封される前夜の、
彼との、あの夜を思い出すと同時に、
心臓が、チリッと、かすかに震えた。
この人はまた…。
そっと、額に口づけをして、背を向けようとする彼を引き留めた。
戸惑うように、かすかに動く彼の眉間さえ、
愛おしく感じられた。
呼吸すら整えられないまま、私は、そっと唇を開いた。
「わたくしは…殿下の、女でございます。」
その言葉に、彼の息が、短く、止まった。
瞳が、かすかに揺らめく。
月光に反射した瞳が、まばゆく輝いた。
彼の指先が、再び私の腰を包み込み、
静かに、しかし切実に、私を抱きしめた。
唇が、触れ合った。
柔らかく、そして渇望に満ちた口づけ。
息遣いが絡み合い、
肌に触れる指先は、震えていた。
首筋を撫でる、その温もり。
肩を伝い、広がる吐息。
サラリ──という音と共に、
衣の紐が、ゆるりと解けた。
月光が、私の肩を伝い、静かに降り注ぐ。
彼は、何も言わず、私を見つめた。
彼の道袍の裾を、そっと解く。
小さな息遣いで、その温もりを感じながら、
優しく、彼の胸に抱きついた。
胸が触れ合い、心臓が重なる。
「オクチョン…」
かろうじて絞り出された、彼の声。
私は、彼の震える手を掴み、私の頬へと導いた。
「愛しています…殿下…」
彼は、私を、優しく抱きしめた。
胸が触れ合い、息遣いが絡み合う。
互いを、いとおしむように、強く抱きしめた。
震える指先、熱い温もり。
互いの心臓の音が重なり、
その夜は、静かに、しかし濃密に、燃え上がった。
月光が、私たちを包み込み、
世界は、静寂に包まれた。
彼の腕の中、その温もりの中で、
私は、ゆっくりと、しかし確かな存在として、彼に抱きしめられた。
初夏の香りが、深く、濃く、漂っていた。
月光が、静かに軒先を伝い、部屋の中へと染み込んでいく。
彼女は、依然として私の腕の中に抱かれ、
かすかな息遣いを繰り返していた。
震える指先、
頬を撫でる余韻、
体を包み込む体温が、柔らかく揺れる。
濡れた額に、口づけを落とした。
互いの息と、脈拍が、重なり合う。
「愛している…オクチョン…」
彼女は、ゆっくりと頷いた。
瞼の下で、揺れ動くその感情が、
月光に、そっと、浸されているようだった。
優しく、彼女を抱きしめた。
閉じていた瞳が、静かに開かれ、
彼女の瞳が、私を、じっと見つめた。
月光の下、彼女の肌は、
絵画のように、奥ゆかしい輝きを放っていた。
息遣いを伝って降りてくる、その美しさに、
再び、口づけが触れる。
「……殿下…?」
囁くように呼ばれた声に、
私は、静かに微笑んだ。
再び、彼女の頬をそっと撫で、
彼女を、深く抱きしめた。
胸が触れ合い、額が触れ合う。
彼女の手が、いとおしむように、私の頬を包み込んだ。
何も言わず、彼女を抱きしめた。
この世の何よりも大切な人。
その温もりを、もう一度、深く抱きしめながら、
月光の下、静かに息を整え、
ゆっくりと、目を閉じた。
彼女の温もりが、彼女の息遣いが、
私を、優しく抱きしめていた。
私たちは、柔らかく重なり合い、
互いの感情が、ゆっくりと、染み渡っていった。
言葉がなくとも、
眼差し一つで、
指先一つで、
全てを語ることができた。
夜は、深く更けていたが、
その瞬間だけは、時間が止まったかのように、
ただ、私たちだけが、そこに存在していた。
青い霧のように、夜明けが訪れようとしていた。
彼女を腕に抱き、静かに呼吸を整えながら、
長い時間、微動だにしなかった。
彼女は、静かに眠っていた。
小さく、細い息遣い、
熱を帯びた顔、
しっとりと震える唇。
指先で、彼女の額を、いとおしむように、そっと撫でた。
月光が宿った髪の毛の間から、
彼女の肌が、柔らかく輝いていた。
この瞬間、
何一つ、羨むものはなかった。
王座も、
権力も、
世界のきらめきも。
私には、この女性、
この息遣い、
この腕の中の温もり一つで、十分だった。
指先で、彼女の顔の輪郭を、ゆっくりと辿る。
額、
眉、
瞼、
鼻先、
そして、小さく結ばれた唇。
その唇を、ゆっくりと見下ろしながら、
月光の下に散らばる彼女の息遣いに、
静かに、私も心を重ねた。
彼女は、時折、夢うつつに身を震わせ、
私の腕の中へと、さらに深く潜り込んだ。
布団を、そっと掛けてやり、
彼女の髪を、優しく撫で下ろした。
彼女の香りが、
彼女の息遣いが、
部屋中に、留まっていた。
彼女を抱きしめた、この夜、
私は、心に誓った。
離さない。
手放さない。
この手で、
この心で、
死ぬまで共に歩もう。
月光が消え、
空が明るくなる夜明け。
私は、彼女を抱きしめたまま、
静かに、目を閉じた。
世界の全てが止まったかのような、その瞬間、
最も大切な温もりを胸に抱き、
甘い眠りに、ゆっくりと、落ちていった。