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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
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月光の下、結ばれた想い

庭は、息を潜めるように、ひっそりと静まり返っていた。

カサリ、と音を立てる裾を、そっと持ち上げ、慎重に歩みを進める。

月光が、静かに降り注ぐ夜。

ひんやりとした草の匂いが漂い、風が、スカートの裾をそよと撫でて過ぎていく。

指先で、衣の端をきゅっと握りしめた。

息苦しかった。

もう、あの人に会ってから、半月以上が過ぎたようだ。

その思いだけで、ため息が喉元までせり上がり、息を詰まらせる。


あの夢を見て以来、

妙に、体の奥で、ユン・イナという名前が、異物のように漂っていた。


もう、自分が誰なのかさえ、曖昧になっていくような気がする。


そっと、地面を踏みしめた。

カサリ──と草葉が擦れる音まで、

耳に届くほど、世界は静かだった。

空には、白く、まあるい月が、ぽつんと懸かっている。

冷たく、そして遥かな光。

顔を上げ、その月光を見上げた。

心臓が、けたたましく、その存在を主張する。

朝廷で簡択カンテクの準備が進められているという知らせや、

時折耳にする宮廷の噂のせいで、

一日に何度となく、胸がドキンと音を立てて、落ち込む。


私を忘れてしまっただろうか。

私が裏切ったと、思っているだろうか。

なぜ私を救ってくれたのだろう。


無益な考えに、芝生を、ただ、むやみに蹴った。


…いいえ、もしかしたら、最初から、掴みきれない人だったのかもしれない。


静かに息をのんだ。

月光があまりにも明るすぎた。

目を閉じても、胸が締め付けられるように痛む。


殿下…


あの人を想うだけで、息が詰まる。


悲恋のヒロインモードなんて、本当に私には似合わないのに…

はぁ…

馬鹿みたい…


月に向かって、小さく唇を開いた。

どれほどの時間、そうして立ち尽くしていただろう。

初夏の屋外は、それほど暖かくはなかった。

ひんやりとした空気に、身をすくめていた、その時、


風の気配が、わずかに変わった。

草葉が、低く震える。

何か、見慣れない気配。

知覚できない存在に、本能的に顔を向けた。

そして──

息が止まるかと思った。


月光の下。

絵画のように、たおやかな一人の人影。

粛宗。


彼が、そこに立っていた。

月光が、彼の肩を、そっと包み込んでいる。

胸が、張り裂けそうだった。

呆然と、彼を見つめる。


夢だろうか、

また、私を傷つける夢。

もう、幻覚まで見えるようになったのね。


首を横に振り、身を翻そうとした、その時、

その絵画のような姿が、私の方へと歩み寄ってくる。

一歩、二歩。

彼の視線の先にいる私が、消えてしまうのを恐れるかのように。

足取りが、少しずつ、速くなった。

心臓が、狂おしいほどに、高鳴る。

頬が熱くなり、足の先が、痺れるようにじいんとした。

息をこらえきれず、震える唇を開いた。


「…殿下…?」


私が、その名を呼ぶと、

彼は、ぴたり、と足を止めた。

そして──

腕を、広げた。

私に向かって。


本物だ。

本当に、あの人だ。


月光が、彼の瞳を照らす。

その深く、そして奥ゆかしい瞳の中に、私が映し出されるようだった。

もう、これ以上は、我慢できなかった。


何かに誘われるかのように、彼に向かって駆け出した。

スカートの裾が、風を切り裂き、はためく。

彼に、まだ、触れる前に、

彼は、力強く、本当に力強く、私を抱き上げた。


「オクチョン…」


これは、本物だ…夢じゃない…


息遣いすら震える、殿下の声。

彼の胸に、顔を埋めた。

温かい温もりに、全身が溶けていくような感覚に陥る。

熱く、そして硬い心臓の音が、耳元に届く。

互いを抱きしめ合ったまま、世界にたった二人だけが残されたかのように。

月光だけが、私たちを包み込んでいた。

私は、息を潜め、用心深く囁いた。


「…会いたかったです…殿下」


彼が、私の髪を、そっと撫でる。


「私も…身も凍るほど、会いたかった。」


声が震えていた。

なぜか、笑みがこぼれ落ちる。

月光が、彼の髪を、柔らかく照らしていた。

彼の心臓が、私の耳に、そっと触れている。

ドクン、ドクン。

互いの心臓が、互いを呼んでいる。

ぎゅっと、目を閉じた。


この人だ。

この人さえいれば、他には何もいらない。

二度と、手放さない。

二度と、その手を、離さないと。


月光の下、

私たちは、互いを、しっかりと抱きしめ合った。

とても長く、とても静かに。


月明かりの下で結ばれた彼らの心が、どのような苦難にも挫けないことを願っています。

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