表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
43/133

消えた王の愛しき人、揺らぐ宮廷


大妃殿は、まるで時が止まったかのように、ひっそりと静まり返っていた。

差し込む陽光さえも、今日はどこか冷ややかに、心を凍らせるように降り注ぐ。


「…何と、申したのだ。」


大妃の、扇を握る指先に、無意識のうちに力が込められる。

尚宮は息を潜め、喉の奥で震える声を、それでも慎重に絞り出した。


「チャン尚宮様が…宮の外へ出られる途中、忽然と、お姿を消されたと…」


カツン。

乾いた音を立てて、白玉の扇が大妃の指先からするりと滑り落ち、床に転がった。

その冷たい響きが、部屋の隅々にまで、ひんやりとした波紋を広げる。


大妃はゆっくりと、まるで何かを確かめるように瞼を閉じ、再び開いた。

その瞳の奥には、氷のような冷たさと、鋭い光が宿っている。

息を殺して控えていた尚宮たちは、その威圧感に震え、深く頭を垂れた。

大妃は、しばらくの間、言葉もなく遠くの窓の外を見つめていた。

肌寒さすら感じる日差し。

重く、息苦しく沈んだ空気。


‘主上が、この事実を知れば…’


想像するだけで、血が逆流するような、言いようのない悪寒が走った。

大妃は、落ちた扇を無造作に拾い上げ、低い声で命じる。


「直ちに人を出して、探し出せ。今すぐにだ。

一瞬たりとも、遅れてはならぬ。」


尚宮は、その言葉に深く腰をかがめ、音もなく部屋を後にした。

大妃は、胸の奥で静かに息をのむ。


‘閔ユジュン…そこまで、そこまでしなければ、気が済まぬと申すのか。’


震える指先で、再び扇をゆっくりと広げた。

その眼差しは、依然として冷徹なままだが、

深い瞳の奥には、決して拭い去ることのできない、拭い去りようもない不安と、抑えきれない怒りが、かすかに揺らめいていた。



その頃。


閔ユジュンの別邸。

一人の男が、用心深く、静かにひざまずく。


「大妃ママ様が、チャン尚宮様を宮の外へ追いやられたとのことですが、どうやら宮の外で何者かに誘拐された模様です。

身元不明の者たちに連れ去られたことが確認されました。」


閔ユジュンは、感情の読めない冷たい眼差しで、ひざまずく男をじっと見下ろす。

そして、嘲るかのように、薄い唇の端をわずかに吊り上げた。


「誘拐、だと。」


手にした杯を傾け、透明な酒をゆっくりと注ぐ。

琥珀色の液体が、杯の底に、まるで心を映すかのように静かに溜まっていく。


「卑しき者の命など、どうなろうと知れたことではない。」


コツン、と。

音もなく酒杯を卓に置きながら、閔ユジュンは関心なさげに呟いた。


「むしろ、好都合だ。厄介な変数が、一つ消えたわけだからな。」


ひざまずいた男は、その言葉に、ぐっと唇を固く結んだ。

閔ユジュンは、杯を指先で軽く回しながら、淡々と付け加える。


「残るは、ただ一つ。」


彼の眼差しが、氷のように冷ややかに沈み込む。


「中宮の、簡択だ。」


杯をゆっくりと口元へ運びながら、閔ユジュンは静かに、そして皮肉な笑みを浮かべた。

だが、その笑みには、温かさなど微塵もなく、

まるで研ぎ澄まされた刃のような、冷酷な嘲りが宿っていた。


「宮中に広まった噂は、厳重に口止めせよ。

チャン尚宮が消えたことを、不審に思わせぬようにな。」


男は、その命に深く頭を垂れた。

閔ユジュンは、再び、静かに、そして冷たく笑う。


「何事もなかったかのように…静かに、事を収めさせろ。」



別邸の片隅。

閔ユジュンの会話を、息を潜めて盗み聞きしていた閔ソイは、

その場では何事もなかったかのように、淡々とした顔で静かに自身の部屋へ戻った。

しかし、その指先は、誰にも知られることなく微かに震えている。

何も言わず、鏡の前に座り込んだ彼女は、

いつも整っていた眉間を、静かに顰めながら、誰に聞かせるでもなく、小さく呟いた。


「一体、何が、起きているというのです…」


部屋は静かだったが、

ソイの心の内では、どこか不吉な、冷たい風が、静かに、しかし確かに吹き始めていた。



その頃。


応香閣。

息を切らして、まるで何かに追われるように駆けつけた粛宗は、馬から飛び降りるやいなや

荒々しく、しかし一途に、階段を駆け上がった。

しかし、彼を迎え入れる尚宮も、典内も、そこにはいなかった。


「オクチョン!」


たまらず、扉を乱暴に開け放つ。

がらんとした部屋。

そこに広がっていたのは、ただ静かに整えられた絹の布団と、

机の上に、まるで置き去りにされたかのように置かれた、たった一枚の書状だけだった。


粛宗は、まるで足元が崩れたかのように、ふらつきながらその書状へと歩み寄る。

震える手で、大切に、しかし切実に書状を握りしめた。

白い紙の上に、ひそやかに、そして端麗に書き記された文字。


「殿下というお方は、わたくしの小さな器に収めるには、あまりにも大きすぎるお方でしたゆえ、

この身には到底、お受け止めしきれず、去らせていただきます。

どうか、ご壮健な君主であらせられますよう、心よりお祈り申し上げます。」


一文字一文字に、深い想いが込められたかのような、ぎゅっと押し潰すような筆跡が、彼の目に深く焼き付いた。

まるで息の根が止まるかのような、激しい痛みが、彼の胸を深く深く刺し貫いた。

その痛みにもがき苦しむように、彼の全身が、力なく床に崩れ落ちる。


「オクチョン…!」


絞り出すような、その呼び声は、悲痛に震えていた。

がらんとした板の間。

風に舞い、はかなく散っていく、彼女の残り香。

すべてが、彼女が確かにそこに存在したという、消えゆく痕跡だけを残して、静かに、そして残酷に、消え去ろうとしていた。


粛宗は、書状を、まるで唯一の宝物のように胸に抱いたまま、静かに、しかし魂の底から絞り出すように、嗚咽を漏らした。

膝の上には、止めどなく熱い涙が降り注ぐ。

どんなに高貴な王座も、どんなに絶大な権力も、

今の彼にとって、このたった一人の女には、遠く及ばなかった。

今、彼は──

その手のひらから、すべてがこぼれ落ちていく感覚に、ただ打ちひしがれていた。


陽光は、相変わらず優しく、何事もなかったかのように降り注いでいたが、

粛宗の心の世界は、音もなく、静かに、そして無情に、崩れ去っていくのだった。



楽しい週末を過ごされましたか?今日は時間が足りず、一篇だけ持ってきました…申し訳ございません。ご理解いただけますと幸いです。ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ