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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
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動き出す宿命、忍び寄る影


小さな軒下、

応香閣での最後の朝だった。

震える指先で最後の荷物をまとめる。

たいした物は何もない荷物だった。

入宮する時、ろくな物も持ってきていないから…。

そうやって整理していると、指先に何かが「カチッ」と触れた。

彼がくれた梅花茶の瓶…。

心が火傷したようにカーッと熱くなる。

思わずその瓶を抱きしめた。

ただ…それだけで十分だった。


「ママ様、お急ぎくださいませ。」


金尚宮が慌ただしく囁いた。

ソ尚宮と典内はすでに荷物をまとめ、私を待っていた。

裙裳の裾を整え、大殿の方に向かって拝礼した。


「殿下…どうかご壮健でいらせられますように。

私は結局、歴史に逆らえず去ります。」


最後に部屋の中を見回した。

古びた障子、小さな池、風に揺れる梅の木。

すべてが目に鮮やかに刻み込まれた。

そうしてすべてを置き去りにして、

慎重に足を踏み出した。


応香閣の庭には、まだ早朝の露が結ばれていた。

濡れた地面を音もなく渡り、息を潜めて動いた。

宮殿の塀の裏。

大妃ママ様が手配してくださった駕籠が静かに待っていた。

急いで身を乗せた。


ガタン──

駕籠が揺れ、ゆっくりと動き始めた。

裙裳の裾をぎゅっと握りしめたまま、用心深く息をのんだ。



その頃。


狩り場。

粛宗は馬上で弓を引いていた。

真昼の陽光が広がり、

風は静かだった。

すべてが平和に見えたが──

どこか、おかしい。


言いようのない不安感に蝕まれそうに見えた彼が、

勢いよく首を振ると、やがて狩りに集中した。


あたりが静寂に包まれた瞬間。

粛宗は弓の弦を引いた。

のんびりと草を食んでいたノロ鹿を狙おうとしたその刹那。


プツン──

小さな破裂音とともに弓が折れた。


粘りつくような静寂が広がる。

馬がひどく首を振り、不安がっていた。

粛宗は手首を痛めたようにわずかに眉をひそめ、あたりを見回した。

異様な気配。

体の奥深くで、

本能が荒々しく警告を鳴らした。


「オクチョン…」


囁くように呼び、顔を上げた。

その瞬間。

風がどこか不吉にかすめた。



その頃。


駕籠の中。

私は冷たい指先をぎゅっと握りしめた。

ソ尚宮と典内は駕籠の後方を用心深く伺っていた。


ガタン、ガタン。

駕籠はしばらくの間、静かに動いた。

だが、何かおかしい。

金尚宮がそっと駕籠の扉を少し開けた。


「ママ様…道がおかしいようでございます。」


普段通る道ではなかった。

より険しく、人通りの少ない道。

瞬間、駕籠が大きくぐらついた。

馬の蹄の音が、急に迫ってきた。


「何事だ──!」


ソ尚宮が駕籠を蹴って飛び出そうとしたその刹那。

駕籠を取り囲む、荒々しく重い気配。

誰かが駕籠の扉を荒っぽくこじ開けた。

瞬く間に襲いかかった手に、

抵抗する間もなく引きずり出された。


「ママ様!!!」


典内とソ尚宮が叫んだが、

すぐに男たちに制圧された。

悲鳴を上げる間もなく、

口が乱暴に塞がれた。


めまいのような感覚に、突然眠気が襲い始めた。

荒々しい手つきに絡め取られ、

背後に空気が抜けるように、見知らぬ馬の上へ体が放り投げられた。

鞭の音が引き裂くように空を切り裂き、

馬たちが悲鳴を上げるように荒々しく地面を蹴って走り出した。

風が鋭くかすめ、

空が目の前で荒れ狂った。

土埃と陽光が混じり合った空気が目を刺した。

地面と空、上下の方向感覚が一瞬で崩れ去った。


為す術もなく、

ただ何かの力に引きずられるように、

世界からどんどん遠ざかっていた。


風が顔を激しく叩いた。

目元から熱い涙が流れた。

頭の中に最後に浮かんだのは──

日差しの下で笑っていた、あの人の顔だった。



その瞬間。


風の静寂の中、

彼が顔を上げた。

息が詰まる感覚の中、

遠くで何かが断ち切られた気配。

彼は馬上で身を固めたまま、

虚空のどこかを用心深く見つめた。

そこには何もなかったが──

胸の奥深くのどこかが、不吉に疼いた。


「尚膳。」


粛宗は低く、そして短く言った。


「すぐに、応香閣へ行こう。」


その声には、すでに深い不安と、

崩れ落ちる心臓の予感が滲んでいた。


馬首を返し、

粛宗は息をのんだ。

息遣いさえ用心深く、

だが胸は荒々しく波打っていた。


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