表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
41/131

最後の別れ、涙の告白


応香閣は静けさに包まれていた。


私は小さな鏡の前に座り、

指先で身だしなみを整える。

いつもより少しだけ端正に、

少しだけ華やかに。

飾らなくても美しい顔が、さらに輝く。


我ながら見惚れてしまうほどだ。


ちょうど、完璧なタイミングで

門の外から用心深い足音が聞こえてきた。


「ママ様、殿下がお越しになられました。」


金尚宮の息を潜めた声。

深く息をのんだ。


「お迎えして。」


落ち着いて頷く。

ごくゆっくりと、慎重に席を立った。

扉が開き、陽光を背にした彼が入ってきた。


粛宗。

私の世界の始まりであり、そして終わりとなってしまった人。

彼は相変わらず輝かしく、温かかった。


私はその姿を目に焼き付けながら、

努めて明るく笑った。

これ以上目に焼き付けられないという思いに、胸の片隅がチクリと痛んだが、

ぐっと押し込めた。


「殿下、いかがなさいましたか。」


いつもと変わらぬように自然に、

しかし心の中では危うい感情が揺らめいていた。


彼が歩みを止めた。

私を見つめる眼差しが、ひときわ優しかった。


「出発前に、そなたを見ればもっと力を出せる気がして。」


短い一言。

だが、その中に込められた心の重さが、

胸をチクチクと刺した。


わずかに頭を下げた。

彼と向き合うには、心が痛すぎたから。


「どうか、ご無事に行ってらっしゃいませ。」


用心深く近づき、彼の手をぎゅっと握った。

彼の温かい手が、ゆっくりと私の手を包み込む。

その温もりに体が痺れた。


しばらくためらい、

慎重に彼の胸に抱きついた。

驚いたように一瞬立ち止まった彼が、やがて優しく、

用心深く私を抱きしめた。

胸元に触れる心臓の鼓動。

息遣いと息遣いが絡み合う。


顔を上げて彼を見つめた。

日差しに映える彼の瞳。

勇気を出して、彼の唇にそっと口づけた。

ごく短く。

だが、伝えきれない想いを押し込めるように…。


彼は驚いた目で私を見つめた。

いたずらに気恥ずかしくなり、それを隠すように言葉をかけた。


「小妾もまた、ご出発前に、殿下のご武運を祈りたかったのでございます。」


彼がクスクスと笑った。

彼の温かい額が、そっと私の額に降り立った。


「こうしてずっと、そなたと共にいたいものだ。

愛している、オクチョン。」


喉が詰まる。

それでも花のように笑った。

彼が心配しないように。


彼は名残惜しげな眼差しを残し、ゆっくりと背を向けた。

庭を横切っていく彼の後ろ姿が、

日差しの中でゆっくりと遠ざかる。

その時になって初めて、涙がハラハラと頬を伝い落ちた。

その姿が消えてからも長い間、

彼の面影を探すその場所を離れられなかった。



しばらくして、

ゆっくりと部屋の中へ入った。

指先に残る彼の温もりを、用心深く包み込む。

唇に残る、あの柔らかな感触まで。

すべてがあまりにも鮮やかに感じられ、再び涙が溢れた。


もうこれ以上、遅れるわけにはいかないという思いに、

慎重に絹の筆を出した。

白い紙の上に、

息を潜めて文字を残す。

筆先が震えた。


「殿下というお方は

わたくしの小さな器に収めるにはあまりに大きすぎる方でしたゆえ、

耐えきれずに去ります。

どうかご壮健な君主であらせられますよう。」


短い文。

だが、その短い文章に

私のすべての愛と後悔、そして最後の挨拶が込められていた。


筆を置いた。

指先が凍りついたようだった。

窓辺に近づいた。

静かな庭。

澄んだ空。

静かに通り過ぎる風。

すべてが穏やかだった。


しかし私の内側は静かに、

ごく静かに砕け散っていた。


大妃ママ様の配慮。

その柔らかく、用心深い手つきが

かえって私の胸をさらに痛めた。

その心が私への配慮でなかったなら──

愚かにもこの愛を最後まで手放さなかったかもしれない。


ゆっくりと目を閉じた。

深く息をのむ。

再び目元に熱いものがこみ上げてきたが、ぐっと飲み込んだ。


去らねばならない。

この心を抱いて。

この愛を残したまま。

静かに、ごく静かにその決意を胸に抱いた。

窓の外の空は、相変わらず澄んでいた。

だが私の世界は、

静かに暮れゆくのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ