表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
39/132

忍び寄る陰影と大妃の決断

陽光は優しく顔を覗かせていた。


応香閣の庭、縁側、部屋の中、どこもかしこも、

昨日と変わらず美しい光が静かに降り注ぐ。


静かに窓辺に座っていた。

風がかすめ、裙裳の裾がかすかに揺れる。

指先に載せた茶碗はまだ温かいのに、

なぜか胸の奥がひんやりとした。


確かに、何もなかった。

彼は今日も静かに応香閣を訪れ、

柔らかな瞳で私を見つめた。

私もまた、何事もないかのように笑いかけた。


しかし──


息の先に触れる空気。

その流れが、どこか違うように感じられた。

茶碗をぎゅっと握りしめる。

指の関節が白く固まっていく。


「……大丈夫。」


静かに、ごく小さく呟いた。

誰にも聞かれないように。

しかし、心臓は嘘をつけなかった。

少しずつ、ごく少しずつ。

私の中の不安が、育ち始めていた。


遠くからかすかに、鐘の音が聞こえた。

簡択の準備が始まったことを知らせる音。

目を閉じた。

耳を塞いでも、その音は聞こえてくる。


大丈夫。前に出なければいい。静かにしていればいい。


何度も、自分自身を慰めた。

しかし世界は、

私が息を潜めることで止まってはくれなかった。


────


その日の午後。


内命婦を行き交う足取りは慌ただしかった。

私は居所を離れなかった。

ただ静かに、まるで世界の影のように息を潜めた。


しかし──

庭の端。

冷たい日陰の下、密かに集まった数人の人影が見えた。

お淑やかに立っていた金尚宮に、

深刻な表情の典内が近づき、用心深く囁いた。


「ママ様…妙な噂が流れておりまする。」


顔を上げなかった。

「……何の噂だ。」


しばらく躊躇った彼女が、慎重に口を開いた。


「わたくしどものママ様が、大妃ママ様を侮辱なされたという噂が…広まっておりまする。」


手に握った茶碗が、かすかに震えた。

息をのんだ。


「それは…大妃ママ様のお茶に毒を盛ろうとしたという…」

「……馬鹿なことだ。」

「はい、わたくしどもは皆存じておりまする。ですが…」


ウニョンは、ついに言葉を継げなかった。

しかし、世間は真実より噂を信じる。


障子の外の空は、相変わらず澄んでいた。

その平和が、なぜか残酷に感じられた。


────


その頃。


大妃殿。

澄んだ茶の香りが漂う、静かな部屋。

大妃は静かに白玉の扇を開いたり閉じたりしていた。

尚宮が慎重に近づき、頭を下げた。


「先日、チャン尚宮に関わる噂が、宮中にひどく広まっておりまする、ママ様。」


扇ぐのを止めた。

冷たい視線が静かに流れた。


朝廷が揺れていること。

閔ユジュンがチャン・オクチョンを打ち砕こうと毒を撒いていること。

すべて知っていた。


静かに目を閉じた。

もう少し待っていたなら──

チャン・オクチョンは、自身の感情に自ら崩れ落ちていたかもしれない。

用心深く目を開けた。

静かな部屋の中。

かすかに震える茶碗。

澄んだ日差しの上に広がる梅花の模様。


閔ソイ。

整然として非の打ちどころのない貴婦人。

朝鮮王室の体面のためには、

あの子が中殿にならねばならない。


だが…。


日差しの下で、慎重に笑っていたチャン・オクチョンの姿が

しきりに脳裏をかすめた。

風に裙裳の裾を握りしめる小さな手。

髪を整える、不器用でか弱い仕草。

温かく、真心を抱いた子。


どうすることもできず、家門のために選ぶことになるのだろう。


ひんやりと冷めた茶碗を持った。

指先を伝って心臓まで降りてくる冷たい温もり。


朝鮮王室を守るのか──

それとも、主上の心を守るのか。


どちらにしても、残された時間は多くなかった。

静かに唇を閉ざした。

眼差しは静かだったが、

その中では数多くの葛藤と苦悩が渦巻いていた。


障子の外を、一筋の風がかすめた。

表面は穏やかでも、その風の先には

どこか知られざる不吉な気が染み込んでいた。


まもなく、嵐が押し寄せるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ