忍び寄る陰影と大妃の決断
陽光は優しく顔を覗かせていた。
応香閣の庭、縁側、部屋の中、どこもかしこも、
昨日と変わらず美しい光が静かに降り注ぐ。
静かに窓辺に座っていた。
風がかすめ、裙裳の裾がかすかに揺れる。
指先に載せた茶碗はまだ温かいのに、
なぜか胸の奥がひんやりとした。
確かに、何もなかった。
彼は今日も静かに応香閣を訪れ、
柔らかな瞳で私を見つめた。
私もまた、何事もないかのように笑いかけた。
しかし──
息の先に触れる空気。
その流れが、どこか違うように感じられた。
茶碗をぎゅっと握りしめる。
指の関節が白く固まっていく。
「……大丈夫。」
静かに、ごく小さく呟いた。
誰にも聞かれないように。
しかし、心臓は嘘をつけなかった。
少しずつ、ごく少しずつ。
私の中の不安が、育ち始めていた。
遠くからかすかに、鐘の音が聞こえた。
簡択の準備が始まったことを知らせる音。
目を閉じた。
耳を塞いでも、その音は聞こえてくる。
大丈夫。前に出なければいい。静かにしていればいい。
何度も、自分自身を慰めた。
しかし世界は、
私が息を潜めることで止まってはくれなかった。
────
その日の午後。
内命婦を行き交う足取りは慌ただしかった。
私は居所を離れなかった。
ただ静かに、まるで世界の影のように息を潜めた。
しかし──
庭の端。
冷たい日陰の下、密かに集まった数人の人影が見えた。
お淑やかに立っていた金尚宮に、
深刻な表情の典内が近づき、用心深く囁いた。
「ママ様…妙な噂が流れておりまする。」
顔を上げなかった。
「……何の噂だ。」
しばらく躊躇った彼女が、慎重に口を開いた。
「わたくしどものママ様が、大妃ママ様を侮辱なされたという噂が…広まっておりまする。」
手に握った茶碗が、かすかに震えた。
息をのんだ。
「それは…大妃ママ様のお茶に毒を盛ろうとしたという…」
「……馬鹿なことだ。」
「はい、わたくしどもは皆存じておりまする。ですが…」
ウニョンは、ついに言葉を継げなかった。
しかし、世間は真実より噂を信じる。
障子の外の空は、相変わらず澄んでいた。
その平和が、なぜか残酷に感じられた。
────
その頃。
大妃殿。
澄んだ茶の香りが漂う、静かな部屋。
大妃は静かに白玉の扇を開いたり閉じたりしていた。
尚宮が慎重に近づき、頭を下げた。
「先日、チャン尚宮に関わる噂が、宮中にひどく広まっておりまする、ママ様。」
扇ぐのを止めた。
冷たい視線が静かに流れた。
朝廷が揺れていること。
閔ユジュンがチャン・オクチョンを打ち砕こうと毒を撒いていること。
すべて知っていた。
静かに目を閉じた。
もう少し待っていたなら──
チャン・オクチョンは、自身の感情に自ら崩れ落ちていたかもしれない。
用心深く目を開けた。
静かな部屋の中。
かすかに震える茶碗。
澄んだ日差しの上に広がる梅花の模様。
閔ソイ。
整然として非の打ちどころのない貴婦人。
朝鮮王室の体面のためには、
あの子が中殿にならねばならない。
だが…。
日差しの下で、慎重に笑っていたチャン・オクチョンの姿が
しきりに脳裏をかすめた。
風に裙裳の裾を握りしめる小さな手。
髪を整える、不器用でか弱い仕草。
温かく、真心を抱いた子。
どうすることもできず、家門のために選ぶことになるのだろう。
ひんやりと冷めた茶碗を持った。
指先を伝って心臓まで降りてくる冷たい温もり。
朝鮮王室を守るのか──
それとも、主上の心を守るのか。
どちらにしても、残された時間は多くなかった。
静かに唇を閉ざした。
眼差しは静かだったが、
その中では数多くの葛藤と苦悩が渦巻いていた。
障子の外を、一筋の風がかすめた。
表面は穏やかでも、その風の先には
どこか知られざる不吉な気が染み込んでいた。
まもなく、嵐が押し寄せるだろう。