宮廷の夜明け、梅花に秘めた恋と戦の萌芽
朝の陽光が、宮殿の瓦を優しく滑り落ちる。
初夏の澄んだ空気が、塀を越え、庭を擦りながら、静かに漂っていた。
オクチョンは、袖の端をそっと握りしめ、しばらく周囲を見渡す。
人影一つ見えない庭。
まるで全世界が息を潜めたかのように、風さえ足跡を残さずに通り過ぎていった。
その瞬間──
その静寂を切り裂くように、静かに近づく気配を感じた。
粛宗だった。
朝鮮の王。
そして、彼女の心を静かに揺さぶる人。
彼の手に携えられた小さなガラス瓶の中には、
夜明けの露を含んだ梅花茶が、ほのかな光を宿していた。
彼は何も言わずに瓶を差し出す。
風が、そっと裙裳の裾を掠め通り、
その芳しい隙間を縫って、梅花の香りが優しく立ち上った。
慎重に手を伸ばす。
その指先が触れた瞬間──
コツン。
心臓が深く、鳴り響いた。
その震えを隠そうと、慌てて顔を背ける。
だが、そのぎこちなさにも、彼はただ泰然と微笑んでいるだけだった。
まるで、すべてを知っているかのように。
両手で瓶をそっと包み込む。
そして静かに、だが決して聞き漏らさないように尋ねた。
「…私に、お授けくださるのですか?」
彼は軽く頷いた。
端正な顔に広がる、柔らかな微笑み。
その一度の眼差しに──
胸が、ドクン、と音を立てて沈んだ。
心臓が…もたない…本当に。
彼は何も言わずに、指先でオクチョンの髪を優しく撫でた。
目を閉じたくなるほどの静かな幸福が、するりと押し寄せる。
「朝の空気が冷たいから、心配で持ってきた」
淡々とした口調だったが、
その奥には、深く繊細な気遣いが滲んでいた。
彼女は、顔が赤くなるのを隠そうと、
慎重に頭を下げた。
手の中の瓶は小さく、温かい。
その温もりが指先を伝い、胸元まで広がっていった。
…いや、あまりにも致命的すぎませんか…本当に…
息が詰まるほどの、慎重な震えの中──
遠くから人の気配が近づいてきた。
オクチョンは反射的に瓶をぎゅっと抱きしめた。
彼は自然に袖を下ろし、手元の動きを覆い隠す。
二人の間の空間は、
何もなかったかのように、再び静まり返った。
──
近づく足音。
大妃殿を今しがた出たばかりの閔ソイだった。
彼女の足先が庭の入り口に止まった瞬間、視界の先──
二人が立っていた。
息が短く詰まる。
しかしすぐに、泰然とした顔で視線を整えた。
ゆっくりと頭を下げる。
しとやかな裙裳の裾が、柔らかく揺れ、
口元は端正だったが、眼差しだけが静かに揺らめいていた。
粛宗への挨拶だったが、
その場には彼女が立っていた。
チャン尚宮。
彼女は、まるで何もなかったかのように、体を向けた。
だが、裙裳の裾に宿る気配は、
澄んだ日差しの中でも冷気のように広がっていく。
振り返る直前──
チャン尚宮を見つめる彼女の眼差しが、短く留まった。
その瞳には、言葉にできない感情が宿っていた。
静かに後ろ姿が遠ざかる。
だが、その場に残った気配は、
風よりも冷たかった。
──
オクチョンは、慎重に瓶を胸に抱いた。
微かな温もりが指先に残り、胸にはまだ彼の体温が漂っている。
呼吸を整える。
浮足立たぬよう、悟られぬよう。
彼女の視線が触れた場所が、梅花茶よりも熱く感じられ、
それ故に不安が押し寄せたその心を、彼に知られたくなかった。
粛宗は、ゆっくりと顔を向けた。
表情は無関心なほど静かだったが──
彼の視線は、依然としてチャン・オクチョンという、その女だけを追っていた。
遠ざかる足音。
大妃殿から出たソイは、既に庭の向こうへ消え去り、
その場に残されたのは、音のない沈黙と、
息を潜めた風だけだった。
陽光は、滞りなく庭を覆い、
ほのかな梅花の香りが、微かに揺れる空気の中を、優しくかき混ぜた。
まだ誰も気づかない愛。
まだ芽生え始めたばかりの戦い。
そのすべてが、
日差しの中に染み渡る梅花のように──
ゆっくりと、始まろうとしていた。
日が本当に暑くなりましたね。皆様もどうぞ健康にご留意ください。今日もご一緒できて、ありがとうございました!