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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
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宮廷の夜明け、梅花に秘めた恋と戦の萌芽


朝の陽光が、宮殿の瓦を優しく滑り落ちる。

初夏の澄んだ空気が、塀を越え、庭を擦りながら、静かに漂っていた。


オクチョンは、袖の端をそっと握りしめ、しばらく周囲を見渡す。

人影一つ見えない庭。

まるで全世界が息を潜めたかのように、風さえ足跡を残さずに通り過ぎていった。


その瞬間──

その静寂を切り裂くように、静かに近づく気配を感じた。

粛宗だった。

朝鮮の王。

そして、彼女の心を静かに揺さぶる人。


彼の手に携えられた小さなガラス瓶の中には、

夜明けの露を含んだ梅花茶が、ほのかな光を宿していた。


彼は何も言わずに瓶を差し出す。


風が、そっと裙裳の裾を掠め通り、

その芳しい隙間を縫って、梅花の香りが優しく立ち上った。


慎重に手を伸ばす。

その指先が触れた瞬間──


コツン。

心臓が深く、鳴り響いた。


その震えを隠そうと、慌てて顔を背ける。

だが、そのぎこちなさにも、彼はただ泰然と微笑んでいるだけだった。

まるで、すべてを知っているかのように。


両手で瓶をそっと包み込む。

そして静かに、だが決して聞き漏らさないように尋ねた。


「…私に、お授けくださるのですか?」


彼は軽く頷いた。

端正な顔に広がる、柔らかな微笑み。


その一度の眼差しに──

胸が、ドクン、と音を立てて沈んだ。


心臓が…もたない…本当に。


彼は何も言わずに、指先でオクチョンの髪を優しく撫でた。

目を閉じたくなるほどの静かな幸福が、するりと押し寄せる。


「朝の空気が冷たいから、心配で持ってきた」


淡々とした口調だったが、

その奥には、深く繊細な気遣いが滲んでいた。


彼女は、顔が赤くなるのを隠そうと、

慎重に頭を下げた。

手の中の瓶は小さく、温かい。

その温もりが指先を伝い、胸元まで広がっていった。


…いや、あまりにも致命的すぎませんか…本当に…


息が詰まるほどの、慎重な震えの中──

遠くから人の気配が近づいてきた。


オクチョンは反射的に瓶をぎゅっと抱きしめた。

彼は自然に袖を下ろし、手元の動きを覆い隠す。


二人の間の空間は、

何もなかったかのように、再び静まり返った。


──


近づく足音。

大妃殿を今しがた出たばかりの閔ソイだった。


彼女の足先が庭の入り口に止まった瞬間、視界の先──

二人が立っていた。


息が短く詰まる。

しかしすぐに、泰然とした顔で視線を整えた。

ゆっくりと頭を下げる。


しとやかな裙裳の裾が、柔らかく揺れ、

口元は端正だったが、眼差しだけが静かに揺らめいていた。


粛宗への挨拶だったが、

その場には彼女が立っていた。

チャン尚宮。


彼女は、まるで何もなかったかのように、体を向けた。

だが、裙裳の裾に宿る気配は、

澄んだ日差しの中でも冷気のように広がっていく。


振り返る直前──

チャン尚宮を見つめる彼女の眼差しが、短く留まった。

その瞳には、言葉にできない感情が宿っていた。

静かに後ろ姿が遠ざかる。

だが、その場に残った気配は、

風よりも冷たかった。


──


オクチョンは、慎重に瓶を胸に抱いた。

微かな温もりが指先に残り、胸にはまだ彼の体温が漂っている。


呼吸を整える。

浮足立たぬよう、悟られぬよう。


彼女の視線が触れた場所が、梅花茶よりも熱く感じられ、

それ故に不安が押し寄せたその心を、彼に知られたくなかった。


粛宗は、ゆっくりと顔を向けた。

表情は無関心なほど静かだったが──


彼の視線は、依然としてチャン・オクチョンという、その女だけを追っていた。


遠ざかる足音。

大妃殿から出たソイは、既に庭の向こうへ消え去り、

その場に残されたのは、音のない沈黙と、

息を潜めた風だけだった。


陽光は、滞りなく庭を覆い、

ほのかな梅花の香りが、微かに揺れる空気の中を、優しくかき混ぜた。


まだ誰も気づかない愛。

まだ芽生え始めたばかりの戦い。


そのすべてが、

日差しの中に染み渡る梅花のように──

ゆっくりと、始まろうとしていた。



日が本当に暑くなりましたね。皆様もどうぞ健康にご留意ください。今日もご一緒できて、ありがとうございました!

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