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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
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静謐なる命令


寝殿の中は、息さえも呑み込めないほど静まり返っていた。


障子越しに差し込む陽光でさえ、

冷たい空気に凍えるように、ぼんやりと滲んでいた。


肅宗は、真っ直ぐ座っていた。


背もたれにもたれず、

腰に力を込め、

指先にまで緊張を張り詰めた姿勢のまま、

静かに、正面を見据えていた。


大妃は、端然と座していた。


微動だにせぬ眼差しで、

まるでその胸の奥までも見透かすように。


「主上。」


柔らかく、だが確固たる響き。


大妃が口を開いた。


「この母は、もうこれ以上待てません。」


肅宗は静かに息を呑んだ。


部屋の空気が、凍てつくように冷たく沈んだ。


大妃は一息置き、続けた。


「婚姻禁止令を出します。」


その一言で、空気が一段と重たくなった。


肅宗の視線が、静かに動いた。


だが、その表情には一切の揺らぎがなかった。


「母上、私の中宮は、私が決めます。」


低く、揺るがぬ声。


一歩も退かぬ意思。


大妃の目が細められた。


「主上。」


その声はさらに低く、深く響いた。


「後継を立てるのは、君主の務めです。

いつまで目を背けるおつもりですか。」


肅宗はわずかに目を閉じ、開いた。


その一瞬、

陽光の中に駆け出した小さな背中が浮かんだ。


裾を掴み、叫ぶように顔を背けた彼女、

耳の先まで紅く染まった顔。


肅宗は、ゆっくりと顔を上げた。


「私は、望まぬ女を中宮には迎えられません。」


大妃の眉がわずかに寄った。


「主上がどれほど我を張ろうと、」


その声は依然として凛とし、

語尾には鋭い線が浮かんでいた。


「この母もまた、朝鮮のためには引けません。」


部屋の空気が、さらに凍りついた。


呼吸さえ許されぬ静寂。


肅宗は静かに、指先を握り締めた。


ゆっくりと力を込め、また緩めた。


胸の奥に沈むように、深い息を吸い込んだ。


──


大妃の命が下されてから、

漢陽は静かな波紋の中に揺れ始めた。


宮中の各所には紅い婚礼札が風に舞い、

四大門の街角には、処女の推薦を告げる貼紙が掲げられた。


白紙に黒文字。


その一字一句が、

刃のように地を貫いていた。


風に揺れる紙でさえ冷たく、

噂は風よりも速く駆け巡った。


「本当に、揀擇だって?」


「やっぱり、閔大監の娘が有力じゃない?」


「張尚宮は? 承恩尚宮に任命されたって聞いたけど。」


「でも中人出身でしょ。中宮の器じゃないわ。」


路地のあちこちで、囁きが渦を巻いた。


──


北門近くを、ゆったりと馬を操る男がいた。


張希載。


希載は手綱を緩め、

貼られた紅札をちらりと流し見た。


「婚姻禁止令ね…」


鼻先で笑みを零した。


口元が、歪むように緩やかに吊り上がった。


「まったく、面白いことになってきたな。」


彼は馬の向きを変え、

ゆっくりと漢陽の街を抜けていった。


ただ、

楽しげな眼差しで、

宮殿を嘲るように見やりながら、

自分だけの速度で進んだ。


濡れた小石道を打つ蹄の音。


春風のように、緊張と期待を撒き散らしながら、

彼は、そのまま何処かへと姿を消した。



本日もここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございます!

もし「あれ?ここちょっとおかしいかも?」なんて部分がありましたら、こっそり教えていただけると嬉しいです。爆速で修正しますね!


皆さんも、今日も一日お疲れ様でした!

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