表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
20/133

夢に溺れる夜


部屋の中は、息を呑むほどの静けさに包まれていた。


鼓動だけが、ひとり響いている。


灯りの下、黙って彼女を見つめた。


指先よりも、息遣いの方が先に届きそうな距離。


「……一杯、付き合ってくれぬか」


大きな瞳でこちらを見上げた彼女。


染まる頬、潤んだ瞳。


とてもこの世のものとは思えぬ美しさに、静かに心が崩れていく。


そっと頷く彼女。


その仕草ひとつで、夜が明るくなる気がした。


酒が運ばれ、透明な酒が盃に注がれる。


静かに盃を重ねた。


どれほど時が経っただろう。


沈黙の中、酒を重ねる彼女がそっと呟いた。


「……私のいた世界には、殿下のような方はいませんでした」


指先が、ふと止まった。


軽く受け流すこともできた言葉。


けれど、耳元に落ちたその声は、あまりにも深くて特別だった。


柔らかく笑みを浮かべ、寄り添ってくる彼女。


赤く染まった頬は、桃のように淡く美しく色づいていた。


胸が、ぎゅっと締めつけられる。


熱が、身体の内から沸き上がった。


静かに抱きしめた。


吐息が肌に触れ、熱がゆっくりと広がっていく。


衣を解けば、絹のような布が音もなく床に落ちた。


残されたのは、薄衣一枚。


震える手で紐を解き、布が肩を滑り落ちていく。


灯りに照らされた、細い鎖骨と美しい胸元。


淡く輝く肌。


胸元に触れた手。


伝わってくる、柔らかな温もり。


微かに震える彼女。


そのすべてが脆くて、壊してしまいそうで怖かった。


酒の勢いに任せたような、小さな囁き。


「……殿下が、大好きです」


胸が、激しく脈打つ。


指先が頂をなぞり、腹部から腰へとゆっくり滑り降りる。


腰の線を辿り、太腿の内側をそっと撫でた。


薄い肌の奥から伝わる熱。


彼女は浅い息を吐きながら、さらに強く抱きついてきた。


危うい感情。


崖の端に立つような、ぎりぎりの想い。


唇を探した。


熱く、荒い呼吸が、互いを引き寄せる。


酒に火照った頬。


息を潜め、震える声が漏れる。


「愛したくなかったのに……会いたくて仕方ないんです、殿下……」


ああ、この女は本当に──


胸がきしむように痛んだ。


指先は腰の奥へと這い、


唇は吐息を追って、そっと降りていった。


身体中が、熱を帯びていく。


必死に、想いを抑え込んだ。


目を閉じた。


抱きたかった。


夢の中で何度も欲したそのままに、


壊して、閉じ込めて、俺だけのものにしたかった。


そっと寝かせた。


わずかに震える唇。


赤子のように洩れる小さな声。


そのすべてが、胸を焦がす。


飲み込まなければ。


抑えなければ。


込み上げる欲をどうにか押し殺し、ようやく言葉を絞り出した。


「尚膳、金尚宮を呼べ」


扉が開き、尚宮と女官たちが入ってくる。


赤子のように唇を動かす彼女を、引き離すのは辛かった。


「張尚宮を、お守りせよ」


短く、しかし揺るぎない命令。


扉が閉じるその瞬間まで、


部屋の中には、微睡の熱と、酒の香りが静かに漂っていた。




今日もご一緒いただき、ありがとうございました。どうぞ穏やかな夜をお過ごしください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ