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影の下


月明かりさえ** 光を** 失った 夜。回廊の 端々を 風が** 薄く** 通り過ぎ**、宮殿の 息遣いさえ 静まっていた**。


チャン 大監と 話を** 終えた 後、不安がっている オクジョンの** ことを 思うと 気が** かりだった**。もしかしたら** 私が** 思った 以上に 遥かに 彼女の 心を** 傷つけてしまったのかもしれないと** 考えると**、ただ** 静かに 座っている わけにはいかなかった**。


急いで 出て** 交泰殿(キョテジョン**)へ 向かった**。肌寒く 感じる 風が** 顔に** ぶつかってきた。


雲に** 覆われた** 月の** 光が** 回廊に 沿って 長く** 広がり、風に** 乗って 慣れない** 匂いが 運ばれてきた**。


これは……** 香の** 匂いではないか?


風に** 乗ってきた その** 香りを 追い**、足取りを** 進めた。


交泰殿から 遠くない** 小さな 部屋**。窓が** 半分ほど** 開いたまま、その** 中で** 幼い** 水汲み 女が** 静かに 祈祷**(チソン)を 捧げていた。どこか 見覚えの** ある** 子だ**。


服装から** 見て** 水汲み 女のようだ……**。


気にせず** 足を** 進めようとした 瞬間**、脳裏を よぎる 慣れた 感覚が 足を** 引き止めた。


そういえば あの** 子は**……** 少し** 前 宮女たちに いじめられていた** あの** 子ではないか**。


果敢な 態度で 泣かず、むしろ 顔を** 上げて 立ち向かっていた** 眼差しを** 覚えている。妙に** 目を** 引いた あの** 子が** 今 この** 場所で 何を** しているのか** 気になった。


再び** その** 子に** 近づこうとした 矢先**、回廊の 向こうから 急いで 走ってくる 男の** 影が** 見えた。


男の** 気配を 感じた その** 子は** 丁寧に 周囲を 見回してから** 懐の** 中から 何かを 取り出し**、その** 男に** 渡した。慣れた 手つきで** その** 書状を 受け取った 彼は** 早く** 懐に** 入れると** 何かを 囁き**、振り返って 再び** 走り** 去った。


チャン 大監が 話していた その** 水汲み 女である** 可能性が** 高いと 思われた** 私は**、再び** 何も** なかったかのように その** 場所を 整理している** その** 子に** 近づいた**。


一瞬の 間、顔を** 振り向けた その** 子の** 目と** 目が** 合うと、白い** 月明かりが 雲の** 間から 顔を** 出した。その** 光に** 照らされ**、白い** 額と** 赤い** 唇が** 鮮明に 浮き彫りになり、視線が 交差した**。


少しの 間 流れた 静寂**。その** 静寂を 破ったのは 驚くほど** 泰然とした 態度で 降りて 深い** 礼を** 捧げた 彼女だった。


「主上** 殿下に 拝謁いたします。」


普段なら** 言葉すら** 交わすことが** できない** 身分の 子が** 近づいてくると、尚膳**(サンソン**)が 前を** 遮ろうとした**。静かに 手を** 上げた。


「おまえたちは** 退がっていろ**。」


私の** 声に** びくっと** その** 子が** 身を** 震わせるのが** 感じられた。それにも** かかわらず、彼女の 目は** 何か** 分からない 決意に 満ちていた。


「この** 夜中に この** 場所で 何を** していたのだ**。」


顔を** 上げられなかった** 彼女は 突然**、ひれ伏した。


「恐れ入ります**、主上** 殿下**。私は** ただ** 廃位された 前 中殿ママ様が** お 元気であられるよう 願う** 気持ちで** 祈祷を 捧げていただけです。」


怯えているように** 見えたが**、彼女の 行動は 妙に** 気に障った。西人たちと 争って 擦り減るだけ** 擦り減った 私の** 目を** 欺くことは できなかった**。その** 子の** 眼差しは** 危機に 瀕した 者ではなく、機会を 掴んだ 者の** 眼差しだった**。


もしかしたら この* 全てが 計画された ものかもしれないな。あえて 私の** 女人に 害を** 加えようとするなんて** 笑止**(しょうし**)で ある**。*


彼女を 見下ろす** 私の** 目は** 冷たく 冷えた。私の** 内側から** 湧き上がる 感情が 複雑に 絡み合った。


祈祷を 捧げながら 男と** 書状を やり取りするのが** 廃妃の ためだと**……。西人たちが** これほど** 足掻くのだから、踏みつける 甲斐が あるだろうな**。


生臭い 吐き気が** 喉を** 上がってきた**。血生臭い** ような 権力の 匂い**。それが 嫌いでありながら** 慣れている 自分自身が 嫌だった**。


「何を** 望むのだ**。」


私の** 言葉に 戸惑ったように 身を** 動かした** その** 子は** 顔を** 上げて 私を** 見つめた**。まるで 何も** 知らないという 眼差しで**……** 笑止な ことに。


「わ、私は**……** ただ** 廃位された ママ様の**……**」


「そうだ、そなたの** 言う通り** 廃位された 前 中殿** ミン** 氏に** 付き** 従い**、彼女の 手足として 動いているのだから 望む** ものが あるのではないか**。純粋な 気持ちで** やっているという** 言葉は 引っ込めろ。そなたの** 眼差しが** 違うと 言っているのだから。」


容赦ない** 私の** 言葉に 戸惑った** 彼女は 頭を** 下げた。葛藤するような 眼差しに** 嘲笑が 混じった** 笑みが 浮かんだ**。


まだ** 私を** 手なずけるには 幼すぎるな。オクジョンくらいでなければ いじめる** 甲斐も ないというのに。


「私は**……** ただ**……** 宮中の 中で** 生き残りたいです**。安定した** 場所で 安定した** 生活を 送りたいのが** 私の** 願いです**。」


その** 子の** 声には 歳月に 染みついた 恨みの 感情が 感じられた。賎出として 生まれて** どんな 生活を 送ってきたのか 知る** 由はないが、そのような ことなど** 私とは 何の** 関係もなかった。


その** 子に** 近づいた**。近づいた** 距離で 顔を** 持ち上げると** 月明かりに 照らされる 白い** 顔が** 目を** 一杯に 満たした**。私の** 視線に がたがた** 震える 彼女の 耳元に 囁いた。


「そなたが** どんな 生活を 送ってきたのか、今後** どんな 生活を 送るのか**、私は** ひとかけらの** 興味さえ** ない**。しかし、そなたの** 行動が オクジョンの** 生活に 少しでも** 害を** 及ぼす 日には、そなたの** 人生を 根ことぎ** 壊してやろう**。分かったか。」


ぶるぶると 震えていた 彼女は 怯えたような** 顔で** 連続して** 頷いた。


暫く** 彼女を 睨みつけた 私は** 何も** 言わずに** 振り返った。


「今日の ことは 誰にも 話すな。」


「恩恵に 感謝いたします……** 殿下**。」


彼女の 声が** 小さく 流れてきた。振り返って 足を** 進めながらも** 心の** どこかが** 妙に** 不快だった。その** 子の** 眼差し、そして 廃妃** ミン** 氏の** 名前まで** 聞くと 沸き上がる 怒りを 抑えることが** できなかった**。


あえて……** 誰も** 私の** 女人の 座を** 揺るがす** ことを 許すことは できない**。


急いで 足取りを** 進めた。ただ** 一人の 私の** 恋人**、彼女が いる** 場所**、そこが 私の** 唯一の 安息の 地であり** 朝鮮の 中心だった。

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