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風を起こした日



冬が去り、春さえも 流れ去った ある** 日のことだった。


世子は 日々** 成長し、今や** 歩く** 練習を する** ほどに 大きく なっていた。


朝鮮の 空気は 相変わらず 澄んでいた。窓の** 外から 吹き込む** 風が** 夏の** 香りを 含んで 青々とした 香りを 運んできた。


久しぶりに 出てきた** 漢陽**(ハニャン)の 街は** 久しぶりに 活気に 満ちていた。川岸には** 土の** 匂いが 広がり、遥か** 遠くからは 槌の** 音と** 鋸引きの** 音が** 混ざり 合って 響いてきた。都城の 内に** 新しい 風が** 吹いている 証拠だった。


ささやかな 雑音のようでありながらも**、私にとっては** 見慣れぬ** 音楽のように** 胸を** 打った。この** 全てが 私の** 一言から** 始まったという 思いに 胸が** 熱くなった。


兄が** 戸曹判書**(ホジョパンソ**:財政長官**)の 座に** 就いてから 既に** 久しい。私と** 殿下の 真心を 理解してくれた 星湖**(ソンホ)先生の 助けで、難しいと** 思われていた** 提堰と 洑(ボ:堰)の 建設作業が 順調に 始まめられた**。


久しぶりに 会った 兄は** 少し** 痩せ細って いた**。


「兄さん**、大丈夫なのですか**。」


私の** 心配そうな 問いに 兄が** 微笑んだ**。まるで 何も** ないかのように、ただ** そうして** 流した。


図々しいのは 相変わらず だな*。*


数ヶ月ぶりに** 見る** 顔でも 変わらぬ** 致命的な** 美貌だった。


「ママ様が** 下さった** 書簡で 星湖先生の 共感を 引き出せたのが 妙手でした。殿下が 積極的に** 動いて 下さり 工事が 始ままったので、数年内に** 成果が 出るでしょう**。」


「私は** ただ** 殿下と 世子を 助け**、民が** 良くなることを 願う** 気持ちだけでした**。」


兄の** 目が** きらきらと 輝いていた。


「まさに それによって** 星湖先生が 動いたのです**、ママ様。ママ様の** 真心を 伝えて 初めて 彼が** 学者たちを 動かし、それにより 着工が 始まったのです。」


知っていた。彼は** 王家への** 忠誠心で** 動く** 人ではないから、民のための 政策という 名の** 下で** 説得すれば 十分に 乗ってくる 人だった**。現実的な** 人物であり、民を** 愛する 人だった**。


「仰るとおり、中殿ママ様の** 意思を 伝えましたら**、星湖先生は もちろん**、学者たちが 心を** 一つに しました**。」


瞬間**、胸が** いっぱいに なり** 息を** 整えることが** 難しかった。かろうじて 心を** 抑えつけて 微笑んだ**。


本当に*……出来るのだな**。ただ** 静かに 座って 歴史の 流れに 任せるのが 答えではなかった**。*


私が** 一言** 投げかけたことが** 風となり**、人々の 手足を 動かして** いた**。


しばらく** じっと 工事現場を 眺めていた 私の** 目に** ふと** 水汲み****女の** 服装を した** 女性が 入ってきた。宮女や 水汲み****女たちが** 市場を 歩き回るのは** よくあることだったが**、ここは 市場からも 少し** 離れた 現場だった。


こんな* 所に** どうして**……*


私の** 視線を 感じたのか、兄が** 私の** 目の** 届く** 場所を 見つめた**。そして まもなく** 兄の** 表情が 尋常でない ものに 変わるのを 見ることが できた。


「知っている 方 ですか……」


私の** 問いに 兄は** 特に** 答えず 微笑みで** 応じた。何か** 不快な 感覚が 込み上がってきた**。


明らかに こちらを* 見ているようだが**……*


その** 時だった**。後ろから** 低く** 響く** 声が** 聞こえてきた**。


「中殿が いなければ こんな 事は** 始ままりさえしなかっただろう**。まことに** 慈悲深く** 聡明な 女人ではないか。」


殿下だった。いつ** 近づいてきたのか**、端正な 道袍姿で** 私の** 後ろに 立っていた。無関心な** ように 見えたが**、相変わらず 蜜が** 滴るような 眼差しで** 私を** 見ていた**。百日以降も 敷居が 擦り切れるほど 中宮殿に** 通う** せいで、大臣たちや 観象監に** 懸念を 抱かせているという 話を** 聞いた。観象監が** どうか 合房日を** 守って ほしいと** 言うほどだったという**。


殿下が 全く** 気にしないのが 問題だったが**……**。


微笑みながら** 彼に** 近づこうとした 瞬間**、感じた 視線に 後ろを 振り向いた。確かだ。あの** 水汲み****女は** 殿下を 見つめて** いた**。


まさか*……?*


「オクチョン、そなたが** いるから** 朝鮮は 変わるのだ。」


簡潔な 言葉に 滲む** 信頼にも** かかわらず、私の** 神経は 全て** 彼女に 注がれて** いた**。そして まもなく** 視線が 合った。そして 束の間の** 静寂**。まるで 私を** 見通そうとするかのような** 眼差し、その** 中に** 妙な** 不快さが** 混ざって** いた**。


彼女は まもなく** 体を** 反転させて その** 場を** 立ち去ったが**、私は** どうにも** 動くことが できなかった**。正気を 取り戻させたのは** 耳元に 囁く** 殿下の 声だった**。


「今日も 私は** そなたを** 尋ねて 行くから**、そう** 思っておけ。」


意地悪な** 微笑みを** 浮かべながら** 懐に** 私を** 閉じ込める 彼の** 行動に 顔が** 赤く** 火照った**。


「あの**……殿下**、ここは 外では ないですか……人が** 皆 見ていますよね。どうか ご 体裁を……」


「見たければ 見させろ**。私が** 私の** 女を** 抱き締めていることが** 何か** 問題だというのか**。私が** そなたを** どれほど** 大切に しているか 知れば 尚更** 良いではないか。」


むしろ 更に** 強く** 抱き締める 殿下の 行動に** 戸惑った** 私は** 兄に** SOSを** 送ろうとしたが、彼は** 既に** 首を** 振りながら あの** 方へ** 歩いて 行って いた**。


ああ……あの* 人 本当に……*

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