彼に属する夜
乳母が殿下の懐でぐっすり眠る世子を連れ出した後、残ったのはほのかな灯火と交泰殿を照らす月明かり、そして私の心臓の音だけだった。
何故か分からないが気まずい気持ちから酒膳を待つ殿下を後にして、しばらく 希載 兄が送った書簡を開いた。目で文字を辿っていたが、一つも頭に入ってこない。** 분명重要な内容が詰まっていたはずなのに妙に心が散漫**だった。
紙の上に広がる気配。
そして温かく抱きついてくる彼の温もり。
「今日が何の日か……忘れたのか。」
かすかに耳元に囁く彼の声がゆったりと体を包み込んだ。先ほどとは全く違う、節制された眼差しの中で熱く巡る渇望がそのまま現れていた。
書簡を慌てて折り畳み、下ろして体を反転させた。
そう言えば、今日が百日だったのね……
「殿下……」
巻き付いた彼の腕が腰に回ると、思わず顔がカーッと火照った。
「そなたのおかげで民は腹を満たしたかもしれないが、私は百日を超える時間、飢えに苦しめられた。」
彼の息遣いが耳の端に触れた。渇きが感じられる彼の低い響きが心にぽつりぽつりと落ちた。心臓が破裂する花火のように激しく打った。
首に絶え間なく降り注ぐ口づけに、懐妊前の彼と共にした感覚が少しずつ蘇ってきた。深淵のように深い瞳に満ちた渇望がさらに深く降りてきた。
「そなたの夜はただ私のものだ。」
低く唸る彼の声に心臓に妙な熱気が湧き上がった。
あ*、ちょっと、まって……本当に忘れていたのに**……*
「殿下、ちょっと**、待ってください……今日は本当に骨が溶けるように――いや**、疲れています、本当に。」
戸惑ったせいか飛び出した現実の話し方に思わず、くすっと笑いが漏れそうになった瞬間、彼はさらに距離を縮めて近づいてきた。力を込めて押し退けても 無駄だった。
首筋に優しく熱いものが触れた。肩を伝って流れる彼の息遣い、耳たぶをかすめる低い笑い。
「しーっ」
口に手を当てて漏らす笑みが本当に、狂うほど美しく感じられた。
ああ。こんなのは 反則だよ……本当に。
「これ以上 私を燃やさないでくれ**。待てないと言っただろう。」
彼の答えは 簡潔で、深い渇きが ぎゅっと 詰め込まれていた。だから こそ** 更に** 致命的だった。
月明かりが足元に流れた。銀の薄い絹のように床を伝い寝台の端まで広がっていった。彼はその光を踏みしめて 私の前を遮った。目が届く所 全て** 穏やかに** 揺れる 灯火、そして 私を** 見下ろしながら 非常に 緩やかに、しかし 確実に 縮めて くる** 距離。
息が詰まった。彼の口唇が私の息遣いを奪って いった。優しく、そして 深く。背筋を伝って 波紋が広がった。月明かりがまぶたの間から 散らばって 入り込み、布団の 皺が** ゆっくりと 崩れた。
「ちょっと**、待って ください 殿下……」
続く** 意味の ない** 手振りに**、彼の手が** 抵抗する** 私の手を** 掴み取り頭の** 上に** 上げた。手首を伝って 降りて くる** 熱い** 体温と**、耳元を** 突き刺す** 火照った** 彼の** 息遣いに** 頭が** 遠のいた。
か細い 息が** 長く** 流れた。寝台の** 端で** 彼の** 影と** 私の** 影が** 重なったり 解けたり** した。首筋を** 探って いた** 口づけが** 肩へ、肩から 手首へ、そよ風のように** 緩やかに** 流れたかと 思うと、ある** 瞬間** 水流のように** 力を** 得て** 駆け寄って きた。
「オクチョン、そなたは私の女だ。」
私たちを** 盗み見ていた** 風が** 灯火に触れたのか、燃え盛る** 炎が** 低くなり、月明かりは** 更に** 鮮明になった**。
部屋の 中の** 全ての 音と** 光が** 一つの 結に** 合わさる** 瞬間**、彼の** 額が** 私の** 額に** そっと 触れて いた**。近い** 距離で 互いの 呼吸が 重なったり 分離したり しながら**、非常に 緩やかに** 均衡を 取った。
食い込んで くる** 彼の** 執拗な 息遣いに** 耐えきれず 彼の** 髪の毛を** 掻き乱した。
久しぶりには……寝るのは* 無理そうだ な……*
辛うじて** 受け入れた 彼を** 覚えている 体が** 不思議だった**。深く** 絡み合って くる** 彼の** 渇きと 熱い** 体温が** 私を** 狂わせた**。ひょっと** すると 私の方が** 彼を** 望んでいたのかもしれない**。
燃え上がるのではないかと** 思うような 彼の** 懐で** 夜明け まで** 眠れず 彼の** 懐に** 溶け込んだ。
まるで 元々** 一つだったのかのように、息遣いと 体温が** 混ざり 合い**、どこまでが 私なのか** 分からないほど 絡み合った。
彼の** 手付きは** 炎のようだった。息が** 詰まるほど 荒々しく**、私を** 揺さぶり** 起こすように** 迫って きたかと** 思うと、やがて 水の** 流れのように** 繊細に** 解けて 降りて きた**。
私の** 体は** その** リズムに 無力に 揺さぶられ、むしろ 更に** 深く** 彼に** 縋りつきながら 自らを 捧げて いた**。
首筋を** 伝う** 口づけ、肩に** 残される** 熱い** 息、か細い 手首まで 食い込む** 熱気**――**
その** 痕跡ごとに 長く** 我慢して** きた** 渇望が 噴き出して いるようだった。
「オクチョン……」
低く** 沈み込んだ 声が** 耳たぶを** 伝い、心臓を** 刺すように 降り立った。
私は** 答えることが** できなかった**。ただ** 息を** 吐きながら 彼の** 肩を** 掴んだまま 激しい 波に** 巻き込まれるように 揺さぶられた**。
その** 瞬間でさえ 彼は** 待って くれなかった**。更に** 執拗に 私を** 放して くれなかった**。
月明かりが** 布団の 上に** 降り注いで 散らばったかと 思うと、揺れていた 灯火と** 共に** やがて 静かに 沈み込んだ。
彼の** 熱い** 心臓の** 鼓動**、そして その** 鼓動に 合わせて** 砕けて いく** 音。
視界が 白く** 遠く** 広がるように** 世界が 溶けて いった。
