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尹の百日


朝の空気は殊の外澄んでいた。


夜通し長く降り積もっていた冷たさが軒を伝って流れ落ちるように消え去り、庭の梅の枝の先に結んだ水滴がゆっくりと揺れた。


交泰殿キョテジョンの奥、しとみの下に薄く透ける日差しが細く震え、美しい布に包まれて静かに眠るユンの頬を指先でそっと撫で下ろした。小さな息を吐く大切な生命が朝鮮という時間の外で、私の心臓に触れた。


キム尚宮が用心深く近づき、腰を折った。


「中殿ママ、殿下から再びお伝言がございました……。」


彼女の声が先ほどよりさらに用心深かった。殿下が送った伝言がもう何度目か分からないほど、彼は私と王子を配慮していた。何だか殿下の顔がありありと見えるような気がした。


「私の言葉を再び伝えてください、キム尚宮。世子の百日の宴の代わりに恵民署ヘミンソへ薬材を下し、王室の穀倉を開いて差し上げるようにと……世子が導くべき朝鮮ではありませんか。」


束の間の静寂、そしてごく小さく息を吸いながら頷くキム尚宮の姿が見えた。


「御意、承知いたしました。」


彼女が下がるのを見て、尹の小さな手をもう一度包み込むように握った。


難しいだろうな。絶えず殿下にあんな言葉を伝えるのは……


そう考えると、尚宮という職業はあまり良いものではないのだな……


しかし尹の未来を考えれば考えるほど、考えはさらに固くなった。


私の代わりに、誰かの器を満たすこと。


王となるそなたの使命であり徳目、それを必ず王になってからする必要があるだろうか。


幼くても今から民を顧みることをすれば良いこと。


私を見つめる、きらきらとした瞳に向かい、言葉を切り出した。


「世子よ、そなたの記念日に他の人々を助けるのはとても意味深いことになるだろう。それもそなたが治めるべき民ならなおさら……。」


まるで私の言葉に応えるように、尹は殿下と似た、可愛らしい微笑みを浮かべた。小さく握りしめる子供の指が可愛らしく感じられた。込み上げてくる胸に子供の微笑みが刻まれた。


尹を世話するうちに、親が子供のために命も捨てられるのがなぜなのか理解できた。乳母と共に過ごし、子供の微笑みを見るだけで一日があっという間に暮れた。幸福だった。このささやかな幸福が長く続くことをただ願うだけだった。


そうして一日中 尹と共に過ごした。キム尚宮が持って来る用事を一つ一つ処理しながら子供の体調を見守った。


一日の日課を終え、今日届いた兄の書状をざっと目を通そうとした矢先、聞き慣れた足音が聞こえ、やがてキム尚宮の上気した声が聞こえた。


「中殿ママ、殿下がお越しでございます。」


彼の訪問はいつも嬉しいことだったが……今日は少し早かったな?


「お通しして。」


私の言葉が終わるや否や開いた戸の向こうに、端正で威厳に満ちた男の姿が目に入った。書札を片付け、すぐに席から立ち上がり、殿下を迎えた。


「また仕事をしていたのか。」


優しげな彼の声、そして同時に尹の方へ向かう彼の足取り。子供を抱き上げた彼の微笑みがどれほど柔らかいことか。まさに私が望み、願っていた家庭的で愛に溢れる父親の姿だった。


「兄から書札が来て、読もうとした矢先でございました。」


穏やかな彼の微笑みが胸に落ち、さざ波のように広がっていった。


「私には書札一つもないのに、彼と書札をやり取りしていたのか。本当に……薄情な男だな。私も待っていたというのに。」


「恐悦至極でございます、殿下。」


彼の懐に抱かれた尹のきゃっきゃという幸福な笑い声に、自然と口元が上がった。しばらく尹を見つめて幸福な微笑みを浮かべていた彼が顔を上げた。


「百日の宴を辞退したと聞いた。どうしてそうしたのだ。」


少しは寂しげな彼の声が耳元を震わせた。考えてみると、私だけの子供ではないのに、殿下も寂しいだろうという考えが浮かんだ**。


「最近、飢饉がひどく、民が食べるものに困り、多くの人々が漢陽ハニャンへ来ていると聞きました。尹が初めて迎える意味深い日が飢えた民の方へ回るのならもっと良いではありませんか。彼らは尹がやがて治めるべき民ではありませんか。」


私の言葉を聞いた彼は長い間言葉がなかった。流れる静寂に顔を上げて彼を見つめると、私の顔から、子供へ、再び私の目へ。そしてごく微細に口角を下げた。


「あれほど聡明で慈悲深い母を持つとは、世子は福を持って生まれた**のだな。」


短い文章だったが、その中に込められた熱さがあった。彼の微笑みが私が間違っていないことを証明してくれた。


「最近、恵民署に多くの人々が押し寄せ、常に穀物が不足していたが、久しぶりに不足することなく温かく食事を分かち合ったという。中宮殿から薬材も下したそうだな。都城の至る所で多くの人々が世子の百日を祝福したと聞いた。そなたが望むのはこういうことだったのか**。」


ほんの少し胸に微妙な波が揺らめいた。温かい彼の視線が多くのことを語ってくれた。感謝、そして愛おしさ、その全てを超えた、愛らしさまで。そんな殿下を見ると、再び微笑みが浮かんだ。


「ただ殿下が民をお思いになる心に少しでも力になりたかっただけでございます。」


彼の微笑みが胸に響き、じんとした。殿下の指を握り、目を合わせている尹と、そんな子供を限りなく愛おしい目で見つめる彼を見て、胸が激しく込み上げた。私の心が民に伝わり、その心が再び戻って殿下の心を揺り動かしたという事実に、再び確信を持つことができた。


私が進むこの道は正しい道**なのだな……


団欒と温かい雰囲気が続いた。常に時間を空けて世子と遊んでくれる殿下を見ると、幸福な微笑みが顔いっぱいに浮かんだ。


その時までは……そうだった。今日が何の日かすっかり忘れていたからこそ可能なことだった。


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