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冊封の夜



夜は殊の外長かった。


紅い絹が垂れ下がる交泰殿キョテジョンの中、ほのかな香りが空気中に広がる。世子冊封を目前に控えた中宮殿は静まり返っていたが、その静けさがかえって私の胸を妙に圧迫していた。


寝台の傍に座り、ユンの額に手を置いた。整った寝息、まだあまりに幼い体温。


こんなにも小さな子供が世子だなんて……


まだ寝返りも打てないのに……この子が王になるなんて。


胸がどきどきした。わくわくしながらも恐ろしかった。愛おしい、心配、胸がいっぱい、そして申し訳ないという感情がもつれ合い、初めて感じる目まいのするような感情が波のように押し寄せてきた。


子供の小さな手をぎゅっと握り、しばらく見つめた。


すると、背後から漂う暖かい体温にハッと我に返った。息遣いがうなじをかすめた。


慣れた気配。


殿下だった。


「息子とはいえ、他の男を見るのは嫌だな。どうしてそんな目で尹を見つめるのだ。」


低く穏やかな声、いたずらっぽい嫉妬が滲む声。


瞬間、まぶたが重く降りた。肩を抱く腕、もたれかかる胸。息遣い一つにも心臓がどきどきした。


震える心を必死に隠し、なかなか開かない口を開いた。


「……私は、耐えられるか恐ろしいです。」


彼は答えの代わりに私の腰をさらにしっかりと抱きしめた。重々しい体温が私の背筋から徐々に広がった。揺れ動いていた胸が少しは落ち着いた。


「恐いのなら、私にもっと頼るといい。」


耳元に低く突き刺さる声に、本能のように彼を振り返った。


私が好きな目元の笑み、私にだけ見せる微笑み。


「心配すべきことは尹ではなくそなたの安否だろうに。百日になったら……二度と楽に眠れないだろうと言った私の言葉を、忘れたのか。」


心臓が狂ったように跳ねた。


恥ずかしい気持ちにこみ上げる笑いをこらえながら彼の胸を押したが、かえって彼の硬い腕が私をさらに近くに引き寄せた。顔が赤く火照り、息が荒くなった。


彼の唇が私の頬をかすめると、全身がぞくっと震えた。押し退けようとする手は虚空を掴むだけで、力を失っていた。


ああ、こんなこと本当に……心臓に致命傷だというのに……。


心の中だけで呟いた言葉が、息遣いに混じって流れ出ているようだった。


殿下は笑みを浮かべた。光が描く顎のライン、白い指先、細まる目元。節制の中に隠されていた熱気がそのまま現れた。


「明日は世子の母后として、そなたの立場を満天下に焼き付けることだろう。」


彼が私の方に身を傾け、そっと額をぶつけた。触れた瞬間に広がる戦慄。深く染み込む温もり。


「だが今日は……私の女として留まれ。」


彼の唇が首筋を伝って降りてきた。震える息が私の唇から漏れ出た。指先が虚空をさまよい、やがて彼の肩に置かれた。


羽のように柔らかい口づけが、やがてもっと熱く濃密に変わった。胸が締め付けられ、息遣いが絡み合い、灯火までもが揺れた。


彼は私をひょいと抱き上げ、寝台へ移した。絹の布団が冷やかにまとわりつく瞬間、彼の体温が波のように覆いかぶさってきた。背中に広がる冷ややかな気配に体がびくっと震えた。


「殿下……冊封を目前に控えた日でございます……」


前合わせを整えながら****かろうじて吐き出した言葉は、彼の唇にすぐに塞がれた。甘く、そして胸が詰まるような熱気。


「** 괜히百日まで待つなどと言ってしまった**な。焦がれる。」


彼の声が低く、息遣いと共に突き刺さってきた。髪の毛の間を指がかすめた。首筋を伝って降りた唇が、額から鎖骨まで火をつけるように降りてきた。


目をきつく閉じた。心臓が張り裂けそうにどきどきした。彼を押し退けることも抱きしめることもできないまま、虚空をさまよっていた腕を彼の首に回した。


灯火も、風も、子供の寝息も遠ざかった。残ったのは彼の体温、私の心臓の動揺、そして……果てしない震えだけだった。

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