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結婚でもするべきだろう



夕焼けが赤く広がり、宮廷の瓦屋根を染めていた夕方、中宮殿チュングンジョンの中は、一日の騒がしさが終わった後の温かい気配が漂っていた。王子ママは小さな手を虚空に振ってアーウーと声を上げており、その手を握りしめ、幸せな目で見つめる玉貞オクチョンを、愛おしくてたまらないという目で見つめる主上殿下まで……。


ああ、来なければよかった。


連判状ヨンパンジャンを渡そうと来たのだが、中宮殿にいるというので、ついでに中殿ママにご機嫌伺いでもしようかと渡ってきたら、渡す機会も時間もないほどラブラブだった。


「殿下がこれほどまでに中宮殿を頻繁にお尋ねになるので、中宮殿の敷居がすり減ってなくなることでしょう。」


少し皮肉る私の言葉にも、ただ笑って玉貞を見つめる殿下を見て、舌を巻いた。


重症だな……。


これでは、結婚していない者は寂しくて生きていけるだろうか。


先に我に返ったのは玉貞だった。


「ところで、兄上……殿下にご用件があるのではなかったのですか。」


照れたように微笑みながら話す玉貞をぎゅっと抱きしめてすりすりする殿下を見て、表情が腐っていくのを感じた。


このように甘くてラブラブな雰囲気も耐えがたいが、常に冷静だった殿下が、徐々にあのような姿を私のいる場所でも見せるというその事実が、何よりも私を苦しめる。


妹が愛されているという事実は良いことだが……


毎回鳥肌が立つ私のことも少しは考えてくれ……。


「あ……ハハ。いえ、中殿ママ。ただ今日はご機嫌を伺いに来ただけです。」


必死に手を振って答えたが、殿下は気にも留めない様子で、すりすりしながら私を見つめた。


一体どうしろというのですか、殿下。


目で罵倒しているのがバレたのだろうか。私を見ながら妙な微笑みを浮かべる殿下を見ると、ため息が先に出た。


「羨ましいなら、張大監も結婚すればよい。」


いや……羨ましいとは言っていないのですが……。


「殿下、それはどういうことでございますか。私の命はすでに中殿ママと殿下のおものです。」


私の答えに、握っていた王子の手を下ろした玉貞が、殺伐とした目で私を睨みつけた。その目に宿る怒りに、口を固く閉じた。私が生まれてから唯一恐怖を感じた女性は、玉貞だけだった。おそらく、妹が平凡に見えるほどの女性に出会わない限り、私の今後の人生で結婚は無理だろう。


「兄上の命など欲しくありませんから、結婚して家門の血筋を継いでください。」


結局我慢できず、一言苦言を吐き出す玉貞の顔を見て、苦笑いを浮かべた。


私がこうなったのは、お前(玉貞)のせいだというのに……


無駄に女性を見る目を高くしすぎたせいで、並大抵の人が目に入ってこないのだ。


「張大監が望む人なら、私が保証して結婚させてやるから、誰でも言ってみよ。」


玉貞にすりすりしていた殿下が、カッとなった玉貞を見て一旦離れ、王子ママの手を握ってウチュウチュしていたが、玉貞の発言が落ちるやいなや、急いで玉貞の顔色を窺いながら便乗するように話すのを見て感じた。


しっかり尻に敷かれているんだな……。


虚脱した微笑みを浮かべながら首を横に振った。結婚という言葉が自分には該当しないという考えは変わらなかった。二人の姿を見て、私もあのように生きたいと思ったことはあったが、自分の人生には似合わないという考えに、あまりピンとこなかった。


少し視線を窓の外に向けると、月も私を見て微笑んでいるようだった。ふと、月明かりの下で会った廃妃が思考の水面に浮かび上がった。


ん……?なんだ……?


「うわあーん!」


王子ママの泣き声のせいで、一瞬にして中宮殿の雰囲気は修羅場となった。戸惑う殿下と、駆け込んできたキム尚宮。皆がおろおろしているのに、毅然とした顔で王子を見つめている玉貞まで。自らおむつを替えてやる玉貞の姿を見ると、色々な思いが頭をよぎった。


子どもか……。


私もいつかは平凡な人生を送り、結婚して子どもを授かって生きられるだろうか。


おそらく私は長生きできないような気がする。長生きしたいとも思わなかったし、私がしていることは全て危険極まりないではないか。細く長く生き延びる人生より、華やかな花火のような人生を送りたいと思った。私が望む人生は、そのような人生だった。


私はただの影に過ぎない。だから結婚などしない。


いつからか家門を再興させるという私の決意は消え去っていた。以前なら野心が先に立って動いただろうが、殿下を経験してみて、この人は心から王だと感じた。宮廷の中でも、朝鮮を見つめるその慧眼けいがんと深さを悟ってからは、ひたすら私の主君として仕える方はこの方一人だという考え以外はできなかった。


もしかすると……


私よりも手ごわい人に出会ったことへの喜び?


同族に出会った歓喜?


私よりもさらに陰湿な人がいるとは想像もできなかった……。


宮廷内を圧し潰す獣の眼差し。しかし、姉の前ではどうすることもできずに崩れ落ちる男。その怪異な間隙を、姉だけが知らない。


まあ、知らなくても構わないだろう。玉貞が幸せならそれでいい。


今、私が望むただ一つのことは、玉貞と殿下の幸福だった。


いちゃつく二人を見て、微笑むこと以外にできることはなかった。王子ママを見て明るく微笑む玉貞を見つめると、亡くなった母が思い浮かんだ。玉貞が幼い頃に亡くなった母は、美しく端麗な容姿と芯の強い性格を持ち、傑出した女傑のような感じの、豪放な方だった。若くして病を得て亡くなったが、母は私の精神的な支柱であり、今でも母の教えは私に大いに役立っていた。


お母様、私はお母様が最後に残された言葉通り、


妹を守るために最善を尽くしています。


きっとあの場所で私たちを見守ってくださっているのでしょう。


玉貞を愛おしそうに見つめる殿下を見て、微笑んだ。


最後までこみ上げてくる鳥肌はどうすることもできなかったが……。


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