すれ違う視線
夜が深まり、編殿の内部は、奥ゆかしい墨の香りと溶け落ちる蝋の匂い、そして古い書物の淀んだ空気で満たされていた。粛宗は筆を持ったまま机に寄りかかり、深い思索に沈んでいた。窓の外から吹き込む風の音が微かに聞こえてきた。わずか一刻前、彼が送り込んだ影から密かな報告が届いた。連判状が張希載の手に渡ったという短く簡潔な報告は、まるで完璧に織られた錦に最後の金糸を通したかのようだった。
**全てが彼の意図した通りに流れていた。**張希載の機転のおかげだった。
しかし、何かおかしかった。勝利が確定した今、胸の内には安堵感の代わりに、言い知れぬ後味の悪さと微かな不安感が染み込んでいた。この完璧さが、むしろ奇妙に感じられた。まるで寸分の誤差もなく全てが合致する弓の弦の矢のように、いつか弦が切れるかもしれないという予感が不吉に脳裏をよぎった。その巨大な不安の正体がわからず、粛宗は苛立っていた。
もうこの苛立ちに耐えられなかった。粛宗は筆を置き、席を立った。この息苦しい場所から抜け出したかった。今すぐ彼女(張玉貞)のもとへ駆けつけたい思いだったが、最近とりわけ王子のせいで眠れていない彼女の姿を思い出し、自分の存在が彼女にとって新たな重荷になるのではないかと心配が先に立った。
「傍にいると、つい玉貞を困らせてしまいそうでな……。」
知らず知らずのうちに笑みがこぼれた。大切で愛しい彼女を、何もしないでじっと見ているだけでは、自分まで心臓に負担がかかるように思われた。
尚膳に一人で歩くよう命じた彼は、涼しい夜の空気を受けながら編殿を出た。月明かりは冷ややかで、宮廷の瓦屋根の上を銀の衣で覆っていた。遠くから聞こえる木の枝が揺れる音だけが、彼の足取りを追ってきた。
とぼとぼとあてもなく歩いていた彼の足取りが、一つの東屋の近くで止まった。騒がしい声が口論を繰り広げていた。鋭くかん高い声の間から聞こえる、苦しげだが決して屈しない一つの声。
「**水賜伊**の分際で、よくも逆らうな!」
「罪を犯したわけでもないのに、どうしてひざまずけと仰るのですか!」
距離が少しあり、ぼんやりとしか見えなかったが、宮女たちが幼い水賜伊一人を取り囲んでいた。水賜伊は擦り切れた服に乱れた髪で、身なりはみすぼらしかったが、その眼差しだけは燃え盛る炎のように堂々としていた。
粛宗は闇の中に身を隠し、その光景を見守った。同年輩の宮女たちの集団いじめに為す術もなく遭っていながらも、その幼い水賜伊は決して気圧されなかった。むしろ、屈しない姿勢で真っ直ぐ立ち、自分の声を上げていた。
「幼く、身分が低いからといって、どうしてこのように勝手に蔑むことができるのですか!」
粛宗は思わず一歩足を踏み出した。あの小さく取るに足らない体から噴き出す堂々とした気概が、ひどく興味深かった。その瞬間、遠くから一人の尚宮が小走りで近づいてきて、宮女たちは慌てたように急いで散らばった。
粛宗は自分が出る幕ではないことを悟り、身を翻して立ち去ろうとしたその時、彼は見ていた水賜伊と目が合った。
擦り切れた服を着た、名前さえ知らない卑しい宮女の眼差し。その目は戸惑いや恐れを浮かべていなかった。むしろ、妙な感情が宿っていた。ぞっとするほど静かで深い眼差し。
粛宗は一瞬息をのんだ。短い瞬間だったが、その眼差しは彼の心に深い響きを残した。
やがて水賜伊は状況を把握し、丁重に腰を曲げて礼をとった。水賜伊は粛宗に礼を尽くし、尚宮に続いて静かに闇の中へと消えていった。
粛宗は長い間その場に立ち尽くし、彼女の小さくなっていく後ろ姿を眺めていた。
連判状、西人たちの陰謀、そして言い知れぬ不安感。この全てを忘れさせるほど、その一瞬の眼差しは深い余韻を残した。




