すれ違う影
生臭い、雨に濡れた土の匂いが鼻先をかすめた。
激しい雨が洗い流した場所に、土の匂いが濃く染み込んでいた。まだ完全に乾ききっていない地面は、日差しにキラキラと光り、息をしているようであり、その上に広がる閔大監の屋敷の門前は静寂に包まれていた。
静かなほど、裏があるものだ。
数日前、閔大監の家で会合があったという事実を聞いた。門前が見える屋敷の軒下に立って動きを窺っていたところ、背後から人影を感じた。振り返らなくても誰かわかった。
「大監、確認いたしました。」
部下は決意と確信に満ちた声で話し、用心深く近づいてきた。先日、会合で何があったのか確認するため、あらゆる情報網を駆使して調べよと指示した後、西人たちの接点となりうる全ての場所で情報を確認した。
「王子殿下の世子冊封への反対と、中殿ママの廃位、そして廃妃閔氏の復権を要求する動きでございました。」
部下の言葉に、思わずゆがんだ笑みが浮かんだ。
絶望に狂えば、目も耳も閉じるもの。老いぼれども、自らの足で墓の前に列を作って並ぶつもりか。ハッ……誰に命じられたわけでもないのに、自ら死んでくれるとは、ありがたい限りだ。
ならば次は証拠さえ掴めばいい。
「それで、どう動くと言っているのだ。」
私の問いに、少し躊躇した後、彼は再び声を潜めて言った。
「それが……**連判状**を用意すると申しております。」
部下の言葉は、全くもって見ものだった。これが私にまで入ってくるほどの情報ならば、可能性は二つ。一つは、大々的に全ての西人が動くこと、もう一つは逆情報である可能性。
だが、いくらなんでもこの時局に連判状だなんて……この老いぼれ方々が本当に自分の墓を掘るつもりでなければ……。
「もう一度確認してこい。今この時期に連判状とは。自殺をしようとしているのでなければ……逆情報の可能性もあるゆえ、慎重を期して確認するのだ。」
「はい、大監。」
部下は再び影の向こうへと消えた。
ハァ……権力の味に狂った老いぼれどもを相手にするのは、なかなか骨が折れる。
最近、南人側からも不穏な動きが感知されるという別の部下の報告を受けていたため、そちらにも気を配る必要があった。王子殿下の誕生を中心に、西人と南人が忙しく動いているのが目に見えた。
しばらく閔維重の私邸を眺めた。数え切れないほどの陰謀と策略が、あの土塀の中で交わされたのだろう。彼らは今、どんな表情をしているのだろうか。
静かな静寂が、彼らの絶望を隠すためのように思えて、さらに滑稽だった。
整理がつき次第、入宮せねばなるまい。我が元子ママがどれだけ可愛らしくなられたか確認もせねばならぬし……体が十あっても足りないだろう。
気だるさに一度伸びをして、立ち去ろうとしたその瞬間、閔維重の私邸の母屋の方から人影がし、固く閉ざされていた門が用心深く開いた。
かなりの距離がある場所であるにもかかわらず、一目で分かった。
廃妃閔氏……?
彼女の後ろにはパク尚宮が付き添っており、彼女は周囲を窺いながら用心深く歩いて出てきた。彼らを見て、声のない笑いを漏らした。誠に哀れで、だからこそさらに滑稽だった。
姉の肩を踏み台にして最高の地位に上り詰めた女が、今や中殿という影にしがみつき、民心の末端をうろつくとは。藻掻きは哀れだが、その結末は結局私のオモチャに過ぎない。
体を壁に寄せ、彼らを見つめながら、ゆっくりと後をつけ始めた。中殿の座を奪われても、まだ未練を捨てられない女。その女に西人たちが最後の希望を託していることを、すでに知っていた。
気づかれないよう、慎重に彼女の後を追った。もしかして気づかれるかもしれないと思い、距離を大きく開けた。しばらく歩いていた彼女がどこかで立ち止まり、きょろきょろと辺りを見回した。
そしてパク尚宮の案内に従い、用心深くある家の門をくぐった。
お忍びなど一度もしたことのない、名家の娘の腕前ときたら……。
彼女が入ってからしばらくその家を見つめていたが、ふとその家の表札を見た瞬間、目が釘付けになった。
「……**金萬重**の家ではないか。」
瞬間、頭の中に空いていたパズルのピースが鮮明に嵌まった。単なる女の未練ではなかった。
西人の心臓部へと繋がる糸口……
よろしい、ますます面白くなってきた。これこそ踏み潰し甲斐があるというものだ、閔氏のお嬢様。
風が落葉を転がしながら、物寂しげに通り過ぎていった。口元にかかった笑みが再び濃くなった。




