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手放せない人



御医が退室した後も、私はしばらく呆然と座っていた。静まり返った中宮殿の空気の中、どういうわけか不安な気持ちは全く良くならず、久しぶりに見るオクジョンの姿がひどく痩せ細っていることを知ると、押し寄せる自責の念でますます頭がズキズキと痛んだ。冷たく冷えゆく彼女の手を離せないまま、ただ彼女の小さな顔だけを見つめた。


黄昏たそがれ時が過ぎ去る頃、ガラガラという音と共に、キム尚宮と尚膳サンソンが同時に部屋に入ってきた。外界の騒々しさがこれほど無意味に感じられたことはなかった。


「殿下……夕餉ゆうげを召し上がる時間でございます。中宮殿に運ばせましょうか。」


尚膳の言葉に、しばらく後ろを振り返った。彼らの瞳は、浅い不安に濡れていた。


「中殿が起きたら、一緒に摂ることにする。」


私の言葉にしばらくためらっていたキム尚宮が口を開いた。


「恐れながら……殿下。


私がママをきちんと補佐できず、ご心労をおかけいたしました。」


彼女の気性を知っている。何とか止めようとしたのだろう。だが、オクジョンが聞く耳を持っただろうか。


「よくやってくれた、キム尚宮。今後、中殿の健康管理には万全を期してくれ。」


そう話している最中、オクジョンの**指先が微かに震えた。**その小さな動き一つで、すべてが止まっていた世界が再び息を吹き返したようだった。重かった空気が一気に霧散し、胸の中に凝り固まっていた岩がガラガラと崩れ落ちた。


すぐに身を起こし、オクジョンの傍へさらに近づいた。震えていた彼女の手が、私が握っていた手をぐっと掴んだ。


「オクジョン、気がついたか。」


「で……殿下?」


ゆっくりと瞼が開き、やがて美しい瞳が私の目にいっぱいに満ちた。その時になって初めて安堵感で全身の力が抜けた。固く閉ざされていた心に、日差しが降り注ぐようだった。


「赤子は……赤子はご無事ですか。」


自分の身の安全よりも、赤子を先に気遣う姿に、思わず目頭が熱くなるようだった。こみ上げる感情を抑え込みながら、彼女の手を優しく包んだ。


「大丈夫だそうだ。だから、そなたこそ自分の体の心配をするがいい。」


声も出せないキム尚宮を見つめ、私は命を下した。


「直ちに水剌間スラッカンに言い渡し、栄養価の高い粥を上げるように。」


慌ただしく駆け出ていくキム尚宮をしばらく見つめていた彼女が、再び言葉を続けた。


「ご心配をおかけして、申し訳ございません、殿下……。」


彼女の声にはまだ力がなかったが、その真心は私にあまりにも鮮明に伝わってきた。しばらく会えなかったせいか、骨身に沁みるほどの感情がこみ上げてくるようだった。そっと彼女の頬に手を置いた。


「そなたの評判に影響するかと思い、訪ねられなかった私が恨めしい。


中殿であろうと熟儀スグィであろうと、オクジョン、そなたはただ私のオクジョンであるだけなのに……


再び以前のように、そなたの傍にぴったりとくっついていなければならないな。」


美しく微笑む彼女を見て、再び心に誓った。何が重要か忘れていたことに気づいた。最も重要なのは私たち二人の心であり、周囲の環境などではない。誰が何と言おうと、最も重要で愛する人はオクジョン一人だけなのに、それを見失っていたのではないかと思う。


用心深く体を起こすオクジョンを支えて座らせた。


「私も……早く殿下にお会いしたくて……無理をいたしました。」


蚊の鳴くような声が可愛くて、笑いが噴き出すのをかろうじてこらえた。私の顔を注意深く窺っていた彼女が、再び頭を下げて言った。


「お……お怒りになると思っていました。」


腹は立っていた。もちろん、自分自身に対する怒りだったが、それを彼女に向けることはできなかった。明白な私の失策だったからだ。彼女の几帳面で優れた業務処理能力に驚いたのは、他ならぬ私ではないか。彼女を責める理由などなかった。


そっと近づき、彼女を胸に閉じ込めた。彼女の温かく慣れた体温が私に伝わってきた。小さくか弱い体つきが胸いっぱいに満ちて、ようやく安定した幸福を感じることができた。


そうだ、やはり私の居場所はここが正しい。


そっと私の懐に潜り込むオクジョンを、さらに深く抱きしめた。久しぶりに触れる慎ましい下腹を暖かく包んだ。まだ膨らんでいない腹と、さらに痩せてしまった体を心配そうに撫でた。愛おしい生命がその中に生きているのを感じながら。


「今日は、これ以上何もせずに、こうして二人で休んでいたい。」


私の言葉に、胸にすやすやと寄りかかっていた彼女が頷いた。久しぶりに抱きしめた彼女を放したくなかった。深い渇望から、胸に抱かれている彼女の唇を探した。乾ききっていた私の心を潤してくれるように、甘い中毒性のある彼女との口づけは止められなかった。


失ってしまうのではないかという恐れが込められた口づけは、切ないというよりは**狂気に近かった。**それでも、彼女は完全に私のものであった。


強張っていた頭が、少しずつ緩んでいくように感じられた。今日は愛おしい彼女を抱いて眠れるのだという思いに、再び幸福感が押し寄せた。


愛しい私の人。これからは空が奪おうとしても、決して手放さない。

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