花が育つ時間
初夏の陽射しは、強くなく、庭をそっと包み込んでいた。青い葉の間から染み込む風が、土の匂いを静かに揺らしながら通り過ぎていく。
植木鉢の前に膝をついて座り、小さな花びらを愛でた。まだきちんと咲いてもいない蕾を見ると、自然と口元が緩んだ。子どもが生まれたら、こんな環境から見せてあげたいと思い、小さな庭を手入れして花畑にしようかという考えさえ浮かんだ。
お腹の子に話しかけるように花を撫でていた瞬間、背後から静かな気配がゆっくりと近づいてきた。
「殿下、いらっしゃいましたか。」
明るい微笑みを浮かべた彼が、私を胸にぎゅっと閉じ込め、頬にちゅっと口づけをした。
やがて少し花を見下ろした彼が、手を伸ばして小さな蕾をいじった。
「何をしているのだ。」
「胎教に良いものを探していたら、ここまで来てしまいました。
部屋の中にばかりいると、また息苦しく感じて……。」
彼の表情が微妙に変わるのを見て、それ以上言葉を続けることができなかった。
妙な表情を浮かべていた彼の顔が、やがていたずらっぽく変化した。
「胎教なら、花よりも父親の声の方が良くないか。」
無関心に吐き捨てた一言に、ため息と笑いが同時に噴き出した。
「だって……殿下は毎晩いらっしゃるし……いらっしゃると、言葉よりもずっと口づけばかりなさるのですから……。」
顔が赤く火照った。少しぶつぶつ言いながらも、手は本能のように腹を包み込んだ。相変わらず私を抱きしめていた彼は、再び微笑んだ。
「私の子を宿したそなたが、あまりにも可愛くて我慢できないのだよ。」
ああ……これだから本当に。
あんなセリフを平然と言うから、心臓に悪くて会いに行けるものじゃないわ。
優しさに満ちた瞳で私を見つめる彼の眼差しは、相変わらず致命的で、胸を高鳴らせた。短いながらも深く留まった眼差しの中で、言葉以上の多くのものが交わされた。
何気なく持ち上げられた私の手に、そっと口づけを合わせた。
「今夜も行くから、寝ずに待っているように。」
殿下の言葉にしばらく微笑んでいると、私よりもキム尚宮の表情の方が戸惑っているように見えた。
「殿下、今日は義禁衛よりも厳しい嘉礼(かれい/結婚の儀式)の禁令がございますのに……。」
彼は浅い微笑みを浮かべ、キム尚宮を見つめた。
「嘉礼都監がいくら厳しかろうと、王の夜道まで遮る権利はないだろう。」
時々忘れてしまう。この人が王だということを。
私にはあまりにも甘く、危険な人としてしか感じられないからだろうか。
キム尚宮の表情が少し複雑になったのを見て、しばらく様子を窺っていた彼が微笑みながら私を見つめた。
「嘉礼都監よりも、キム尚宮の方が恐ろしいな。」
しれっとした言葉に、再び笑いがこぼれた。
彼は腰帯から小さな袋を一つ取り出し、私に差し出した。
「これは……?」
「**大王大妃ママが生前にいつも身につけておられた香嚢**だ。どんな日にも心身を整えるために持っておられた香……明日は、そなたに必要だろうと思ってね。」
小さな袋を鼻先に近づけると、梅の花と松の香りが混ざったような、古く熟成された山の気配がそっと染み込んできた。この袋を見ると、妙に冊封式が現実味を帯びてくる。
「少し……嬉しいけれど、一方で恐ろしいです。」
中殿という座が、
迫りくる運命が、
向き合わなければならない現実が、
まだ自分自身で答えを出せていないものが、
胸の中にしこりのように残っていた。
しばらく静かな静寂が降り注いだ。風が裾をかすめ、庭の小さな花々が首を揺らした。
それと同時に、暖かい手の温もりが私の頬を包んだ。限りなく暖かい瞳が、私の心臓まで察するかのように優しく包み込んだ。
「そなたの心配は私がする。そなたは私のことだけを考えているがいい。」
胸の奥のどこかから込み上げてくる感情に、私は首を垂れた。
彼のその一言に、冊封式も、中殿という重さも、ありとあらゆる恐れが、一瞬にして崩れ落ちるようだった。
だが、じっとしていると、また憎たらしい気がしてきた。私よりもさらに平然とした顔で、あまりにも簡単に安心させてしまうのだから。
彼はしばらく私を見守ってから、そっと口角を上げた。
そして、再び近づいてきて、頬にちゅっと音を立てて口づけをした。
「子を宿した女がこれほど美しいとは、
花たちも嫉妬するだろうな。」
顔が熱くなり、私はくるりと首を回した。彼が低く投げかけた言葉に、こらえていた笑いがついに噴き出してしまった。キム尚宮が隣で首を横に振る姿が目に入って、ようやく我に返った。
花びらの間を風が流れ、笑い声が庭に少しずつ広がっていった。




