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廃位



いくらか暖かくなった春風の温もりが宮廷を包み込んで通り過ぎたが、中宮殿には冷たい風だけが残っていた。ミン・ユジュンの足取りが残した寒気は、依然として中殿の居所に留まっていた。


尚宮や女官たちは、不安と恐怖に怯えて顔を上げることができず、その目にはすでに血の気が失せた主への憐憫と、自分たちを襲うであろう未来への恐れが交差していた。


「ママの玉体ぎょくたいがお優れないようで、この小人、心が安まりません……。」


パク尚宮の震える声に、ソウィはゆっくりと首を横に振った。彼女の瞳は空っぽだった。怒りも、悲しみも、絶望もすべて焼き尽くし、灰だけが残ったような灰色の瞳だった。


あの時、大妃ママがチャン尚宮が実家にいると教えてくださった時に、


それ以上足を踏み出さなかったならば。


私が中殿にならなかったならば。


一度も暖かい眼差しをくれたことのない殿下を恋慕しなかったならば。


彼に少しの期待もしなかったならば、


今、私にこんなことが起こっただろうか……?


すべてを諦めたかのような彼女の眼差しが、床に落ちた。すでに世のすべての感情を捨て去り、抜け殻だけが残ったかのように、自分の全人生が底知れない奈落の底へと突き落とされる感覚だった。


ひんやりとした静寂の中宮殿の静けさを破り、外から重い足音が聞こえてきた。都承旨(トスンジ/王命伝達役)が粛宗の教旨(キョジ/王の命令書)を持って入ってくる音だった。


女官たちは一斉に地面にひれ伏し、パク尚宮はさすがにソウィを見ることができず、涙を流した。


「中殿ママ、御命をお受けくださいませ。」


都承旨の声は落ち着いていたが、断固としていた。ソウィはゆっくりと席から立ち上がった。彼女は揺るぎない足取りで戸口へと近づいた。そして、門を出る前に自分が過ごした交泰殿(キョテジョン/中殿の寝殿)を目に焼き付けた。


もしかしたら二度と戻れないこの場所を、


しばしの間だけでも、もっと目に留めておきたかった。


自分の存在理由そのものだった中殿という座、そして虚しくすべてを降りなければならない自分、そしてすべてを手に入れたチャン・オクジョン。その虚しい感情を瞳に宿し、空っぽになった心を降ろした。


一歩、二歩、


中宮殿の中庭へと進むと、都承旨が彼女を見つめていた。彼の視線には、いかなる感情も混ざっていなかった。


きっと……殿下も私に何の感情も持っておられないのだろう……。


ゆっくりと降りてきた彼女が、都承旨の前に座った。彼女の視線は教旨を持った都承旨の手を通り過ぎ、その奥の固く閉ざされた宮廷の門に止まった。何の精神で座っているのかも分からないほど、彼女は混乱していた。御命を伝える承旨の声さえ聞こえないほど、世間はきらきらと輝き、彼女の目に映る空は、哀しいほどに澄み渡っていた。


「……不徳にして内命婦ネミョンブの模範とならず、妬み(とが)、嫉妬して私的な情に囚われ、王室の紀綱を乱し……子孫がなく宗廟社稷そうびょうしゃしょくを危うくした。」


自分の存在を否定される鋭い刃が、胸を裂いて入ってきた。血が流れる痛みさえ感じられないほど、心臓は冷たく冷え切っていった。涙一滴さえ流せない自分の身のしんじょうが、哀れだった。


彼女が廃位される理由は、後継ぎのためではなかった。ただ殿下の女、チャン・オクジョンを中宮殿に座らせるための手続きに過ぎず、もはや抵抗する力さえ残っていなかった。


「……これをもって、中殿閔氏ミンしを廃庶人(ペソイン/庶民に降格)とし、地位を削奪して実家へ送り出すべし。」


教旨の朗読が終わると、都承旨の指示に従って内侍ネシたちが居所に入ってきた。彼らは中殿の冊封さくほうを象徴する玉璽ぎょくじ教命きょうめい、そして**冊宝さくほう**を回収していった。華やかだった王后の象徴が次々と消えていくのを見て、彼女は体を支えていた最後の意志まで断ち切られるようだった。


パク尚宮は泣くのを我慢できず、頭を垂れた。その姿を見ていたソウィの目にも涙が滲んだ。それは悲しみというよりは、すべてを失った者の最後の虚無感に近かった。


王后の華やかな礼服を脱ぎ、質素な平服を着た。キム尚宮の助けのもと、彼女の頭を飾っていた重く華やかなカチェ(加髢/かつら)が慎重に降ろされた。髪を下ろすパク尚宮の手が震えた。ソウィは静かに言った。


「大丈夫だよ、パク尚宮。」


ソウィはもはやこの国の国母ではなかった。彼女に従っていた尚宮と女官たちは、彼女の前にひざまずいて号泣した。彼女への最後の忠誠と憐憫の涙だった。


中宮殿の庭には、すでにかごが用意されていた。ソウィは中宮殿を後にし、ゆっくりと籠に向かって歩いた。もはや守るべき権威も、背負うべき責任もなかった。彼女はただ一人の人間として、一人の女として、この無情な宮廷を去るだけだった。


ソウィは静かに振り返り、便殿の方角を見つめた。


そして静かに拝礼した。


おそらく最も冷酷で最も冷たかったあの男、粛宗への最後の挨拶だった。


他人のものを欲しがった自分の欲の結果であり、恋慕してはならない者を恋慕した自分の悲惨な末路だった。


籠に乗り込むソウィの後ろ姿は、彼女の人生で最も寂しく、哀れな瞬間だった。


パク尚宮によって籠の戸が下ろされ、その重々しい揺れと共に宮廷の正門が彼女の背後で閉まる音が聞こえてきた。冷たい風が彼女の顔をかすめていった。彼女の目に映る宮廷の風景は、まるで巨大な監獄のように感じられた。


もう彼女には何も残されていなかった。


そして遠巻きに彼女を見下ろす者がいた。


もはや何者でもない人になってしまった、いやむしろさらに惨めになってしまった彼女を見つめながら、得体の知れない表情を浮かべている、幼くて小さな水仕女(ムスリ/下女)だった。


しばらく彼女が進んだ方向を見つめていたその子は、静かに宮廷の中へと消えていった。

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