永遠なるものは無し
深い夜、
闇よりも深い深淵の中から、一歩の足音が便殿へと向かっていた。内禁衛の厳重な警備の中を歩くその足取りには、もはや何も残されていなかった。固く閉ざした唇は青白く、眼差しはすでにすべてを諦めたようだった。
「殿下、ミン・ユジュン大監がお目通りを願います。」
思いもよらない者の予期せぬ訪問に、一瞬驚いたように眉間に皺を寄せた粛宗は、しばし立ち止まった。
ついに覚悟を決めたか……。
用心深く咳払いをした粛宗は、戸口を見つめて口を開いた。
「入れさせよ。」
便殿の戸が開き、ミン・ユジュンは独り御椅子に座る粛宗と対峙した。粛宗の顔は冷たい微笑みを浮かべていたが、ミン・ユジュンはすでにその視線に動揺しなかった。彼の膝は床に着き、頭は深く下げられた。
「玉体、万康であらせられますか、殿下。」
粛宗の視線が浅く揺れた。
彼は何の反応もない粛宗の前で、上疏文(サンソムン/奏上文)を取り出し、床に静かに置いた。
「中殿ママの廃位に関する殿下の思し召しを……
臣、従おうと存じます。そして中殿ママを適切に補佐できなかった
すべての責任は臣にございますゆえ、臣のすべての官職をお取り上げくださいませ。」
一言、二言と途切れ途切れになる彼の声に、粛宗の眉が微かにひきつった。彼の頭の中には、大きな疑問符が浮かび上がった。
ミン・ユジュンは最後までもがき続けると予想していた。必死に中宮殿を擁護し、自分の罪を否定し、あらゆる手段を動員するだろうと思っていた。そしてミン・ユジュンがそう出てこそ、彼をより深い**汚泥**へと突き落とす名分が生まれるはずだった。
これほど無力に降伏するとは。
粛宗はミン・ユジュンの行動が理解できなかった。勝利の快感と同時に、妙な虚脱感が押し寄せてきた。
「驪陽府院君……なぜ……。」
ミン・ユジュンは頭を上げず、低い声で言った。
「それが、家門が生き残る道だと判断いたしました。
殿下、どうかご許可くださいませ。」
ミン・ユジュンの言葉が続くほど、粛宗の表情はさらに冷たく硬直していった。
中殿を切り捨て、家門と西人派を守るというのか……。
粛宗はしばらく立ち止まり、冷たい眼差しで彼を見下ろした。
先代王の時から彼に受けた屈辱と、自分の足かせとなっていた西人勢力の無道さが、こんなにもあっけなく終わることを許すべきだという考えが、心の片隅に不快な感覚として居座った。
「そなたに対する処遇は、朕がもう少し見極めることとしよう。上疏は置いていけ。」
粛宗の言葉に、ミン・ユジュンは静かに頭を下げた。もはやこの場所で得るものも、失うものもなかった。彼はゆっくりと退がり、粛宗の御椅子に向けて最後の拝礼を行った。
便殿を出る彼の背中に、粛宗の冷ややかな視線が深く突き刺さるのを感じることができた。
中宮殿は相変わらず深い闇に沈んでいた。
夜露が降りる冷たい板敷きの上を、彼は迷いなく歩いていった。すでにすべてが崩れ去った廃墟となった心境だった。自分が生き残るためには、ただ切り捨てる以外に、守れるものも、できることもなかった。
中宮殿に入ると、女官たちは皆不安に満ちた眼差しで彼を見つめた。深く染み込む彼女たちの視線を無視し、中殿の居室へと向かった。
尚宮によって戸が開かれると、真っ白な喪服姿のソウィ(後の廃妃)が灯りの下に独り座っていた。彼女の瞳は赤く充血しており、顔には血の気さえ見つけられないほど絶望の影が差していた。
彼女はミン・ユジュンを見るや否や、飛び起きるように彼に駆け寄った。
「大監!なぜこんなに遅いのですか!私が文を送ってからどれほど経ったと!」
中殿の声は切羽詰まっており、彼の裾を掴む手はぶるぶると震えていた。ミン・ユジュンは感情のない目で彼女の手を振り払った。彼の冷たい行動に、ソウィはひるむように一歩後ずさった。
「お……叔父様……?」
ミン・ユジュンは冷たい瞳で彼女を見つめた。家門のために生まれ、育てられた存在。彼が見るソウィは、もはや愛おしい肉親ではなく、家門を破滅に追い込む危機に瀕した**「重荷」**に過ぎなかった。
「……そなたが中心を保ち、国母の役割をまっとうしていたならば。
そなたが……情愛に関係なく、中殿としての徳を守っていたならば。」
低く呟く彼の声は、冷たくて断固としていた。ソウィの目が大きく揺れた。すべてが自分のせいだという非難。彼が彼女に完全に背を向けたことを意味する言葉だった。
「もう……諦めて降りなさい。」
ミン・ユジュンの冷たい言葉に、ソウィの目が鋭く光った。
「叔父様……そのお言葉は……。」
「家門が生き残ってこそ……そなたにも次という機会があるのではないか。」
低く響く彼の声は、一片の躊躇も温もりも感じられなかった。彼の声は、断崖絶壁に立つ彼女を突き落とす最後の一言だった。
その言葉に、ソウィはもう耐えきれずに座り込んだ。目の前がぼやけ、水に沈んだように世界のすべての音が水面下に沈んだ。彼女の体はぶるぶると震え、口からは苦痛に満ちた呻きと泣き声だけが漏れるばかりだった。
ミン・ユジュンはそんなソウィをしばらく見つめた後、未練なく体を向けた。夜の空気は相変わらず冷たかった。闇の中で頭を上げ、漆黒の夜空を見上げた。数多くの星が煌めいていたが、彼の目には何も入ってこなかった。
彼の唇が微かに震え、虚無的なため息と共に呟いた。
「天の下に……永遠なるものがどこにあろうか。」
彼の声は、自身と家門の没落に対する虚無感でもあり、同時に今この瞬間、権力と愛をすべて手に入れた粛宗とオクジョンの幸福もまた永遠ではありえないだろうという鋭い呪いでもあった。彼の嘆息は風に乗って静かに散っていった。