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第三幕 プロローグ - 鏡の中の影



何も存在しない、静寂な闇の中に置かれていた。


音も、匂いも、温もりもない絶対的な静寂。


まるで観客のいない巨大な映画館の空っぽのスクリーンように、私だけがそこで何かを失った者として、ぽつんと立っていた。何かに縛られているかのように、体を動かそうとしても動かない。


その瞬間、遠くで一筋の光が揺らめき、視線を引きつけた。光は次第に大きくなり、黒く静寂な空間の一隅で、まるで映画のように何かが浮かび上がった。


ピーッ、ピーッ、


規則的な機械音と共に、集中治療室のベッドに横たわる誰か。酸素マスクが鼻と口を覆い、無数の管が体に繋がれていた。ベッドに固定されたような姿は、恐ろしいほどに青白かった。


そしてその隣には、腫れ上がった顔で必死に涙をこらえながら座っている、別の誰かの姿が見えた。彼女の肩は微かに震えていた。


スクリーンの中の映像はぼやけていたが、一目で分かった。


ママ?


そう、そこに横たわっているのは、私だった。


母の姿を見ると、抑えきれない悲しみがこみ上げてきた。そのスクリーンに手を伸ばした。母の涙を拭ってあげたかった。私は大丈夫だと、生きていると伝えたかった。しかし、声さえ出ない状態で、私の手はただ虚空を掻き分けるだけだった。


母を呼びたかったが、声は出ず、狂ったように涙だけが流れる。


会いたかったのに、


伝えたかったのに、


まだ私を諦めないで、と。


私はここに、こうして生きている、と。


一体何が起こっているのだろうか。私が夢を見ているのか、それともあのスクリーンの中の現実が真実なのか、分からなかった。


そうして夢中で涙を流しているうち、スクリーンの隣、闇の中から一つの形がはっきりと浮かび上がってきた。そして、その形が明確になった瞬間、喉元で息が詰まるような感覚に襲われた。


その前に立っていたのは、この体の本当の持ち主である「チャン・オクジョン」だった。


きれいに結われた髪、端正な韓服、そしてその顔。鏡で見ていた顔と瓜二つだったが、どことなく違う雰囲気だった。深さを知れない眼差し。そして、か弱い体から漂う哀れな影。


本物のチャン・オクジョンが、私と向かい合って立っていた。


彼女の唇は固く閉じられ、悲しげな気配を帯びていた。何の動きもなく、ただ私を見つめるだけ。彼女の瞳の中に、計り知れない苦痛と同時に、妙な諦めを読み取った。


なぜ?


どうしてそんな目で私を見るの?


本物のチャン・オクジョンの視線が、ゆっくりと私のお腹へと向かった。彼女の目に驚きと共に、微かな震えがよぎった。悲しみに満ちていた彼女の顔に、何か分からない微笑みがかすめたように見えた。


そしてすぐに、彼女の形がぼやけ始めた。彼女は何も言わず、後方の黒いスクリーンの中へゆっくりと消えていった。まるで最初からそこに存在しなかったかのように。


その瞬間、すべてが波のように砕け散り、押し寄せてきた。


集中治療室の機械音、


母のすすり泣き、


朝鮮の粛宗とチャン・オクジョン、


そして賜薬と廃位の影までも。


現実と夢、現在と過去の境界が崩れ落ち、すべての感覚が混ざり合った。


「ああっ!」


悲鳴を上げて上半身を跳ね起こした。冷たい寝汗が全身を濡らした。心臓が落ち着かない。夢だった。あまりにも生々しい、まるで現実よりも現実のような夢。


頬を伝う涙が冷たかった。先ほど夢の中で出会った本物のチャン・オクジョンの悲しい目と、スクリーンの中の母のすすり泣く姿が脳裏から離れない。


私はまだ、あの世界に……生きているのだろうか?


それともただの夢……?


遠ざかった現代の私、そして悲しい目で見つめ合った本物のチャン・オクジョン。二つの存在が激しく私の意識を揺さぶった。


イナとしての人生は遥か向こうへと追いやられ、チャン・オクジョンとしての人生が私をより鮮明に包み込んだ。


お腹の中で感じる微かな温もりが、このすべての混沌の中で私がしがみつかなければならない唯一の現実であることを教えてくれた。

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