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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第二章 破局の始まり、そして深まる心
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廃位の序幕




その日以来、


粛宗が就善堂を出てから間もなく、宮廷内は張り詰めた緊張感で満ちていた。


夜空の月のように冷たく固い決意を秘めた王の呼び出しに、臣下たちは事情も知らずに集められたが、粛宗の顔から漂う悲壮感と暗い気配に、ただならぬ事が起こることを直感した。


粛宗は玉座に座り、臣下たちを見渡した。彼の視線は、ミン・ユジュンを含む西人ソインの臣下たちに一瞬留まり、やがて断固として正面を見据えた。便殿の空気は刃のように鋭くなった。


「朕は今日、汝らに重要な事実を伝えようと思う。」


粛宗のかすれたような低い声に、頭を下げていたミン・ユジュンの顔が上がった。短い一瞬、目が合い、ミン・ユジュンは粛宗の眼差しから妙な満足感を覚えた。何かを口にしようとしたまさにその時、


承旨スンジを入れよ。」


彼の気配を読んだのか、粛宗は無視するように視線を逸らし、都承旨トスンジを呼んだ。


こわばった顔の都承旨が入ってくると、臣下たちは息を殺し、お互いを見ながら事情が分からないという顔で目配せを交わすばかりだった。


そうして冷たく襲いかかる粛宗の罠に、ミン・ユジュンは「来るべきものが来た」というように静かに目を閉じた。


その姿を嘲笑うかのように眺めていた粛宗が、都承旨に目配せをした。


一瞬ためらった彼が、ぶるぶると震える手で教旨(キョジ/王命書)を広げた。


「朕は今日、重要な決定を下し、模範を示せなかった者への処置を定めようと思う。


中殿チュンジョンミン氏はその本分を尽くさず、嫉妬により淑儀チュクイチャン氏を陰謀をもって陥れようとした。女性の七去之悪しちきょしあくである嫉妬は、中宮殿の主である中殿にとって禁じられた事項であり、また自身の安寧のために不妊を隠し、民に虚偽の噂を広めるなど、国母として到底行えない不徳を働いた。


そして最も重要な、崩御された大妃テビ様を病中に放置するという不孝までも働いた。」


都承旨の声は細かく震えていたが、その響きは便殿全体を揺るがすほど強烈だった。「不徳」「不妊」「陰謀」という単語が、西人の臣下たちの耳には鋭い刃のように突き刺さった。臣下たちはざわめき始め、ミン・ユジュンの顔は真っ青になった。


「これにより朕は、天と民の前で告げる。


中殿ミン氏をその座から廃位し、その職位を削奪さくだつし、すべての礼遇を撤回する。」


廃位。都承旨の口から出た王の断固たる命令に、便殿は一瞬、静寂で凍りついた。やがて静寂が破られ、激しい反発が噴き出した。


「そ…殿下!国母を廃するということは、宗廟社稷そうびょうしゃしょくの根幹を揺るがすことでございます!」


「殿下、これは天下の物笑いとなるほどの亡極もうきょくな事態でございます!ど…どうかご熟慮くださいませ!!」


ミン・ユジュンを筆頭とする西人の臣下たちが一斉に御前にひれ伏し、声を張り上げて叫んだ。


「殿下、確認もされていない情報によって国母であられる中殿様を廃されるとは、


これはあり得ないことでございます。臣たちはこの事を受け入れることはできません、殿下。」


「確認もされていない情報?では朕が今、汝らに確認もされていない情報をもって、


これほど重大なことをやすやすと決定したとでもいうのか?」


冷ややかに沈んだ粛宗の言葉に、臣下たちは頭も上げられず、口ごもった。


その時、悔しそうな眼差しでミン・ユジュンが顔を上げ、言葉を続けた。


「これはきっと、中殿様を陥れようとする勢力が企てた奸悪かんあくな計略に違いありません。


どうかご熟慮くださいませ、殿下!」


彼らの絶叫は必死だったが、粛宗の顔には一片の動揺もなかった。彼の眼差しはむしろ一層冷たく冷えていった。


反吐が出る。


口調、行動、態度一つ一つがすべて気に障った。高潔で清廉なふりをするミン・ユジュンの顔を粉砕してしまいたかった。


驪陽府院君ヨヤンブウォングン、そなたもソン医官を知らぬはずはなかろう。違うか?」


粛宗の口から出た「ソン医官」という言葉に、ミン・ユジュンはひるんで顔を上げた。彼の目には確信と共に、生臭い憎悪が宿っていた。それでもなお、ミン・ユジュンは逃れることができなかった。


「殿下、ソン医官を買収したのは、淑儀チャン氏の兄であるチャン・ヒジェでございます。


彼の言葉だけを信じて中殿様を廃されるというお言葉は正しくないと存じます。


どうかご熟慮くださいませ、殿下!」


「ご熟慮くださいませ、殿下!!」


西人の臣下たちとミン・ユジュンの哀願に、粛宗は失笑を隠さなかった。


やはり、ミン・ユジュン……老練な者ではないか。


チャン大監が関わっていることを知っているな。


「わかった。驪陽府院君の意向がそうであるならば、


この重大な事に一点の疑惑も残さぬよう、朕がその者を直接尋問しよう。」


粛宗の思いがけない言葉に、平静を取り戻しつつあったミン・ユジュンの顔が、半紙のように真っ白になった。


「日程が決まり次第、伝えるゆえ、我が高名なる臣下たちも必ず共にいてくれるようにな。」


血の気さえ失ったミン・ユジュンの顔が青ざめるのを見て、西人の臣下たちもまたどうしていいか分からず、お互いの顔を見つめるばかりだった。


ざわめき始めた大殿で、西人たちの没落を見守る南人ナミンたちの顔には、薄い微笑みが浮かび上がっていた。


「殿下、このように亡極かつ凄惨な事態は必ず厳格に確認されるべきもので、


殿下のお言葉は百回千回正しいと存じます。


どうか関係者たちを**一罰百戒いちばつひゃっかい**とし、真相を明らかになさってください!」


「真相を明らかになさってください!」


いつもは奥座敷の老人のように萎縮していた南人たちが口を開き始めた。


その様子に満足げな微笑みを浮かべた粛宗が言葉を続けた。


「わかった。近いうちに連絡しよう。」


微笑んでいる彼の目は、相変わらず冷ややかに冷え切っていた。


頭も上げられないミン・ユジュンをしばらく見つめていた彼が、冷たく微笑みながら立ち上がった。


「今日の会議はこれで終わりにしよう。」


席を立つ彼の後ろ姿を見送りながら、臣下たちはざわめき始め、ミン・ユジュンは赤く腫れた目元で粛宗の後ろ姿を見つめた。


このままでは引き下がりません、主上チュサン……。


その頃、中宮殿では女官たちが慌ただしく動いていた。


しばらくして、中宮殿の尚宮がやつれた顔で中殿(ここではソウィ/王妃の意)の元へ駆け寄った。


「ママ、殿下が……ママの廃位を命じる教旨を……


都承旨様が……様が……!」


尚宮の声は切羽詰まっており、その言葉は中殿の耳に雷のように突き刺さった。手に持っていた茶碗がガシャンと音を立てて床に落ちた。破片が四方八方に飛び散り、彼女の前に転がった。


彼女の顔は血の気一つなく真っ白になった。


「お…叔父上は、どうなさるというのだ。」


尚宮が慌てた声で言葉を続けた。


「ち…チャン・ヒジェ様の計略であり謀略であると申し上げ、


主上殿下は少しの疑惑も残さないために、ソ…ソン医官を直々に…


尋問なさると……仰せられました……。ちゅ…中殿様……今、どうすればよろしいでしょうか。」


尚宮の言葉を聞いた中殿の顔は、


やがて形容しがたい苦痛と絶望に歪んだ。


あれほど守ろうとした自身のプライドと中殿の座が、


一瞬にして崩れ落ちる苦痛に、意識が遠のくようだった。


すべてが終わったことを……


自身の破滅が差し迫ったことを感じた彼女に、恐れと恐怖が


暗雲が押し寄せるように襲いかかってきた。


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