隠された真実と影
就善堂の温かい温もりを後にし、建物の門を出た。
門を出るとすぐに、キム尚宮が静かに頭を下げた。彼女の顔には相変わらず、胸いっぱいの感激と安堵がこもっていた。
視線をもう少し向けると、尚膳が見えた。
「医官は便殿に来るよう言ったか?」
私の問いに、尚膳は素早く答えた。
「はい、殿下。内官を遣わし、すぐに便殿へ向かわせました。」
彼の報告を聞きながら、私は黙々と便殿へと向かった。
一歩一歩進むにつれて、就善堂で感じたけだるい幸福感の代わりに、冷たく研ぎ澄まされた現実の重さが肩をのしかかった。心臓が荒い太鼓の音のように鳴り響いた。
淑儀のお腹に宿った大切な命は、単に喜びだけをもたらすわけではなかった。それは宮廷全体を揺るがす巨大な嵐の前兆でもあった。
便殿の中は、昼間の明るい気が消え、深まりゆく夕方の影が長く垂れ込めていた。窓の外では、赤い夕焼けが最後の残光を放っていたが、部屋の中の空気はひんやりと重く沈んでいた。
机の上には相変わらず、山のように積まれた上訴文の山があり、その隣には、就善堂で脈診を終えた医官が頭を下げたまま立っていた。彼の顔には、張り詰めた緊張の色が歴然としていた。
上訴文を無関心に見つめていた私は、医官に視線を向けた。彼の小さな震えが目に入った。
「淑儀様の懐妊の事実を…誰にも口外するなと仰るのですか?」
驚いたように戸惑った医官の声が飛び出した。
就善堂で見た、
慈愛に満ちた王の姿はどこへ行ったのか、
彼の顔は一瞬で土気色に変わり、身を縮こまらせた。
「そなたもミン氏一族の影響力を知らないわけではあるまい。すでに内医院にも手回しをしておることは知っている。もし、どこかで朕が公表する以前に、淑儀の懐妊についての噂が広まれば、その瞬間にそなたを厳罰に処すだろう。」
低く、断固とした声で、一言一言はっきりと話した。
一言一句が深く彼に刻み込まれるように。「厳罰」という言葉に、医官の体が大きく一度震えると、やがて深く頭を下げた。彼は恐怖に怯えた顔で後ずさりして便殿を出て行った。
部屋に再び静寂が訪れた。
冷たい空気が肺の奥深くまで染み渡るようだった。
大切な女と、彼女のお腹に宿る大切な子供。
「わが全てとも言える彼らを守り抜くには、この不穏な芽を根こそぎ引き抜いてしまわねばなるまい。」
ミン・ユジュンと中殿が敷いた毒草が、さらに深く根を張る前に、確実に、そして完全に切り取らなければならなかった。
その時、静かな静寂を破って、屏風の後ろから微かな気配が聞こえた。
「その通りでございます、殿下。
淑儀様の懐妊が確実となった中で、彼らがこの事実を知れば、マダムとお子様の命までも危うくなるでしょう。」
屏風の後ろから姿を現したのは、事前に便殿に呼んでおいたチャン・ヒジェだった。闇の中でも閃く笑みが見えるようだった。彼はすでに全てを知っているというような顔で、一歩一歩ゆっくりと私に近づいてきた。
「ならば、チャン大監は今、朕と淑儀のために何をしているのか?」
私の問いに、チャン大監はむしろ図々しく笑いながら答えた。彼の口角が長く弧を描いた。
「ソン医官に人をつけ、一挙手一投足を監視しております、殿下。
また、南人の臣下たちを動かしておりますので、近いうちに殿下にとって必ず必要な知らせを上げることができましょう。」
ニヤリと笑う彼の笑みは、どこかぞっとするほど、狂った人のようにさえ感じられた。オクジョンと似た顔でそうしていると、いっそう妙に感じられた。
敵に回したら、本当に恐ろしい人間だろうな。
だが、その姿がむしろ満足げに感じられた。闇の中で自分なりの方法で動く彼の存在が、今この瞬間、私に最も必要な道具であることを知っていた。
冷たい便殿の中、チャン・ヒジェの笑みと同じくらい冷たい、初春の夜の空気が肌寒く広がっていった。
たくさんのご関心とご声援をいただき、心より感謝申し上げます。
これからも、より良い物語でお応えしてまいります。