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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第二章 破局の始まり、そして深まる心
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揺れる影




便殿の中は、遅い午後の日差しが斜めに差し込んで、静かだった。


チャン大監が拝謁を終えて出て行った後も、しばらく考えに沈んでいた。


深いため息が、心をさらに乱した。


中殿チュンジョン…中殿か…。


ふと、先日、私と一緒にいたオクジョンを呼び出して、尚宮たちの前で問い詰めていた姿が頭に浮かんだ。


一瞬、頭がくらくらするほどの怒りがこみ上げてきた。


ただの取引で入ってきた女だと思っていた。


西人ソイン出身の名家の娘を中殿に迎えたのは、他の何よりも母上オマママのためだった。


母上がオクジョンを扱う態度が微妙に変わったのを知っていた。


そんな母上の気持ちを知らないふりをするわけにはいかなかったので、オクジョンを中殿に据えることを一時保留にして、選んだ人だった。


彼女が私を見る目がどうであるかを知りながらも、その気持ちを徹底的に無視することが、むしろお互いのためだと思っていた。


つい先ほどまでは、そうだった。


ミン大監は、また何を企んでいるのだろうか……。


私の視線は、自然と御座おんざの上に置かれた、数多くの上訴文の山へと向かった。


そのほとんどが、王室の血筋を継ぐ元子ウォンジャを産むという名分の下、正室王后との合宮ハプクンを強く主張する儒生たちと臣下たちのものだった。


普段なら見向きもしなかっただろうが、今日は違った。


ゆっくりといくつかの上訴文をめくってみた。中殿との合房ハッパンを促す内容と共に、観象監クァンサンガムが提出した合宮日の吉凶キルヒュンを占った日付まで、詳細に記されていた。


その上訴文をしばらくじっと見つめた。


妙なデジャヴが頭の中をよぎった。


もしかして……。


しばらく葛藤したが、やがて私は尚膳サンソンを呼んだ。


「中宮殿に行く。支度をせよ。」


日が傾き、闇が宮廷を覆っていく時間。


ゆっくりと立ち上がり、中宮殿へと向かった。


一歩、二歩、足が離れず、今すぐにでも就善堂へと踵を返したかった。


私も本当に……ひどいものだな。


誰かに向かう道が、これほど重かったことがあったか。


就善堂のキム尚宮には、オクジョンが心配しないように、


いかなる言葉も伝えず、


宮廷で流れるいかなる噂も話すなと、固く言い聞かせておいた。


もしやのことがあるかもしれない子供のためにも、母親の体の状態が大きく影響すると言われているので、念のために言い聞かせた言葉だった。


中宮殿は、私の突然の訪問にざわめいた。


予告のない御駕オガの行幸に、尚宮と女官たちは混乱の極みに達しながら私を迎えた。


私が中宮殿の正殿に入ると、鋭く研ぎ澄まされていた中殿の心が、一瞬止まるのを私は感じることができた。


彼女は、私の視線がごくわずか、以前に彼女を見ていた眼差しよりも和らいでいることに気づいたようだった。その小さな変化が、中殿にとっては妙な希望として映っているようだった。


「殿下、どうしてこんなに突然…。」


中殿の問いにも、私はただ柔らかな微笑みを浮かべるだけだった。唇に浮かんだ笑みの下に、私の本当の胸の内を隠した。


合宮日ハプクンイルが決まったと聞いたので、少しばかり安否を尋ねに寄ったのだ。」


私の言葉が終わる前に、彼女の顔が桃色に染まった。


うっすらと気づいていた。


彼女の心がどこに向かっているのか、


そして何を望んでいるのかを。


ただ、彼女の姿を見てもオクジョンのことばかりが胸をいっぱいに満たし、


むしろ申し訳なく感じられた。


そうしてしばらく彼女を見つめた後、何気ないように、そして慎重に言葉を続けた。


府院君プウォングン大監は、最近いかがなさっておられるか?」


ときめきと期待に満ちていた中殿の顔に、明るい笑みが咲いた。


彼女は高揚した気持ちを必死に隠して答えた。


「最近、殿下と王室の繁栄のために推進しておられたことがうまくいっていると、


ご心配なさらないでと申され、王室の安寧と殿下を大変案じておられました。」


その言葉に一瞬ためらったが、


やがてそっと表情を消し、満面の笑みを浮かべた。


「府院君大監に、感謝すると伝えてくれ。」


中殿は私の姿に、はにかむように微笑んだ。


依然として疑いの影が彼女の心の一角に留まっているようだったが、


私の優しい態度は、その影を覆い隠すのに十分だったようだった。


そんな中殿の姿をじっと見つめていた私は、


再び少し敏感な話題を切り出した。


「最近、宮廷内で広まっている不穏な噂を聞いたか?」


その言葉に、中殿の表情がはっきりと固まった。


しかし、すぐに何も知らないかのように首を横に振って答えた。


「わたくしは何も聞いておりませぬ。」


その微妙なニュアンスを、すぐに察した。


何も話していないのに、


『何も聞いていない』か……。


心の中で小さな失笑が漏れた。


ほんの少し苦々しい感情がこみ上げてきたが、


ただ笑う以外に方法はなかった。


「四日後が合宮日ハプクンイルだそうだ。その日にまた来よう。」


その言葉を残して、私は背を向けて出て行った。


扉の外に出る間、彼女の表情を観察した。


中殿の顔には、ときめきと共に説明のつかない


恐怖が共存しているのが感じられた。


何を恐れているのだろうか?


便殿へと歩いていく道で、私はふと空を見上げた。


チャン大監の言葉に対する疑いが、今や確信に変わる瞬間だった。


ミン氏、


やはり噂の出所はそなただったのだな……。


そしてそなたが流した、その下品な噂に、


オクジョンではなく、ミン大監が引っかかったようだな。


心証は確実だった。


あとは物証を掴むだけだった。


とても小ぎれいで正しいように見える名家の女性。


外見はそうだったが、


その内面がどうであるかは誰も知らないことだった。


そして残念ながら、私の心に彼女が入る隙はなかった。


いかなる理由でも、一ミリの場所も許されなかった。


すでにオクジョンに囚われた心は、わずかな隙さえ与えなかった。


私も本当に……悪い男だな……。


しばらく躊躇したが、私はすぐに就善堂へと足を向けた。


そこが私が休める、唯一の安息の地だからだ。

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