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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第二章 破局の始まり、そして深まる心
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そなたを決して離さない



日が昇り、東の空に太陽が顔を出すと、就善堂は穏やかな光に満たされた。


寝台から身を起こすと、すぐにキム尚宮と女官たちが忙しく動き回った。顔を洗い、髪をきちんと梳かす間も、彼女たちの関心は私の体の状態一つ一つに注がれていた。朝食は、どうしてこんなに小ぎれいで栄養豊かに整えてくれるのだろう。


膳の足が折れそうだよ、キム尚宮…。


「マダム、このようにバランスよくお召し上がりにならねばなりません。」


キム尚宮の眼差しは、まるで私がご飯粒一つでも残すまいかと監視しているようだった。


無理やりご飯を平らげると、何とも言えない倦怠感で喉元まで息苦しさがこみ上げてきた。


「キム尚宮、少し外の空気を吸いたいんだけど……。」


私の言葉に、キム尚宮と女官たちの表情が一斉に固まった。


キム尚宮が慎重な顔で言った。


「マダム、より一層お気をつけにならねばなりません。


宮廷内は空気が冷たいので……お部屋にいらっしゃるのがよろしいかと存じます。」


「そ…そうです。淑儀様……まだ冬なので肌寒うございます。」


ソ女官の相槌まで……。


彼女たちの断固とした反応に、深くため息をついた。一日中部屋にいると、体がうずうずした。せいぜい書物を眺めるのが精いっぱいだった。


何冊読んだだろうか。目がかすんで、頭がぼんやりしてきた頃、再び女官たちが入ってきて夕食を並べた。またご飯だった。


「マダム、こうしてお召し上がりにならねば、お元気になれません。」


私は……元気に満ち溢れているよ、キム尚宮……。


まだ消化も終わってないみたいだし。


今度はチョン女官が隣で優しく話しかけてきた。


「よく噛んで全て召し上がらねばなりません、マダム。特別に栄養価の高い食材を選びましたから!」


ウンヨン……お前までどうしてこうなんだ……。


いや、元気どころか豚になっちゃうよ。


心配そうに見つめるチョン女官の目を見ると、


「食べない」という言葉が口から出なかった。


そうして無理やりスプーンを手に取った。ご飯を噛んでいるのか砂を噛んでいるのか分からないほど、口の中がザラザラした。


夜が更けると、息苦しさは極限に達した。窓を大きく開け放ちたかったが、ナリが冷たい風が入るといけないと、雨戸すら開けさせてくれなかった。


寝台でゴロゴロしながら、キム尚宮に慎重に話しかけた。


「キム尚宮、どうやら夜風でも浴びに、少し散歩でも……。」


私の言葉が終わる前に、キム尚宮はもちろん、


周りにいた女官たちの視線が同時に私に突き刺さった。


「なりません、マダム」という言葉が、その眼差しにそのまま込められていた。


しばらくそうして格闘して疲れ果てた頃、


扉が静かに開き、見慣れたシルエットが入ってきた。


「オクジョン。」


殿下だった。


彼の顔には相変わらず、私に対する切ない思いが満ちていた。私を抱きしめる彼の腕の中は、いつものように温かかった。


切ない気持ちに、思わず礼を尽くす前に言葉が飛び出した。


「殿下、ご一緒に外の空気を吸いたいです。」


私の言葉に、戸惑ったようにキム尚宮を見上げる殿下。


もう、キム尚宮……ウインクするのやめてよ……私も見てるんだから。


「オクジョン、まだ外の風はとても冷たいぞ。


今日は一日の出来事を話しながら、一緒に茶を飲むのはどうだ?」


一日の出来事なんて……。


一日中部屋の隅に閉じこもっていたのに、話す出来事なんてどこにあるの!


彼の優しい言葉にも、もうこれ以上我慢できなかった。抑えつけられていた苛立ちが爆発しそうだった。


「殿下!このままでは豚になってしまいます!


一日中部屋に閉じ込められて、病気になりそうでございます!」


思わず声が大きくなり、


粛宗の目が少し見開かれ、戸惑いの表情を見せた。


彼の腕の中から抜け出し、その手を振り払って扉に向かって歩き出した。


「マダム!どこ……どちらへ行かれるのですか!?」


キム尚宮の切羽詰まった叫び声が後に続いた。


「知らない!ついてこないで、キム尚宮!」


粛宗は呆然と座って、扉に向かって歩いていく彼女を見つめた。


いつもと違う彼女の姿にしばらく戸惑ったようだったが、キム尚宮を見上げた。


「あの……懐妊すると性格が変わるものなのか、キム尚宮?」


粛宗の声には、当惑が歴然としていた。


キム尚宮は困ったように頭を下げて言った。


「おそらく……一日中お部屋にいらっしゃって、とてもお疲れのようでございます、殿下。」


その言葉に、粛宗の顔はさらに複雑になった。


扉を蹴って出て行ったオクジョンを思い出し、粛宗は思わず慌てて彼女の後を追って飛び出した。


「オクジョン!待……少し待ってくれ!」


歴代の王たちの中で最も権威があり、


正室王后の嫡男であり、


誰にも崩されることのなかった主上殿下が


あのようにドタドタと走り出ていく姿だなんて。


キム尚宮はその光景を眺めながら、認識の不協和音に襲われたかのように


ズキズキする頭を押さえて首を横に振った。


就善堂の庭には、相変わらず厳しい風が吹いていたが、


私の心の熱気は、その冷たさを感じる暇もなかった。


思わず爆発してしまった苛立ちに、殿下は戸惑っているようだった。


本当にどうかしてる。私が散歩に出られなかったのが、殿下のせいじゃないのに。


最近、政務で苦労していた彼の顔を思い出すと、


今の私の駄々が、些細なことにしか思えなかった。


こんなつもりじゃなかったのに……。


殿下が私に失望したらどうしよう……?


なんとなく目頭が赤くなり、今にも涙が流れそうだった。


その時だった。


背後から思いもよらない温かい温もりが、突然私を抱きしめた。


見慣れた体臭。


いつも一緒にいた慣れ親しんだ感触に、


彼が殿下だとすぐに分かった。


走って出てきたのか、荒い息を吐く彼の姿に、こらえていた涙がどっとあふれた。


私の悲しいすすり泣きに戸惑った殿下が、私を振り返らせた。


「とても寂しかったのか。すまない。そなたの気持ちを察してやれなかった。」


その温かい言葉に、安堵と共に申し訳ない気持ちまで湧いてきた。


何だ、この感情は私の感情じゃないみたいな気分は。


彼は私の頬に手を置き、顔を上げた。目が合った。彼の目は、相変わらず私を愛おしそうに見つめていた。


彼の眼差しに安堵感が波のように押し寄せ、胸を満たした。


「申し訳ございません、殿下……。」


すぐに掴まれた手を離し、涙を拭こうとしたが、


殿下の手が私を離さなかった。


そうしてじっと私を見つめると、


チュッと目にキスをした。


思いもよらない彼の突然の行動に、私はウサギのように目を丸くして殿下を見つめた。


「泣くのは寝床だけでにせよ。いくらでも受け止めてやるから。」


とぼけた彼の言葉に、私は思わずクスクスと笑いがこぼれた。


殿下もまた、ようやく安心したという表情で微笑みながら続けた。


「心配が先に立って、そなたをちゃんと見てやれず、すまない。これからは私がもっと細やかに気を配ろう。」


慎重に頭を撫でる彼の手に、ただただ温かさが感じられた。


肌を刺すような冷たい風でさえ、彼の腕の中では暖かく感じられた。


彼は私の手を取り、就善堂の中へ再び入っていった。


温かい温もりが漂う部屋に座ると、眠気が襲ってきた。


本当に妊娠したのかもしれないな……。


いつもとは違う、見慣れない体の変化を、私が先に感じていた。


殿下は相変わらず温かい手で私のお腹を撫でながら言った。


「キム尚宮、淑儀の体を温められるように、熱いユズ茶を一杯持ってきなさい。」


ただ……ただ完璧すぎる……この人。


そばにいるだけで、こんなに幸せ……。


存在自体が致命的な人だ……。


優しく穏やかな彼の手に触れられながら横になっていると、


心の一角に不安な感情が黒い雲のようにジワジワと湧き上がってきた。


じゃあ、私は今どこまで来たんだろう?


これからどうなるんだろう?


私を優しく見つめる彼の眼差しには、微妙な感情がよぎっていた。


殿下は静かに私を抱きしめた。


私の下腹部に触れた彼の手から、温かい温もりが伝わってきた。


私たち二人の間には、ただときめきと胸いっぱいの感情だけが静かに交わされるだけだった。


夜は更け、就善堂は静かだったが、


宮廷内外の空気は微妙にざわめいていた。


内医院から広まったという私の不妊説の噂が、


すでに野火のように広がっていることを、漠然と察することができた。


私に会って帰っていった兄の最後の眼差しが、気になっていた。


「何をそんなに考えているのだ?」


複雑な思いに、殿下が私を見ていることを一瞬忘れていた。


「あ…いいえ、殿下。」


しばらく私を優しく見つめていた彼が、何かを思い出したように


私を慎重に起こした。


そして、ゴソゴソと何かを取り出し、私に渡した。


「これは……何でございますか、殿下?」


きれいに折られた手紙だった。


殿下はただ微笑みながら私を見つめていた。


開けてみろ、ということかな……?


慎重に開けてみた手紙には、


丁寧に書かれた跡が歴然とした文字が書かれていた。


李昀イ・ユン


呆然と紙を見つめている私を見て、


殿下が言葉を続けた。


「私とそなたの子の名前だ。」


一瞬、何かに打たれたように頭がぼんやりした。


彼の目が、全てを物語っていた。


あ……この人は本気なんだな。


心から私を愛して、子供ができたことを喜んでくれているんだな。


一瞬、妙にこみ上げてくる感情に、


思わず涙がポロリと落ちた。


「一日中、仕事が手につかなかった。


悩んで、また悩んだ。そなたに似た可愛い子を、何と呼んでやればいいだろうかと。」


「殿下……。」


「そなたの笑顔に似て、明るく輝く太陽のような子になるようにという気持ちを込めてつけた。」


ああ……。


本当にこの人、何なんだろう。


一体、何がこんなに愛おしいの?


波のように押し寄せる胸いっぱいの感情に、流れる涙が止まらなかった。


「わがオクジョンは涙もろくなったな。」


流れる涙を拭ってくれる手つきさえ、


愛おしい人。


もう、ただ愛するしかない。


私は彼の手をぎゅっと握った。


押し寄せる感情に、心境が複雑に絡み合った。


いつかはこの人に捨てられると考えると、


心臓が引きちぎられるような気分だった。


「殿下、いつか……いつかです。


わたくしをお追いになるときは、少しだけ痛みが少ないようにお追いになると、お約束くださいませ。」


津波のように押し寄せる気持ちを抑えきれず、


とうとう口に出してしまった。


予期せぬ言葉に、殿下の瞳孔が微かに震えた。


そして、しばらく何も言わなかった彼が、


突然私を引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。


「そなたが女官だった夜、私がそなたを呼び出したのを覚えているか。


私はそなたに記憶が戻るよりも、今のそなたをより求めていると話した。


もう一度言っておこう。


そなたが誰であろうと関係ない。


今ここにいるそなたを愛している。」


あまりにも重みのある彼の言葉に、私は彼の腰の帯をしっかりと掴んだ。


その温かい体温が私に全て届くまで、


彼の腕の中から離れることができなかった。


どんな困難が待ち受けていようとも、私は、


そなたを決して離さない、殿下。


熱い夜はゆっくりと更けていった。


冷たい空気が就善堂を包み込んでいたが、


むしろその冷気が彼の腕の温もりを、さらに大切なものにしてくれた。


より強く……より硬く。

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