息が触れるほどの距離
柔らかな陽射しが染み込む朝だった。
大妃様にお目通りし、帰路につく道。
張り詰めていた緊張が、少しずつ溶けていった。
どうせ失うものはない。
しがみつく必要も、恐れる理由もない。
すべてを投げ出した心はむしろ軽やかで、
足取りも穏やかに軽くなった。
急ぎ足で歩いていた、その瞬間。
「オクチョン。」
懐かしくも胸ときめく声が、風に乗って聞こえてきた。
相変わらず素敵な声だった。
すぐ近くで、笠を少し傾けたまま、静かに私を見つめていた。
慌てて礼を尽くした。
「殿下、いかがなさいましたか…」
粛宗は優しく微笑んだ。
「少しの間、私と同行してくれるか。」
息が喉に詰まった。
両手を反射的に握りしめた。
湿った風がかすめるように、服の裾を揺らした。
彼はじっと微笑んだ。
「そなたと宮廷の外へ出てみたいのだ。」
突然の命に、
居所に戻って女官服に着替え、
粛宗の案内で馬に乗った。
手綱が動いた瞬間、
宮廷の丹青がゆっくりと遠ざかっていった。
ここの風は、なぜかより温かく感じられた。
荘厳な宮門を出ると、
世界は全く異なる光をまとっていた。
宮殿の抑制された線とは違い、
市場は生きていた。
土埃が陽射しにきらめき、
でこぼこな屋根が、つつましやかに傾いていた。
本能のように、その中を歩いていった。
騒がしい声に惹かれて入った場所。
二頭の雄牛が角を突き合わせていた。
「あれは牛相撲でございますか!?」
声が思わず高くなった。
粛宗は笑いをこらえるように、静かに笑った。
「オクチョン…」
戸惑った。
慌てて頷いた。
「あ、はい…申し訳ございま…いえ、でも本当に不思議でございます!」
その瞬間、粛宗と目が合った。
顔が熱くなった。
急いで頭を下げた。
「…申し訳ございませぬ、殿下…」
慎重に身だしなみを整えた。
粛宗はかえって優しく微笑んでいた。
「そなたが子供のように楽しそうにしているのを見ると、嬉しい。」
言葉の端々に、温かさが滲み出ていた。
湖のように穏やかな眼差しに、
私はまたしても、震える心臓を落ち着かせた。
賑やかな通りの真ん中、
粛宗は慎重に私の手を握った。
指先から触れた温もり。
心臓の方へ、温かさがゆっくりと染み込んでいった。
恥ずかしさを懸命にこらえ、慎重に手を抜き、先を歩いた。
どれくらい歩いただろうか。
奥まった路地に、小さな露店があった。
淡い白い団子が、木の串に刺さっていた。
本能のように足が止まった。
「美味しそう…」
口から漏れた言葉に、
本能的に粛宗を見た。
彼と目がぴったり合い、顔が火照った。
まるで子供を見るように愛おしい微笑みを浮かべて、私を見つめた。
そして、あっという間に団子を買い、差し出した。
「そなたと歩くこの街は、すべてが特別に感じられる。」
照れくさそうな笑みがこぼれた。
慎重に受け取った団子を一口、軽くかじった。
甘くてもちもちした味が、口いっぱいに広がった。
「わあ…美味しいでございます!」
舌先に絡みつく甘い感触に、思わず口が開いた。
そして、驚いて慌てて口を覆った。
「申し訳ございませぬ…殿下…軽率に…」
彼はにこやかに微笑み、大丈夫だとばかりに首を横に振った。
「構わぬ。」
手ずからハンカチを取り出し、私の口元についた粉を拭いてくれながら言った。
「そなたの笑顔がこれほど輝いているのを見ると、世界をすべて手に入れた気分だ。」
心臓が締め付けられた。
赤く火照った顔を隠そうと、頭を下げた。
粛宗は静かに私を見つめた。
数えきれないほどの人々の中で、
満ち溢れる騒音の中でも、
彼はただ私一人だけを見つめていた。
陽射しにきらめく埃の間。
粛宗は静かに呟いた。
「これほど大切なそなたを…決して離しはしない。」
その言葉は、軽薄ではなかった。
胸の底まで響き渡る重みを宿していた。
騒がしい市場の端、
陽射しも、時間も、世界も、
一瞬、息を潜めたようだった。
お互いに向かって、静かに、ゆっくりと近づいていく距離。
そして、
何も言わず、ただ深く、お互いを胸に刻み込んだ。아침의 빛이 부드럽게 비치고 있었다.