灯りの下、お前の瞳に似た夜
宮廷の外は、まるでお祭り騒ぎだった。
正月の満月を控えた市中は、まばゆい真昼の日差しの中で、活気にあふれかえっていた。まるで巨大な生命体が息づいているかのように、あちこちから様々な音、匂い、色とりどりの景色が絶え間なくあふれ出していた。
騒がしい人々の笑い声、草履を引きずる音、屋台の食べ物から立ち上る香ばしくピリッとした匂い、色とりどりの品物を売る商人たちの力強い叫び声まで。
宮廷内では想像すらできなかった、生のままの生き生きとした活気が五感を突き刺し、全身を包み込んだ。
「こっちへおいで!貴重な薬草を煮出したサンファタンだよ!一杯飲めば全身に力が湧いてくるぞ!」
「熱々のホットクはいかが!焼きたての餅だよ!」
商人たちの威勢のいい叫び声に、目が丸くなる。ありとあらゆるガラクタから珍しい品物まで積み上げられた露店と、初めて見る奇妙な食べ物たち。
本当にタイムマシンに乗って来た気分だ。これって完全にレトロフェスティバルじゃない?
前回、殿下と一緒に出た時とは全く違う雰囲気に、まるで珍しい遊園地に来た子供のようにキョロキョロと見回した。殿下はそんな私を「可愛い」とでも言うように見つめ、笑みを隠せないでいた。
変装をしているにもかかわらず、彼の威厳は隠しきれていない。整った道袍の下から見える肩のラインと、微笑みを浮かべた目元が、市中の賑わいの中に自然と溶け込み、まるで一枚の絵のようだった。彼は、私を失わないようにと、私の手をぎゅっと握ったまま、雲のような人波の中を優しくかき分けて進んでいった。
「殿下、あれをご覧くださいませ!」
道の片隅で行われている綱渡りの芸に、私は魅了されたように足を止めた。高い綱の上を、空を横切るかのような危なっかしい動きに、人々の感嘆と歓声が上がり、私も思わず「すごい!」と声を上げた。
殿下も興味深そうに私の隣にぴったりと寄り添い、肩を並べて一緒に見物した。私の耳元に、彼の温かい吐息が触れるのが感じられた。
「面白いだろう?」
「はい!本当に不思議でございます!あんなに高い綱の上を、どうしてあんなに自由に歩けるのでしょう…!」
騒がしい喧騒の中で、私たちはまるで普通の恋人のように囁き合った。彼の声には、胸が高鳴るようなときめきと悪戯な気持ちが混ざっていた。
その時だった。
遠くから、プンムルノリの鉦の音がけたたましく鳴り響いて近づいてきた。鉦、小鉦、太鼓の音が乱れ打ち、耳をつんざくほどやかましく響いた。突然の音に人々が一斉に振り返り、後ろからどっと押し寄せてきた人波に、私の体がよろめいた。
「オクチョン!」
殿下が素早く私の腰を抱き寄せ、自分の胸に引き寄せた。
ドクン、と彼の硬い胸に抱きしめられた瞬間、突然の吐き気を感じた。人混みの息苦しさと騒々しい音が、一気に押し寄せて頭に響くようだった。先ほど就善堂で感じためまいと似ていたが、特に胃がムカムカとひっくり返るような不快感が強かった。
殿下の胸に顔をうずめ、目を閉じてから再び開けると、吐き気はすぐに消えた。
「大丈夫か?」
殿下の心配そうな声に、私は頷いた。
「大丈夫でございます、殿下。少しバランスを崩しただけでございます。」
無理に笑顔を作ったが、微妙な不快感はなかなか消えなかった。
しばらく賑やかな人混みから離れ、市中をぶらぶらと歩いた。
彼と過ごす時間は、次第に私に染み込んでいき、胸の高鳴りと幸福感に浸り、時間の経つのも忘れて笑い合っているうちに、いつの間にか日差しは弱まり、空には夕焼けが赤く広がり始めていた。
次第に闇が降りてくると、市中のあちこちに吊るされた提灯が、一つずつ明るく灯された。赤、黄色、青の提灯が夜空を彩り、昼間とはまた違う、うっとりするような光景を演出した。
「本当に美しいだろう?この煌めく光は、全てそなたに似ているな。」
殿下の声が低く響いた。提灯が放つ温かい光が、彼の顔を照らしていた。
普段は冷たいことで知られる彼の眼差しは、いつも私の前でだけは、今目の前に広がる提灯のように柔らかく、深みがあった。
彼の視線に倣って、夜に染まった市中を眺めた。無数の提灯が、まるで空の星のように輝いていた。
その時、遠くで人々が何かを書きつけているのが目に入った。大きな木に、それぞれの願いを記した五色の布が、たくさんぶら下がって風に揺れていた。正月の満月に合わせて、民が願いをかけに来ているようだった。
私の視線がそこに留まると、殿下が私の手を引いた。
「行ってみるか?」
彼の言葉に私は少し躊躇したが、すぐに一緒に足を踏み出した。
普通に願い事をしたのって、いつ以来だろう。
遠い昔すぎて、記憶にもないな……。
彼は商人から受け取った小さな五色の布と筆を私に渡した。筆を持った手が、少し震える。どんな願い事をすればいいか、しばらく悩んだ後、小さく、とても小さく文字を刻み込んだ。
永遠に一緒に、今のように
何を意味するのか、正確にわかる短い文章だった。
殿下が私の手から五色の布を受け取った。私の願いを見た彼の顔に、笑みが広がった。彼は何も言わずに、自分の名前と小さな文字を書き込んだ。そして私の手を取り、願いの木に五色の布を結びつけた。風が吹き、五色の布が愛おしげに揺れた。
永遠にそなたのそばに、今のように
私の目は、彼の手に書かれた文字を追った。
そしてふと彼を見つめると、殿下もまた私を見つめていた。
愛おしく、愛に満ちた眼差しで。
あ…これがナリが言っていた、蜜が滴るような眼差しなのね…。
これ以上ないほど、幸せ、そしてただただ幸せだ。
なんとなく、その様子を真似ていたソ女官の姿が思い出されて、笑いがこぼれた。
世界を全て手に入れたかのような胸いっぱいの感情に、
胸が休む間もなくドキドキした。
提灯の光の下、彼の眼差しには私に対する愛おしさと深い気持ちがそのまま込められていた。
彼は静かに私の手を握った。
彼の温かい温もりが染み渡るのを感じると、なぜか体がだるいような疲労感に襲われ、まぶたが重くなるのを感じた。
昼間から続く市中巡りに、殿下との愛おしい瞬間が重なり、体が疲れたせいだろうか。
宮廷へ戻る足取りが、千の重さほどに感じられた。
闇が濃く立ち込めた宮廷の門をくぐり、
殿下と一緒に就善堂へと向かった。
幸せな気持ちと、けだるい疲労感を抱え、
今日はどうか、ただ眠らせてくれることを切に願いながら。