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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第二章 破局の始まり、そして深まる心
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冬の終わり、密かな囁き




一晩中荒れ狂った風は、朝になってもその性質を捨てきれないかのように吹き荒れていた。宮殿内は依然として、肌を刺すような冷気に満ちている。


寒々とした木々の枝は痩せこけた手足のように揺れ、池の畔にはまだ溶けきらない氷の欠片が、日差しを受けて星のように煌めいていた。この朝鮮の冬は、ひどく長く感じられた。


荒れた天気にもかかわらず、殿下はいつものように訪れてきた。いや、訪れるどころか、私の隣にいると心が落ち着いて仕事がはかどると言って、宦官のサンソンに命じ、政務を行う執務室をまるごと移してきたかのように、全ての仕事を就善堂で行っていた。


部屋の中で上奏文を読んでいる殿下の姿が、どれほど違って見えたことか。


働く男性がセクシーに感じるって、こういうことなんだ。


日が経つにつれてさらに素敵になっていく彼の姿に、つい視線が留まってしまう。


私としては嬉しいけど……。


こんなにさらに格好よくなったら、嫉妬する女官が増えるってことよね……。


もともと宮廷内に、私に対する殿下の盲目的な寵愛が風に乗って広まっていたせいで、中宮殿は刃物のような冷気を放ち、就善堂の女官たちを締め付けているらしいし、西人の重臣たちは殿下に対し、王室の後継ぎ問題で口から泡を吹いて騒いでいるという。


後継ぎ……そうね、妊娠……。


ドラマで見ると、妊娠したら嬉しくて仕方ないって感じだったけど……。


そこまで考えが及ぶと、今の私にとってはそれが現実だということが感じられた。今でも時々、私がチャン・オクチョンであることを忘れてしまう。


そんな波のように押し寄せる考えで混乱していたその時、


「そんなに見つめられても、朕に穴は開かないぞ。」


何気ない様子で上奏文だけを見ていた彼が、私の視線に気づいたのか、ぽつりと呟いた。その言葉に、顔がカーッと熱くなる。恥ずかしさでテーブルにもたれかかっていた体を、慌てて起こした。何を言えばいいかわからず、少し戸惑う。


見ていないと思ったのに……。


ニヤリと、悪戯な笑みを浮かべた顔。目が合った。


暖かく深い眼差しが、優しく私を包み込む。


「部屋の中にばかりいたら、息が詰まるな。」


殿下の声は、いつもより低かった。上奏文の山をちらりと見て、ため息のように言葉を続けた。


大晦日テボルムが近いというのに、民がどう過ごしているのか、直接見てみたい。そなたもそうではないか?」


彼の思いがけない言葉に、私はゆっくりと目を閉じ、また開いた。全く予想していなかった展開だった。


「お日柄が悪いと存じます、殿下、どうして……。」


私の答えに、彼は少し不機嫌な顔をしてから、上奏文を横に押しやり、私に近づいて、私の膝を枕にしてゴロンと横になった。あまりに気楽そうな彼の表情を見ていると、思わず笑みがこぼれそうになる。


「そなたと一緒なら、ほんの少しでも体も心も自由になれる気がするのだ。」


何か安堵したような顔と、真心がこもった笑みが、ゆっくりと私の目に映り込む。


彼の心がまるで水の中に沈んでいくように、私の心の中へと静かに沈んでいった。


ったく、人をときめかせることにかけては天才なんだから……。


「大丈夫でございますか、殿下?」


私の心配そうな問いかけに、殿下はにっこりと微笑み、私の手を引き寄せた。


「そなたと宮廷の外に出てから、いつぶりか記憶にもないな。」


何気ないような彼の言葉に、プッと笑いがこぼれた。


初めて殿下と町に出た、あの雨の日の、湿った土の匂いが再び感じられるような気がして、心がキュンと震えた。


その気持ちに抗えず、結局彼の手を握った。


ドキドキする心臓に頬が赤くなると、彼は「可愛い」とでも言うような眼差しで起き上がり、近くに寄ってきた。


チュッと、柔らかい唇が頬に触れた。


「出かける準備をしてくるから、早く支度をしろ。」


慌てて振り返って出ていく彼の姿を見て、私はこっそり笑った。


この間、多くのことがあったせいで、体調が戻っておらず、心身ともに少し沈んでいたのだが、気分転換には良いきっかけになりそうだった。


そういえば……デートじゃない?


そう考えると、何か新しい気持ちが湧き上がってきた。


心と心が通じ合ってから、こうして二人でどこかに出かけるのは初めてだった。


少し後、


手際の良い気の利くキム尚宮が、すぐに落ち着きのある上品な絹の衣装一式と装飾品を持ってきた。


「マダム、お支度をお手伝いいたします。」


彼女の手に持たれた衣装は、素朴ながらも美しい玉糸で織られた、落ち着いた軟玉色のチョゴリと濃い紺色のチマだった。華やかな刺繍や金箔はないが、ほのかに流れる絹の質感だけで、宮廷の衣装に劣らない気品が感じられた。


髪はできるだけシンプルにまとめ、白い玉のかんざし一つで固定した。まるで、いつもドラマで見ていた良家のお嬢様みたいだった。


そうして美しく着付けを終えたキム尚宮は、満足そうな顔で身だしなみを整えてくれると、にっこりと微笑んだ。


「そういえば……ウニョンとナリが最近全然見かけないけど?」


突然の質問に一瞬戸惑った彼女が、何気ない顔で口を開いた。


「中殿様の命で、少し用を足しに行きました、マダム。」


私をどうすることもできないから、私の腹心たちを狙っているのだろうか。この数日、続けて呼び出されるチョン女官とソ女官。日に日にやつれていく顔に、心の片隅が砂のようにざらつき、不快になった。


「マダム、まもなく戻ってまいりますので、ご心配なさらず、行ってきてくださいませ。」


心配そうな私の顔を見て、キム尚宮はにっこりと微笑んでくれた。


そうだ……。きっと上手くやっているはずだ。どうにかして、これ以上私の女官たちを苦しめないように、きちんと手を打っておかないと。


キム尚宮を見て、私も微笑みながら立ち上がろうとしたその時、


突然、頭がくらくらするような感覚に襲われた。


「淑儀マダム!大丈夫でございますか!?」


キム尚宮の声にも、真っ白になった視界は戻らなかった。キム尚宮に体を預けているうちに、すぐに落ち着いた。


立ちくらみかな……。


最近、気を使うことが一気に多すぎて、ろくに眠れず動き回っていたから、体が無理をしたのかもしれない。


「マダム、お医者様をお呼びしましょうか?」


顔が真っ青になったキム尚宮を見て、私は何でもないというように微笑んで見せた。


「まずは殿下がお待ちだから、行ってきてから改めて呼ぶわ。」


キム尚宮は一瞬困った顔で躊躇したが、乱れた着物を整えてくれると、すぐに下がって頭を下げた。


慌てて出た就善堂の庭には、先に着替えた彼が立っていた。


池を眺めている彼の姿が、なぜか見慣れない。王の衣装を脱ぎ捨てた彼の姿は、普段とは違って感じられた。


すらりとした背丈、きちんと整えられた肩のラインから垂れ下がる道袍ドポの裾が、流れるように美しかった。


普段、あまり表情の変化がなく無愛想な彼の顔には、悪戯っぽい少年のような笑みが花開いていた。


隠しきれないオーラまで……。


一目で見て、ただの平凡な両班ヤンバンのお坊ちゃんではないと分かった。


ドラマで見ていた時代劇の雰囲気とは全く違う、この時代の「イケメンのお兄さん」そのものだった。


ただの庶民的な服なのに、まるで宮廷の全ての光を吸い込んでしまったかのように、彼の存在感はさらに鮮明になった。


ゆっくりと彼のそばに歩み寄る。


私の気配に振り返った彼の顔が、一瞬固まったのが分かった。


そして、すぐに彼の口角がそっと上がった。


それから体をかがめ、私の耳元に囁いた。


「下手に外出を誘ってしまったな。就善堂に閉じ込めて、一晩中腕の中に縛り付けておくべきだった。」


彼の予想外の台詞に、頬がカーッと熱くなった。


一体、こんな台詞をどこで覚えてくるのか、見当もつかない。


「あ……まだ昼間ですよ。こんなに明るいのに、どうして……。」


戸惑った私の顔を見て、再び悪戯っぽい笑みを浮かべながら言った。


「だからこそだ。こんなに明るい真昼間に、これほど致命的に美しい女を連れて歩くのは、心配で仕方がないから言っているのだ。」


言葉が終わると同時に、彼の吐息が私の唇を探しに来た。


甘く濡れていく彼の唇に、


くすぐったい気持ちが綿あめのように溶けていくようだった。


彼の言葉通り、私も、もしかしたら、


彼の腕の中で一晩中溶けてしまいたかったのかもしれない。

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