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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第二章 破局の始まり、そして深まる心
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西人の反撃、揺れる王室




夜は、もうとっくに更けていた。


ミン・ユジュン大監の屋敷の奥深く、外部から完全に隔絶されたかのような離れに、微かな灯りが静かに揺れていた。窓の外では、厳しい冬の風が物寂しく吹き荒れ、木々の枝を揺らしている。だが、その室内の熱気は、冷たい夜の空気とは対照的だった。


重い木製の扉が内側に押され、冷え冷えとした気配をまといながら、ミン・ユジュンが入ってくる。


離れの中には、すでに西人ソイン勢力の中核をなす数人の重臣が集まっていた。彼らの顔には、夜遅くまで待たされた疲労よりも、生々しい権力欲と不快感が入り混じって、脂ぎっている。


テーブルの上には冷めきったお茶と茶器が置かれ、その脇には何枚かの上奏文がくしゃくしゃになったまま放置されていた。空気中には、かび臭い匂いと共に、隠しきれない不安と怒りの気配が漂っていた。


ミン・ユジュンが上座に着くと、部屋の沈黙は粉々に砕け散った。最初に口を開いたのは、年配の左議政チャイジョン、ソン・シヨンだった。彼の声には、抑えきれなかった不満が爆発するように、鋭い非難が混じっていた。


「まさか、このまま見過ごされるおつもりですか、大監!疫病を収拾した功績が、なぜ一介の後宮に渡り、南人の地盤を固めることになったのですか!殿下の寵愛は度を超え、あの女狐に魂を奪われたようですから、一国の国母であらせられる中殿様の威厳は地に落ちるばかりです!」


「その通りです、大監!雄鶏が鳴けば家が傾くもの!どうしてこうも王室の規律が乱れたというのですか!」


別の重臣が激怒したように、拳でテーブルを叩いた。声は怒りで震えていたが、その奥には、自分たちの権力が揺らいでいることへの露骨な不安が顔をのぞかせていた。


ミン・ユジュンは、彼らの高ぶった声を黙って聞いていた。固く閉ざされた彼の唇は、一抹の感情も表さなかったが、冷たく光る瞳の中では、深い思索と冷酷な計算が交錯していた。


重臣たちの不満が頂点に達した頃、彼はゆっくりと手を上げた。彼のその仕草一つで、部屋中に響き渡っていた声は、たちまち刀のような静寂に包まれた。


「今は感情的な不満を並べる時ではない。」


低く、だが冷気を帯びた彼の声が、静寂を切り裂いた。ミン・ユジュンは鋭い目で重臣たち一人ひとりを射抜く。彼らの瞳には、一瞬、怯むような色が浮かんだ。


「今、我ら西人の地盤が揺らいでいるのは否定できない事実だ。しかし、このまま座り込むわけにはいかない。朝廷の権力は我らのものだ。その権力を手放すわけにはいかない。」


彼の声には、揺るぎない確信と共に、聞く者の背筋を凍らせるほどの冷気が宿っていた。重臣たちは畏まった姿勢で、彼の次の言葉を待った。


「中殿様の無能さには、私もまた嘆かわしい思いだ。だが、中殿様は我ら西人の最も強力な盾であり、同時に王室の根幹を固める最も重要な存在……。中殿様にとって、最も強力なものは何だろうか?」


彼の視線が、重臣たち一人ひとりを貫く。左議政ソン・シヨンが、慎重に口を開いた。


「もしや……龍種ヨンジョンのことでしょうか?」


「そうだ。」


ミン・ユジュンは、揺るぎない声で答えた。彼の眼光は、猛獣のように光っていた。


「王室の法度と人倫に背いた罪は、決して許されないだろう。だが、中殿様が龍種を宿せば、全ての不利な状況を一気に覆せる。王室の安定のため、国母としての務めを果たしたことになるのだから、誰が異議を唱えられるというのだ?」


彼は、生々しい笑みを浮かべた。闇の中では、彼の表情はさらに不気味に感じられた。


「直ちに観象監クァンサンガムに圧力をかけ、合宮の日取りを決めさせよ。どんな手を使ってでも、中殿様と殿下のご同衾を強行させなければならない。そして、重臣たちは引き続き殿下に後継ぎの問題を上奏し、圧力をかけ続けねばならぬ。王室の安定を大義名分とし、中殿様の地盤を固めなければ、我ら西人も生き残ることはできないのだから。」


ミン・ユジュンの目が冷たく閃いた。その眼差しは、獲物を狙う鷹のように鋭かった。


「疫病収拾で功績を立てたからといって、あの女狐一人で我らの地盤が揺らぐのを、これ以上見てはいられない。王の寵愛を受けているからといって、好き勝手に振る舞わせておくわけにはいかない。」


ミン・ユジュンの手が宙を切り、黒い服を着た彼の配下が姿を現した。


自分の前で深く頭を下げた配下に向かって、生々しい笑みを浮かべ、言葉を続けた。


「あの女狐を再び宮廷の外へ追い出す方法を探せ。密かに、しかし確実に。」


重臣たちの顔にも、冷酷な光が宿った。南人の台頭、チャン淑儀に対する主上チュサンの寵愛は、もはや座視できない問題だった。ミン・ユジュンの言葉は、彼らのバラバラだった不満を一つにまとめ、強力な結束力を与えた。


彼らは、自分たちの権力をより強固にする方法を見つけたとでも言うように、薄い笑みを交わし合った。


夜は更けていたが、離れの中の空気は、さらに熱く燃え上がっていた。自分たちの権力をより強固にしようとする西人勢力の陰謀が、その場所で冷たく、しかし猛烈に芽生え始めていた。


王室を揺るがす生々しい香りの風が吹き始めていた。


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