運命の指先
嵐のような大殿での会議が終わり、宮廷内には以前とは違う、張り詰めた緊張感が漂っていた。その張り詰めた空気は、私のいる就善堂にもひしひしと伝わってくる。
日が経つにつれて、殿下の私への寵愛はますます深まり、私は宮廷内で誰も軽んじることができない存在になっていた。けれど、それと同じくらい、私への嫉妬や不満も大きくなっていく。特に、中宮殿の沈黙から感じる冷たい気配には、息が詰まりそうだった。
どうでもいい。
もはや達観した私は、ただこの状況を静かに見守るだけだった。疫病が完全に終息し、殿下の表情はずいぶんと明るくなった。それだけで私は幸せだったし、どんな状況も乗り越えられるような気がした。
あの夜、雪降る就善堂の庭で交わした温かい抱擁と口づけは、今も鮮明に覚えている。愛する人の腕の中で得る安らぎは、どんな不安も忘れさせるほど甘かった。殿下の、あの危険なほどに優しい温かさは、私の寝所でも続いていた。
偶然にも彼と過ごしたあの夜を思い出していたその時、
「マダム、チャン・ヒジェ様がお見えになりました。」
キム尚宮の声が静寂を破り、就善堂に響いた。
何か見透かされたようで、顔が赤くなる。
「え、こんなに早く?」
「お通しして。」
就善堂の扉が静かに開く。
相変わらずの、魅力的なビジュアルを持つ私の兄、チャン・ヒジェだった。彼の顔には、何かを企んでいるような笑みが浮かんでいた。
何よ、あの笑み…不安になるじゃない。
「お兄様、お越しになりましたか。」
本心を隠して、明るく微笑んで見せた。彼は私の前に来て、キム尚宮を静かに下がらせてから席についた。
「我が淑儀様は、ずいぶんと度胸がお座りになったようですな。」
静かに響く彼の声には、深い満足感が込められていた。彼は私をじっと見つめる。
「ミン大監が激怒しているそうです。マダムが、大妃様を看病した功はもちろん、疫病を収拾した功が想像以上に大きかったようで。そのおかげで南人が再び朝廷に足を踏み入れましたから。マダムの功は、言葉では言い尽くせません。」
「南人…?南人ね。ああ、ドラマで見たような気がする……。じゃあ、私は今どこまで来てしまったんだろう……。」
彼の目には、称賛と同時に、何か奇妙な感情がきらめいた。彼はいつも、私の中に何か違うものを感じているかのように、私を見ていた。私が現代から来たという事実、そしてそれによって発揮される私の「知恵」と「気概」は、彼にとって理解できない異質なものだったのだろう。だが、彼は気にしていないとでも言うように、薄く微笑んだ。
「マダムは常に、私の予想の一歩先を行きますな。時には何を考えているかわからず戸惑うこともありますが、構いません。我らの家門を再興させ、より高い場所へ昇ることができるのなら。」
彼の最後の言葉には、確信が満ちていた。彼は、私が持つ未知の能力を、自分の野望を叶えるための道具と考えているようだった。彼の眼差しにはまだ微妙な異質感が残っていたが、今ではそれさえも私の「特別さ」として受け入れているような表情だった。彼の称賛は私に力を与えてくれたが、同時に、どこか不気味で冷たい空気を残していった。
夜が深まる頃、中宮殿には冷たい静寂が漂っていた。
寒気すら感じる空気の中、中殿のミン氏は身を縮めて座っていた。彼女の目は赤く充血し、顔は惨めなほどだった。
冷たい声が静寂を破り、聞こえてきた。
「なぜ、私をこれほどまでに失望させるのですか!」
その厳しい声の主は、他でもない彼女の叔父、ミン・ユジュンだった。彼の顔は怒りで真っ赤に染まっていた。彼は姪である中殿に、容赦なく叱責を浴びせた。
「民がマダムを指差して非難するのを、どうやって耐えようというのですか!大妃様の病床を顧みず、疫病が蔓延する時に国母の務めを放棄したばかりか、後宮の知恵に押さえつけられるとは!この全てが、マダムの愚かさゆえです!」
ミン・ユジュンの声は、大殿に響き渡るようだった。彼の怒りは嵐のように荒れ狂い、彼女は頭を上げることさえできなかった。ただ、ぼうぜんとした顔で床を見つめている。叔父の厳しい叱責の中で、彼女は自分がどれほど無力で無能な存在なのかを改めて悟った。西人の基盤が揺らぎ、自身の立場が危うくなっているすべての原因が自分にあるという事実が、彼女をさらに惨めにさせた。
「肝に銘じてください、マダム。王室の法度と人倫に背いた罪は、決して許されません。何としてでも、この状況を収めなければなりません!」
中殿は震える声で言った。
「どう…すれば…。」
そんな中殿の姿が情けないとでも思ったのか、彼は舌打ちをした。そして、言葉を続けた。
「このような心構えで、あの時私にチャン氏の入宮を許すと仰ったのですか。」
言葉にできないほどの惨めさと無力感に、彼女は頭を垂れた。恥ずかしくて、もう何も言えなかった。
彼女の反応を見て情けなく首を振ったミン・ユジュンは、口を開いた。
「中殿にとって、最も強力な後ろ盾は後継ぎです。龍種を懐妊しなければなりません。その道以外に道はないことを、心に留めておきなさい。」
冷たい警告を残し、ミン・ユジュンは背を向けた。彼の足取りさえも断固としていた。中宮殿は再び冷ややかな静寂に包まれる。中殿は一人残り、深い羞恥心と絶望感に襲われた。叔父の叱責は、短剣のように飛んできて彼女の心臓を貫くようだった。
「龍種……なんて……。」
初めての婚礼以来、粛宗はただの一度も彼女を訪ねたことがなかった。彼女を女性として見たことも、そう扱ったこともなかったから、「龍種」という言葉は、夢のように遠く感じられた。惨めさと悲しみが波のように押し寄せた。冷たい中宮殿の風が、しおれた彼女の心をひっかいて通り過ぎていく。
「何かが間違っている……。私が……本当にそこまで無能だったのだろう까……。」
彼女の心は激しく揺れ動いた。無力さと無能さが、自分を蝕んでいるようだった。このままではいけないという切迫した危機感が、彼女の眼差しを暗く染めていった。
中宮殿の固く閉ざされた扉に背を向けて立ち去ったミン・ユジュンの顔には、冷たい怒りが宿っていた。無能な姪への失望感、そして台頭してきた南人とチャン淑儀に対する根深い怒りと敵意が、彼の心の中で煮えたぎっていた。彼は荒い息を吐きながら、宮廷の暗い道を急いだ。
冷たく冷えゆく夜の空気の中、彼の足取りは一片の迷いもなく、西人の重臣たちが集まっている密かな場所へ向かっていた。漆黒の空は彼の心を代弁するように月さえも光を失わせ、彼の冷たい影は果てしない闇の中へと溶けていった。