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朝鮮に落ちた女子大生、致命的な王に囚われる  作者: エモい姉さん
第一章 ― 朝鮮に落ちた女子大生、ユン・イナ ―
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微笑みの裏に潜むもの



張玉貞チャン・オクチョン

その名を聞くだけで、手が震えた。


軽率で、生意気な女。

妖しい眼差しで男たちを惑わし、

ほんの少しの恥じらいすら知らない、

そんな女だった。

あえて私の息子を惑わせた、九尾狐のような女。

宮廷を乱したあの振る舞い、

高慢に首を立て、人々を見下したあの傲慢さ。

そのすべてを覚えていた。


しかし、

最近、少しずつ空気が変わり始めた。

あの女が変わったのだ。

尚宮サングンたちが上げる報告に、少しずつ変化が見られるようになったのは、つい最近のことだ。


「チャン女官が…言葉を慎んでいるそうです。」

「常に『身の程知らずで…』と、自ら身を慎み、気を付けております。」

「女官たちとも仲良くしており、最近は笑うことも多いと申しております。」


笑うだと?

あの張玉貞が?

今すぐにでも来て頬を平手打ちでもしそうな、あの眼差しの女が、

笑うだと?


息が詰まるほどの静寂の中で、茶碗を置く音がより大きく響く。

冷たく広がった波紋が指先をかすめた。


いっそ、

あの時、頭を怪我した時に、

起き上がれなかったら。

ただそのまま消え去ってくれたなら。


しかし、

世間はそう甘くはなかった。


今日、

あの女を私の居所に呼んだ。

何がどうなったのか、この目で直接確認しなければ信じられそうになかった。

果たして尻尾をいくつ隠しているのやら。


尚宮たちは騙せても、私を騙せるだろうか。

お前が変わったとしても、その下品な根性までは変わらないだろう。


そうやって骨の髄まで噛み砕いてやろうと思って呼び寄せたその子は、

…尻尾一つしかない子犬になっていた。

いつも気高かった勢いは影も形もなく、

水に濡れた小さな動物のように、

静かに瞬きながら立っていた。

きちんと座った彼女は、

以前のような刃物のような気迫もなかった。

怯えた獲物のように、

肩を少しすくめて、

私を見上げていた。


大妃テビ様…ご機嫌いかがでございますか。」


(私は今、何を見ているんだ。)


声は柔らかく、落ち着いていた。

刀のように鋭かった気迫の代わりに、

冷たい空気に温かく溶け込むような声だった。

魂を抜かれたように、しばらく見つめていた。

非の打ちどころのない姿勢、整った身だしなみ、

そして、

ほのかに広がる微笑み。

何も知らないという顔に、軽く浮かぶ、か弱い微笑み。


同じ女である私でさえ、

その美しさに、一瞬言葉を失いそうになった。


「近頃、見慣れないな。いつも高慢に私を踏みにじろうとしていたのに。」


彼女は恐れ多いとばかりに頭を下げて言った。


「私が至らず…

大妃様のお心をお煩わせしてしまい、申し訳ございません。」


……

その瞬間、私は悟った。


この女、

完全に別人になっていた。

以前ならとっくに、あの眼差しで私を食い殺すように見つめ、言い返していただろう。

とても堂々と、ためらいもなく。


しかし、今は。

毒気のひとつもない、従順な姿勢。

人を向かうと刀になっていたその目が、

今はかすかに震えていた。

手応えがない。

息を潜めて縮こまり、

素直に私を見上げるこの姿。

むしろ今、私のほうがこの子をいじめている形になってしまった。


これが本当に、あの張玉貞だというのか。

それとも、何か企んでいるのだろうか。


そうやって、特に何も起こらないまま、

あの女を帰らせてからも、私はしばらくぼんやりと戸口だけを見つめていた。


衝撃でぼんやりしていた意識を立て直し、

ミン大監が送ってきた書状を受け取った。

長い間空席だった中宮チュングンの座に関する話だった。

私もまた、これ以上王妃の座を空けておくべきではないという考えが先立った。


ミン令嬢は家柄も高く、人柄も穏やかで…

おそばに置いても不足はないかと。」


慎重にそばに立っていた尚宮が口を開いた。


「しかし、殿下は…

相変わらずチャン女官を念頭に置いていらっしゃいませんか。」


息が詰まった。

静かに目を伏せた。

閔令嬢。

正しい血筋、穏やかな性格──

王妃に立てるには、この上なく完璧な子だった。


閔令嬢を王妃にしなければならない。

それこそが朝鮮の秩序であり、名分である。


そう信じていた。

しかし、

主上チュサンは、すでにあの女に夢中になっている。

眼差しが違っていた。

手つきが、息遣いが、

すべて張玉貞、ただ一人に留まっていた。

茶碗を置き、静かに息を呑んだ。

指先が、ほんの少し震えた。

あの子は何も言わずに退出し、

私は戸口から漂っていく香りを、長い間心の中でかみしめた。

あの日以来、「張玉貞」という名前を、再び軽々しく呼ぶことはできなくなった。

お読みいただきありがとうございます


連載開始を記念して、初回から10話までを一挙公開いたしました!

楽しんでいただけたでしょうか?


これから本格的に物語が始まりますが、

毎週月曜日から金曜日の夜22時以降に、毎日1話ずつ更新予定です。

(週末はお休みをいただきます。)


まだまだ未熟な点も多いですが、

옥정(オクジョン)と粛宗、そしてヒジェの物語に、

どうか優しいお気持ちで見守っていただけると嬉しいです。


皆さんのコメントや応援が、何よりも大きな励みになります!

いつもありがとうございます

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