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『武蔵転生〜異世界は強者だらけでワクワクするので百戦無敗を所望する〜』  作者: 二天堂 昔
第一章『武蔵と最高の仲間たち』
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第五話〜前編〜『影の予兆と、五行庵に届く使者』


風がざわめいた。

竹林が微かに鳴き、葉擦れの音が静かに流れる。


ここは、拠点「五行庵」。

竹林の奥に佇む、静謐で神聖な和風木造の屋敷。


その一角。

縁側に座し、木刀を膝に置いた宮本武蔵は、ゆるやかに目を開いた。


「……風が、ざわついておるな」


その声音は低く、しかし確かに緊張を孕んでいた。

目を細め、黒曜石のような瞳を空に向ける。

そこに見えぬ“何か”を読み取るかのように。


「“気”が、騒いでおる……この静けさの底に、何者かの蠢きあり」


彼の腰にある二本の木刀から、まるで本物の斬気が漂い始めていた。



五行庵・食堂。


「へぇーっくしょん!!」


カエデがくしゃみをひとつ。

卓上には朝餉の香ばしい湯気とともに、皆の姿がある。


「まーた竹林で寝たのかカエデ? 風邪引くぞ」

烈火が呆れたように湯呑を置いた。


「ち、違うってば!なんか……空気がピリッとしててさ、眠れなかっただけ!」


「それは……わたくしも感じましたわ」

ナギサが静かに箸を置く。


「空気が、凛と張り詰めて……まるで、大いなる力が、息をひそめているような……」


創冶も、珍しく真面目な面持ちで呟いた。


「俺の鍛冶場の火も……一瞬、跳ねたんだ。妙な違和感だった」


それを受けて、天道空雷がゆっくりと手帳を閉じた。


「全員、何かしらの“予兆”を感じているようだな。

これは偶然ではない。地脈か、魔力の収束か。あるいは――」


ガタン。


戸が勢いよく開く。


現れたのは、薄汚れた旅装の少年。

顔には傷、服には風と土の匂い。

だが、眼差しは鋭く、明確な“使命”を帯びていた。


「……この中に、“剣豪・宮本武蔵どの”は居られるか……!!」


武蔵がすっと立ち上がる。

その瞬間、空気が切り裂かれたかのように一変した。


「我が名は宮本武蔵。……聞こう、その使者たる理由を」


少年は膝をつき、懐から取り出す。

それは、一通の“和紙の文”と、黒き御札。


「この札に記されたるは、封雷神の地より届く“招喚の印”……

……“神喚の鏡”を揺らした者が現れしと……!」


空雷が一歩前に出た。


「神喚の鏡が反応したというのか?

それは“封雷神の片鱗”が目覚めたことを意味する」


「そう。かつて“空を裂いた雷の神”が遺したもの――

それがいま、現代の地脈に干渉を始めておる。

そして、その神の器に選ばれし“何か”が、迷宮の最奥で目を覚ましつつある!」


その言葉に、一同の背筋がぞくりと粟立つ。


烈火が拳を握りしめた。


「ようやく来たか……面白ェ、雷の神だろうがなんだろうが、全部焼き尽くしてやる!」


創冶も低く頷いた。


「未完成の刀があるなら、今ここで、完成させる時だな……!」


ナギサは静かに、武蔵の側へ寄り添った。


「わたくし……あなたとなら、どんな嵐の中でも、歩いていけますわ。武蔵さま」


カエデもにやりと笑い、背中の包丁型双剣をカチンと鳴らす。


「んじゃ、張り切って行こか。今日の戦利品は、雷神焼きにしてやるからね!」


空雷は、全員を見渡したのち、告げる。


「陣形【雷鳥陣・改式】を構築する。

敵は“神の器”と呼ばれる存在……軽挙は禁物だ」


武蔵が一歩、進み出た。


その眼差しは夜明けより鋭く、

その気配は大地より重く、静かなる“剣”そのものだった。


「――所望するぞ。

神なる器の中に、剣の魂が宿るのならば……我が木刀にて、見極めてみせよう」



後編へ続くーー

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