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狂獣の華  作者: 鳳隼人
第一章結界修復作戦
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第9話 ナイト隊の戦い

巨大な夜の樹木の森。

目の前にある何十メートルと言う高さを誇る樹木。

先は決して見えない暗夜。

たった数メートル先すら夜に覆われ一度踏み込んだら戻って来れるとはとても思えないほど引きずり込まれるような夜に包まれた樹海林。


「これが、暗夜の樹海林」


隼人は魅入っていた。

余りにも非現実的で、まるでお伽話の世界に迷い込んだような光景に目が奪われていた。


「油断するな!」

「そこ!下を向かず前を向け!」

「案ずるな、この程度で死ぬことはない!」


前線に響く隊員たちの声。

騎士隊の先輩たちが新人どもに活を入れているのだ。

隼人たちが前線に着く頃には既に戦闘の準備は整っており、みな今か今かと待ち構えている。

速いな。

白雪隊長が指示をだしてまだ5分と経っていない。

相当な訓練を積んでいると感じさせられるほど前線は整っていた。

しかし、思っていたより人数が少ないな。

一応後ろにもナイト隊の隊員がいるが明らかに前線より人が多い。

これから襲撃があると言うのにこれでいいのか?


「随分と余裕があるなって思っただろ」


突然後ろから肩を組まれ話掛けられた。

俺に肩を組んできたのは白雪隊長より少し年が上の三十路ぐらいの男でいかにも適当そうな雰囲気を纏っており、ナイト隊には似つかないという印象だ。


「こいつはな、言わば新人たちへの洗礼みたいなもんだ」

「洗礼?」

「おうよ。こういう感じで楽々対処できる襲撃に対処させて少しずつ現場に慣らしていくのよ。ほら、見てみ」


男は冬華が率いる隊を指さす。


「副隊長が率いる隊は半分以上が新人だ。見てみろよ。大半の奴らが深呼吸したり、下向いたり身体震わせんてんだろ?」


男の言う通り、冬華の率いる隊の隊員の大半が戦闘慣れしているような感じではない。


「どんだけ訓練積んでも、本番じゃ足がすくむなんて当たり前よ。ま、新人どもからしたらいじめと思われるだろうが、これも大隊長なりの優しなのよ」


男は笑ってそう言った。


「あ、井川副部隊長!ここにいたんですか!」


後方から一人の女性隊員が駆け寄ってきた。

それに男は苦虫を噛んだような表情を浮かべた。


「ありゃ〜見つかっちましたか」

「な〜にが見つかっちゃったですよ!貴方第一部隊の副隊長でしょう!こんな所で油売ってないで早く準備して下さい!」


女性隊員は井川と呼ばれた男の耳を引っ張って前線に引きずって行った。


「い、痛いって杏ちゃん。じゃ、じゃあな雨宮君!」


井川は最後に隼人の名前を呼んで引きずられて行って。


「なんだったんだ?」

「あの人は井川龍二さん。ナイト隊第一部隊の副隊長よ」


すっと後ろから真白が解説してくれた。


「あの人が?ん?じゃあ冬華副隊長は?」

「冬華ちゃんはこのナイト隊全体の副隊長で井川さんはその中の第一部隊の副隊長。同じ副隊長でも役職的には冬華ちゃんの方が上なの。まぁ殆ど一緒なんだけどね」

「じゃあその第一部隊の隊長は冬華副隊長よりも偉いのか?」

「というかその第一部隊長が白雪大隊長だもん」

「第一部隊は各隊の主力ですからその大隊の隊長が兼任してるんです」


この団色々と兼任が多いな。

まぁそれほど人手不足と言うことなんだろう。


『三人とも、呑気に喋っている場合ではありませんよ。狂獣、来ます』


美濃部からの知らせを聞いて気を引き締める。

ナイト隊にも同じ知らせが届いたのか空気がピリピリしてきた。

そしてドンドンと地震のような揺れが来た。


「総員構えーー!!」

『おおーーー!!』


白雪大隊長の号令と共に第一部隊の隊員たちが大楯を構える。

そしてついに巨大な木々の間から大量の狼が向かってきた。

狼たちは雄叫びをあげながら第一部隊とぶつかり合う。


「踏ん張れーー!」

『うぉおおーーー!!』


狼たちの突撃も怯むことなく一匹も倒さず前線を守り抜く第一部隊。


「行くわよ第二部隊、私たちナイト隊の力を見せつけてやるのよ!」

『おおーー!!!』


次に冬華率いる第二部隊が第一部隊が堰き止めている狼の群れに攻め込む。

先陣を切るのは冬華だ。


「ワフゥ!?」

「ワゥ!?」

「あなたたちが最初よ!」


冬華の両手には2本の鞭が握られており、冬華はその2本の鞭で狼二匹の腹部を縛り付ける。


「せーのっ!」


そのまま鞭の先端に縛り付けた狼たちを他の狼たちに向かって叩きつけた。

冬華が叩きつけられた狼とその周辺にいた狼と縛り付けられた二匹は小さな石ころを残して消えた。

そして冬華は息つく暇なくまた狼を二匹捕まえた。


「はぁーー!!」


そして冬華はまた狼を叩きつける。


「まるで手榴弾だな」


後ろで見ていた隼人はその光景にそっとそうこぼした。

冬華が叩きつける度にその周囲の狂獣が吹っ飛んで行く。

その光景は放り投げこまれた手榴弾が爆発したようだった。


「俺たちも副隊長に続けーー!!」

『おおーーー!!』


冬華の戦いぶりに魅せられ、第二部隊の隊員が次々と狼どもに襲い掛かる。


「はぁ、や、やった!」

「危ない!」

「え?」


新人隊員の一人が一匹、狼を倒せたことで気を抜いた瞬間別の狼がその隊員に襲い掛かろうと飛びっかかった。

それに別の隊員が気が付いて声を出す。

襲われそうな新人隊員は後ろを振り向くと狼が自分の目の前までいた。


「うわーーー!?」


咄嗟のことに新人隊員はその場に固まってしまった。

しかしその瞬間襲い掛かろうとしていた狼の腹に何かが絡みつきそのまま弾丸のように狼の群れに叩きつけられた。


「しっかりしなさい!戦いはまだ終わってないのよ!喜ぶのは目の前の敵を倒してからよ!」

「「はっはい!」」


狂獣を次々と薙ぎ倒しながら新人隊員たちの気を引き締める。

そして30分後。

狼の群れを撃退した。


「私たちの勝利だ!」


白雪大隊長の勝鬨と共にナイト隊全体から地響きのような声が響いた。

これがナイト隊、狂獣との戦いか。


「どう、これが狂獣と戦う、開拓者の戦いよ」


真白が隣で勝鬨をあげるナイト隊を見ながらそう聞いてきた。


「圧巻…だな…」


隼人はこぼすように答えた。

だがその視線の先には一人の女の子が映っていた。

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