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狂獣の華  作者: 鳳隼人
第一章結界修復作戦
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第8話 拠点へ

白雪隊長から命令を受けてから3日後、正式にナイト隊から要請が来て、今俺たちは団の車に乗って現地に向かっていた。


「それじゃあ移動してる間に作戦の概要をおさらいするわね。美春は運転しながら聞いてちょうだい」

「「了解」」

「それじゃあ美濃部君お願い」

『分かりました』


耳元のデバイスから美濃部が今回の作戦の概要を説明しだす。


『本作戦はナイト隊主体の防衛作戦です。先月の夜の影狼の襲撃によって破壊された結界の修復の為防衛です』


手元のデバイスからホログラム映像で周辺の地図が映し出される。


『本作戦は破損した結界から半径5キロ圏内における夜の影狼の眷族から修復担当のウィザード隊の防衛が主な任務です。戦力は大体1000人強です』


今回の任務に携わる人数を聞いて不安に思った隼人が質問をする。


「なあずっと気になっていたんだが領獣…夜の影狼本体が来るとは考えないのか?」


隼人はずっと気になっていたことを美濃部に聞く。


『それはご安心ください。夜の影狼が自分の領域の中心に移動したのは確認済みです』

「そうは言うが実際あいつはその結界を破って都市に入ってきた。しかも今回は結界の外での作戦だ。あいつが来ないという保証はないんじゃないか?」


そう、隼人が不安視しているのはその点だ。

都市の中に来ることが仮に稀だとしても今回戦うのは向こうのテリトリー。

普通ならあの狼が来ることを想定して然るべきだと考えるのが自然だ。

そんな隼人の心配に真白が答える。


「隼人君大丈夫よ。狂獣は基本的に自分の領域からは出ないの。狂獣にはそれぞれ体の中にコアとなる花が存在するの」

「コアとなる花?」

「通称狂獣の花。言うなればエネルギータンク、人で言うところの心臓みたいなものね」


狂獣の花とは領獣の存在を構成するコア、心臓の様に致命傷を負う代えの効かない最重要器官だ。


「研究によればその狂獣の花の影響で領獣は自分の領域から一定時間出ることはできないらしいの。考えてもみれば、あの夜の影狼がどうしてあのまま自分の領域に帰っていったのか。あのまま暴れまわった地域を自分の領域にできたはず。でもそれをしなかった。つまりそれなりの制約があると考えているのがうちの研究部の予想ってわけ?」


言われてみればそうかもしれない。

確かにあの狼がなぜ結界を破ってまで都市を襲ったのか理由がまだ判明していない。

もちろんただの余興という考えたくもないことも考えられるがなにかしら理由があったと考えるのが普通。

そしてなんらかの制限によりそれをが出来なかった可能性もある。


「美濃部、今まで夜の影狼が領域を出たことはあるか?」

『いえ、本部のデータを調べてはみましたが存在が確認してからは夜の影狼が領域を出たという記録は見つかっていません』


となると、あの狼が花の制限をしらなかった可能性が高いな。

そうなると真白の説明にも納得がいく。


「なるほど、真白の説明にも納得がいった。説明を割って悪いな」

『いえ、気になることはできるだけ解決しておくのがいいです。気になることがあるのでしたら気にせずお聞きください』

「美濃部君、今回の任務の期間は?」

『およそ2週間を予定しております』

「結界の修復にそんなにかかるのか?」

「普通は違うんだけどね」

『今回は領獣本体が都市に侵入したという特殊ケースでして結界の破損域もダメージも桁違いが故に長期の修復となりました』

「みなさん、お話のところすみませんがもうそろそろで着きそうなのでそろそろ終わらせてくれませんか?」


運転している美春が作戦の説明の催促を求めてきた。


「そうね。ちょっと話がそれたわね。美濃部君悪いんだけどサクサクをお願い」

『分かりました。改めまして、我々第46小隊は結界の修復作戦の為、ナイト隊の指揮下に入り、目的は半径5キロ圏内における狂獣の討伐、および掃討。期間は2週間前後を予定。また我々の主な任務は真白隊長の護衛です。美春、そして隼人さん。よろしくお願いします』

「「了解」」

『そして真白隊長はいつも通りお願いします』

「了解」


こうして作戦の確認を終え、それから少し車を走らせると穴の開いた結界が見えてきた。

破損した結界の周辺にはナイト隊の隊員たちが警備を行っており、ウィザード隊の隊員が少しずつだが結界の修復を行っていた。

検問所の前で美春が車を止める。


「第46小隊、白雪騎士隊長の命により今日より作戦へ参加いたします」


美春が検問所にいた騎士隊の隊員にそう告げる。


「お話は聞いております。どうぞ」


騎士隊員の許可を取り、俺たちは結界の外へと出た。

結界の外はまさに真夜中。

都市の時間は13時なのに結界の外は完全に深夜だ。


「これが夜の影狼の領域……」


自然とそう言葉がこぼれた。


「隼人さんは初めてですよね都市の外に出るのは」

「ああ」


そもそも一般市民が都市の外に出るなんてできる訳がない。

さっきみたいに都市の外に出れるところは基本的に騎士隊の隊員が見張っている。

それに都市の外に出るなんてのは自殺行為そのものだ。

都市の外に出たいなんて考えるのはとんだもの好きぐらいだろう。


「本来は結界同士の間にはわずかにですが安全地帯となるどの領獣の領域でもない部分が存在するんですが今回の場合その安全地帯が夜の影狼に飲み込まれたことによって安全地帯が消滅してまして。こうして直接領獣の領域に入ったという訳です」

「二人ともそんな呑気に話す暇はないわよ。もうここは戦場。いつ狂獣が襲ってきてもおかしくなんだからね」


いつもと違い真白がぴしっとした声でそう言う。


「す、すみません」

「悪い」


そして俺たちは今回の作戦の拠点に到着し、車から降りる。

すると騎士隊の隊員の一人がこっちに駆け足できた。


「第46小隊ですね。お待ちしておりました。大隊長と副隊長がお待ちです。ご案内致します」


俺たちは騎士隊員に案内されるがまま一つのテントに入る。


「来たわね」


中に入ると白雪隊長ともう一人女の子がいた。

その容姿は真白よりも白雪隊長と似ていた。

だが雰囲気は全然違く、なんだか腕を組んでピリピリと厳しそうな雰囲気を纏っている。


「貴方達の参戦、心より歓迎するわ。知ってると思うけど。改めて紹介するわね。私は本作戦の最高責任者であり、騎士大隊の隊長を務めている白雪泉華です。そして彼女は」

「副隊長の白雪冬華(しらゆきとうか)よ」


白雪隊長の言葉に続いて、腕を組んだ美少女が棘のある口調で言った。

白雪って……てことはやっぱり。


「冬華は私の妹よ」

「妹……」

「勘違いする前に言っとくけど私は御姉様の贔屓でこの地位にいるわけじゃないの。ちゃんと実力でこの地位を勝ち取ったのよ」


冬華はこっち、というか真白を見ながら釘を刺すように言った。

また随分と嫌われてるみたいだな。

もしかして前に何かあったのか?

そう思って真白を見てみると、真白は特に気にした様子もなく冬華の話を聞いてる。

この様子だと冬華副隊長が一方的に突っかかってる感じだな。


「冬華の言うことは正しいわ。例え妹であっても多くの命を預かってる立場として贔屓は決してしません」


白雪隊長はしっかりと自分の意見を述べた。

それに真白は答える。


「安心してください。最初から疑ってなどいません。冬華副隊長が優秀なのは十分承知しています」


真白がそういうならそうなのかもしれないが当の本人はなんだか納得いっている感じじゃないぞ?


「そうですか。それでは今よりあなた方第46小隊に任務を与えます」


俺たちは静かに白雪隊長の声に耳を傾ける。


「貴方達には万が一に備えての我々の援護をお願いしたいのです。やり方はいつも通りでお願いします。もちろん我々ナイト隊もそんなことが起きないように全力を尽くすので」

「分かりました」


真白が代表して返事をする。

それに白雪隊長が頷く。


「それでは今から貴方達を持ち場に案内いたします」

「白雪隊長!」


突然ナイト隊の隊員が大慌てでテントの中に入ってきた。


「どうしたの?」

「ただいま偵察に出ていたハンター隊の隊員より狂獣の群れがこちらに向かっていると報告が!」


突然の襲撃の報告に白雪隊長は慌てることなく冷静に命令をだしていく。


「数は」

「およそ200と」

「冬華、150人、その内新人100人で隊を編成しなさい」

「はい!」


指示を受けた冬華はすぐにテントを出て自分の隊を編成しに行った。


「偵察に行った隊員の安否は」

「全員無事です」

「分かったわ。貴方は龍二に私の隊を規模に合わせて編成するように伝令を」

「はい!」


襲来を知らせにきた隊員は白雪隊長の指示を受けて冬華同様にテントを駆け足で出ていった。


「白雪隊長、私たちは何をすればよろしいでしょうか?」


すかさず真白も自分たちへの指示を仰ぐ。


「今回は貴方達は待機でお願いします。この程度、我々だけで対処は容易です」


白雪隊長は俺たちに待機を命じた。

そして彼女はそっと俺を見て言った。


「雨宮君。貴方は都市から出たのは初めてでしたね」

「え、あ、は、はい……」


突然名前を呼ばれて慌てて答える。


「これを機に見ておきなさい。これが人と獣、生きるための殺し合いを」


そう言って白雪隊長もまたテントを出て行った。

一度しっかりと自分の目に刻めってことか。


「隼人君、私たちも行きましょう」

「そうですよ。置いてかれちゃいますよ」

「あ、ああ」

「二人とも、万が一の時の為にいつでもマキナを取り出せる準備はしとくのよ」

「はい!」

「分かった」


俺たちもテントを出て白雪隊長がいる前線へと向かった。

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