第8話
僕は「そうだ。鉄道も考えなきゃ」と気づき、道路計画に加えて鉄道の路線をどうすればいいのか考えていた。
(実用的に使うため効率の良い線路にするのか、それとも観光を考えて、風景を巡るような線路にするのか。うーん。どうしよう)
そんなことを思案していると、セーラが僕を呼びにきた。
「ジンちゃん。ちょっと来てくれる? 相談があるんだけど」
セーラのあとをついていくと、いつものメンバーが部屋にいた。
「出ねぇ――あっ。タンちゃん? 今からエルフの森の名前をみんなで決めるんだけど。ちょっと来てくれ。何? 大好きなアニメをリアルタイムで見たい? チーズケーキあげるから来いよ」
「ふぉふぉふぉ。待たせたな」
(チーズケーキも好きなんだね。初めて食べたのはいつなの?)
こうして公爵様を除く5人で決めることになった。初めに口火を切ったのはロン。
「神のお告げによると『タンヤオドラドラ』がいいってさ」
(ゴロはいいんだけど――どうだろう)
セーラは悪魔の名前が入ると同胞たちから猛反発があるだろうから、却下と。
「じゃあ、『パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ』なんてどうだ?」
(ピカソの本名だね)
これも却下。
「長い? なら省略して『パブロ・ルイス・イ・ピカソ』」
(それでも長い)
これも却下。3連続。
「あのー。セーラさん。ジン様と私で『ジンシャ』ではどうでしょうか」
(人社か――人文学部社会科学科だな)
「シャルちゃん。それジンちゃんと喧嘩して別れたとき、名前を聞いて辛くなるよ」
とセーラから言われ、シャルの案も却下。
「わらわは次の公国のトップであろうシャルロット・バリアナからシャローの森が良いと思うぞよ」
タンヤオの意見にシャルを除くみんなが賛成。南の森はシャローの森と名付けられた。
「ふぉふぉふぉ。わらわが名付け親。その対価を貰おうか」
「ババアがエクレアあげればいいんじゃね?」
セーラはロンに雷(エクレア)を落とした。ロンは倒れてヒクヒクしている。
(あっ、そうだ)
「セーラ、今鉄道計画を練っているんだけど」
「鉄道?」
「トロッコのレールみたいなのをどう敷こうかと悩んでいるんだ」
「ジンちゃんはどう考えているの?」
「実用的に使うことを考えてこのルートか、観光を考えて大きく蛇行するこのルートか――」
僕は地図を見せてセーラにルートを示す。
「これ、シャローの森の中、通ってるわよね? 個人的には反対」
「そうか。じゃあ、森を通らないようにするか……」
「それと、あたいは自然と調和した方が良いと思ってる」
「そうか、実用ルートは道路でいいのか」
僕はセーラの意見を踏まえて、鉄道のルートを改良することにした。
(機関車だから、人がたくさん通るところは避けた方が良かったのか……)
僕は道路の舗装を煉瓦敷にするのに、どうやったら効率が良いのか考えていると、ロンがノックもせずに部屋に入ってきた。
「おい! ジン!」
「どうしたの?」
「鉄道は観光用ルートにするんだろ?」
「そうだけど――」
「神の野郎が言っていたんだが、遠方から見える建物も観光資源にならないか?」
「えーっと。機関車から見える建物ってこと?」
「そうだ。どでかいホテルとか王城とかだ」
「なるほど」
僕はロンの意見を聞いて、寺院を作ろうとパッと思いついた。イギリスのウェストミンスター寺院やエジプトのデンデラ寺院など、そういうものが作れれば、巡礼に来る人もいて、街が活性化する。
(誰か装飾や設計図を描ける人いないかな)
「ねぇ、ロンさぁ。誰か装飾や設計図を作れる人とか知らない?」
「知らん。あっ! タンちゃんに探してもらえばいいじゃん!」
「それいいかも!」
≪トゥルルルル。お掛けになった番号は現在使われておりません≫
「あの野郎――」
「わらわを探しているのか?」
突然タンヤオが現れて、僕は驚いた。ロンはタンヤオに向かってイラつきながら言う。
「なんで、この番号で繋がらないんだ?」
「ほぅ、昨日モノリスを落としてしまってのぅ。解約したのじゃ」
(スマホじゃなくてモノリスだよね?)
ロンはヴィンチ村に適任者がいるから、連れてこいとタンヤオに言った。
「ふむ。その者の名は何というのじゃ?」
「神が言うには、レオナルドだってさ」
(この世界にもレオナルドダヴィンチがいるのか……)
◆
後日。タンヤオはレオナルドを公爵邸に連れてきた。その数30人。
「なぁ、タンちゃん」
「なんじゃ」
「こいつら全員、レオナルドなのか?」
「そうじゃ、レオナルドを連れてこいと言っておったであろう」
「レオナルドって名前で呼ぶんじゃ、誰を呼んだか、わからないだろうよ」
「なんじゃ、そんなことか。レオナルドAからレオナルドZまで付ければよい」
(タンヤオ。AからZって――残りの4人どうするの?)
この30人のレオナルドは、優秀な人材で、すぐに寺院の青写真を描き、建設工程を作った。
それから1年後には寺院が完成し、寺院の責任者である大司教をロンがやると言ってきたが、言わずもがな。
(だって、修道士でしょ。司祭、司教って段階を踏まないとダメでしょ)
◆
完成してから数日後、僕とシャルは完成した寺院がどのようになっているのかを見にきていた。
「ジンさまぁ~早く中に入りましょう!!」
大きな声で
シャルロットに呼ばれて
僕は微笑みながら寺院の中へと入っていった。
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〈おまけ〉
「あーー! 録画に失敗したのじゃぁ!!」
(大丈夫だよ。ロンのお告げによれば、再放送があるみたいだから)