第7話
公爵邸近辺をアメリカにあるワシントンDCと見立てて、領地にニューヨークの様な大きな商業都市を作る計画を練る為に、僕は今日1日、部屋に籠る予定だ。
お昼頃、小休憩をしていると扉からノックの音が聞こえてきた。
「ジンちゃんいる? いたら開けてくれない?」
セーラにこう言われ、部屋の中に入ってもらう。そして椅子に腰掛けてもらうように声をかけた。
「あたい、これから旅にでる」
「えっ、なんでまた?」
「移住するための森が見つかったでしょ。だから同胞を集める旅をしようと思って」
正直、セーラがいなくなるのは痛すぎる。ロンと違って、僕の計画のキーパーソンだから。でも、貢献者だし彼女の意志を尊重したいと思った。
「そうか。出発は?」
「準備ができ次第かな?」
「なら、今夜送別会をしよう。出発が明日以降でいいなら」
僕は今日の予定を変更し、シャルと共に送別会の準備をし始めた。
「出ねぇ――。あっ、タンちゃん。今夜ババアの送別会があるから、こっちに来て。ん? 明日、上位魔族の昇進試験だから行けない? そんなこと言わずにさぁ。金平糖やるから」
「ふぉふぉふぉ。待たせたな」
(タンヤオ。甘い物好きなんだね)
夜、いつものメンバーに公爵様を加えて送別会が行われた。
「うほん。じゃ、オレが代表して。これより結びとなりますが、みなさま乾杯を――」
(終わるな)
「「「「かんぱーい!」」」」
みんな楽しそうにお酒を飲んでいる。30分くらい経つと公爵様は酔い潰れていて、みんないい感じに酔っぱらってきた。
「タンちゃん、これも美味いぜ」
「ほう、どれどれ。確かに美味い。何という酒じゃ?」
「スピリタスって言うんだ、比重の関係で氷が沈んだままなんだ」
「そうか、もう一杯くれるのじゃ!」
「そうこなくっちゃ。あいよ」
なんだかわからないけどロンが良からぬことを企んでいるのがわかった。
「ジンさま~♡」
突然、シャルが飛びついてきたので、僕は驚いた。
「ちょ、ちょっと」
「こんな抱き枕、ずっと欲しかったの♡」
(抱き枕じゃないんだけどなぁ)
「お嬢、オレのジンに何してるんだ!」
「ロンさん、どうしたんですか?」
「ジンはオレと添い寝するのが心地いいんだ、だから離れろ」
「聖職者が男同士で気持ちいいことしていいんですか? 素敵ですけど、ダメです~」
(ロン。シャルをからかうな。シャルが変な妄想してるだろ)
「セーラ、おつかれ」
「ジンちゃん飲んでる? なんか平気な顔しているけど?」
「明日に影響するから飲んでない」
「そうなの。べろんべろんに酔っぱらっているところ見たかったんだけど」
「ははは、そうだね。しかしまぁドールで会った時にはこんなことになるなんて想像できなかったけど」
「あたいもよ。まさか広大な森が見つかるなんて思ってもみなかった」
「セーラはいつから森に住むの?」
「100年後かな。大陸も回るし、海外にも行くから、たぶんそのくらいかかると思う」
「そうか、じゃあもう会えないね」
「ちゃんとお墓参りするから安心して」
宴も終わり、空が明るくなっていく。別れるとは、こんな思いになるのかと僕は感じた。
「ジンちゃん。じゃあね♪」
「セーラ気を付けてね」
「ババアがいなくなって、せいせいするわ」
(ロン、本当は悲しいんだろ)
それから僕は感傷的な気持ちが抜けなくて、3日間仕事が手につかなかった。そして、ある日のこと。
「ジン!」
「どうしたの?」
「ちょっと来い」
何が起こったのだろうと思いながらロンについていく。すると外には数え切れないほどのエルフがいた。
「やっほー♪ジンちゃん☆」
「セーラどうしたのよ」
「なんかね。シルフの伝達網で大陸にいる同胞達がこっちに向かっていたみたい」
「へっ?」
「これから、みんなと森に行くの。ジンちゃんも来る?」
「ははは、ババア出戻り。最高に馬鹿じゃん」
「みんなぁ、この人が言っていた人。サラマンダーで焼いてね♡」
ロンはエルフの青年達から「リアル鬼ごっこ」みたいに逃げ惑っていた。
――――――――――――――
〈おまけ〉
「ロン。タンヤオって試験落ちたらしいけど、本当なの?」
「あぁ。まったく信じられねぇよ。あいつ試験勉強していなかったんだぜ」
(僕は五天王に入れたことが信じられない)