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第37話 シャロー王国へと

 ブレッサンド王国との国境からネマール帝国帝都までは馬車で2週間の旅。途中、1度野盗に襲われたが、タンヤオがいるので問題ない。野盗達が可哀想だけれども仕方がない。


 シャルはネマール帝国帝都に1度行ったことがあるらしいが、僕は初めていく。近くても遠い場所、どんなところ何だろうと馬車から見る景色を眺めながら思いにふけっていた。


「うーーん、ようやく着いたね」

「そうですね。ジン様」

「うん。僕はシャルと旅ができて良かったよ」

「ジン様、まだ帰ってませんよ」

「ははは、そうだね。でももう少しでシャロー王国だね」


 そんな話をしながら僕達は帝都を歩いていた。


どん!


「わっ」

「シャル大丈夫?」

「大丈夫です」


 よそ見をしていたからか、シャルは少年とぶつかってしまった。少年は立ち去ろうとしたところ、ロンに首根っこを掴まれ宙吊りになる。


「離せ!」

「おう、坊主。人にぶつかったら、まず謝るんだ。それと懐に入れた銀貨を返せ」

(えっ)


「シャル、銀貨は減ってる?」

「ちょっと待ってください――減ってます」

「じゃあ」


 そう、少年はスリだったのだ。周りをみると注目されている。その中には少年少女達数人がこちらを心配そうにして見ている姿があった。


「おう、坊主。いうことを聞けないみたいだな。このお姉さん、魔族なんだ。ミイラにしてやるぞ」

「ふぉふぉふぉ。主、そんなこと朝飯前じゃ!」


 少年の顔は青ざめていく。あの少年達もオロオロし始めた。


「あっ、そうか。ジン、見えているだろ。あいつらも呼んでくれ」

「うーん。僕達が行った方がいいんじゃないかな。ここは目立つし」

「そうだな。坊主、大人しくしとけよ」


 僕達は少年達のもとへ行く。彼らは怯えていた。


「さてと、誰がリーダーだ? こいつにヤレと命令したのがいるだろ」

「ボクらじゃない。アジトにいるよ、だから殺さないで!」


「そうか。他に盗んだヤツいるか? 正直に言わなければ、お前ら全員ミイラにする」

「ふぉふぉふぉ。主、早く命令するのじゃ!」


 手を挙げたのは3人。ロンはそいつらに言った。


「思ったよりいるな、他のメンバーやグループはいるか?」


 少年達はいると答えた。なのでロンはアジトに連れていけと彼らに言った。


 ◆


 彼らは帝都から少し離れたところに僕達を連れてきた。その場所をみてスラム街だと僕は思った。


「おい、お前ら止まれ」


 スラム街の入口では青年が2人いて、僕達を止める。青年は少年達を睨みつけていた。


「おう、オレの仲間にこいつらが喧嘩売ってきたんだ。リーダーはいるか?」

「誰だてめ――」


 ロンは青年をぶん殴る。


「誰に口を聞いているんだ? バカなのか」

「ふぉふぉふぉ。わらわは万能なのじゃ! 賢いのじゃ!」

「タンちゃん。頼むから、ミイラにしないでくれよ」

「ん? そうか。それならば仕方あるまい」

「なぁ、リーダーのところに案内してくれ」


 ロンを恐れ、もう1人の青年が先導する。ボロボロの建物を横目に見ながら、スラム街の中を歩いた。


「おう、今日のノルマは?」


 建物から、ガタイのいい青年が出てきた。その青年にロンは聞く。


「お前がこのガキらのリーダーか?」

「ほう。お前らノルマを果たせなかったんだな。あとで――」


 ロンは青年の懐に入り、顎を突き上げる。青年は倒れ、悶え苦しんでいた。


「ったく、人の話を聞け! なあ、こいつがリーダーか?」


 青年は首を横に振る。ロンが睨んでいたので、彼はすぐに建物の中へ案内した。


「ジン。ここからはタンちゃんと行く。外で待っていてくれ」

「わかった。ロン気を付けて」

「おう。あっ、ライ達はここら辺の掃除をよろしく」


 ライム達は擬態をやめ、辺りを掃除し始めた。僕は周囲を観察し、こんなところで生活しているのかと驚く。貧富の差という現実がそこにあることを僕は肌身に感じたのだった。

(何とかならないもんなのか)


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ここです。申し訳ございません。頭、客を止められませんでした」

「ああ’’。何してるんだ、お前ら」


 オレは頭と呼ばれたヤツを見る。大したことない、ただ調子に乗っているガキだった。


「てめえがリーダーか?」

「誰だお前?」

「オレの仲間がやられたんだ。ちょっと話がしたくてな」

「おい、お前らやっちまえ」

「はぁ、タンちゃん。お願い、あいつだけヤッて」

「ふぉふぉふぉ」


 タンヤオはリーダーに触れるとリーダーはミイラになっていく。オレを攻撃しようしたヤツらも含め、みんなビビッていた。


「おう、誰かこのバカを連れていけ、嫌ならこいつみたいにしてやる。それとすぐにみんな集めろ」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 しばらく外で待っているとロンが戻ってきた。その後ろには青年達とミイラになってしまった人がいた。


「ジン。外の様子は?」

「特に何もない。大丈夫だったよ」

「そうか」


 僕に外の様子を聞いた後、ロンは青年達に言った。


「お前ら、急いで集めろよ。やっちまうぞ。それと、どこに集めるのか教えてくれ」


 青年達は蜘蛛の子を散らすように走っていく。5分もしないうちに、スリのグループが集まった。


「おい。お前ら、オレの話をちゃんと聞けよ。じゃなければ――」


 そう言い、ロンはミイラになってしまった人を見せつける。


「でだ。こいつがリーダーだって聞いたけど、他に大人が絡んでいるだろ?」


 青年達の話ではこのリーダーはゴンドラというグループに所属しているそうだ。ゴンドラはスリの他に強盗、売春、誘拐などの犯罪を犯し、暴力で帝都周りを仕切っている集団だそうだ。


「ジン。覚えているか? オレとタンちゃんが娼館に突撃してライを連れてかえってきたことを」

「覚えているよ。新婚旅行でいきなり事件に遭ったからね」

「あんときの元締めがゴンドラってヤツだろ。しくじったよ、あんときにやっちまえばよかった」

「まあ、過去は変わらないから、今はそのことを活かさないとね」

(歴史もそうだ。人間が歩んできた道。失敗もあるだろうけれど、そこから良い方向にもっていくために、どうするのがいいのか。賢者はそこから学ぶんだ)


「ロン。僕はハナマユ姉妹のときみたいに、この青年達が働ける環境をつくろうと思う」

「どうすんだよ?」

「王城にロール宰相がいるはず。僕は宰相と民の為になにができるか考えてみるよ」

「わかった。じゃあオレはゴンドラを潰しにいく」

「ロン。気をつけて」

「ああ。タンちゃんがいるけど、向こうは手練れだと思うから充分に気をつける」

「そうだ。どこで合流する?」

「城でいい。いや、城がいいだろ。ジン達にとって安全な場所だろう」

「わかった」


 ロンの姿が消えるまで見送る。僕はシャルやセーラ、テミル。そしてライム達と一緒に王城へと向かった。


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