第28話 Ⅵ.望んでいない珍道中 シャラム帝国
朝、シャルと食事をしているとロンが悲痛な顔をしながら、僕のところに来た。
「やっちまった。オレの判断ミスでエル坊が重症になっちまった」
ロンは地面を見、唇を噛んで僕にそう言った。
「ロン。何があったの?」
「ああ、孤児院が襲われて、シスターと裏手に行けと指示したんだが、裏手にも賊がいてな。ナイフでやられた」
「そうか……。今、彼は?」
「孤児院にいる。シスターが面倒をみているよ。それでジン、相談なんだが」
「何?」
「今回のことにエール商会が絡んでいるらしく、オレはエール商会を懲らしめにいきたいんだ」
「エール商会って?」
「詳しいことはわからんが、ビラリって町にあるらしい」
「そうか。でも待って、よく調べてからじゃないと市民生活に影響があるかもしれないし、そのエール商会が黒幕とは限らないから」
「そうだよな。でもなぁ。シスターの言っていることは信憑性が高いと思うが」
「まあ、どちらにせよビラリって町に行ってみないと、わからないね」
「ふーぅ」
「シャル。孤児院の視察は保留でいい?」
「ジン様がそう判断されるのであれば、それに従います」
「ありがとうね。シャル」
そんなことをロン達と話していると、向こうからセーラがやってきた。
「ねぇ、何があったの? 孤児院がどうとかこうとかって。みんな落ち込んだように見えるわよ」
「オレのミスでエル坊が重症になっちまった」
「はぁ? どいうこと?」
「孤児院が襲われ、裏手でエル坊がナイフで刺された」
「えっ、何してんのよ!! アンタさぁ、孤児院にタンヤオを連れていったの?」
「連れていった。正面突破してくる賊を返り討ちにしてくれた」
ロンの歯切れの悪い説明にセーラは呆れていた。
「ジンちゃん。彼とこの旅に同行しないかって誘ったわよね。今回彼が孤児院に行くこと知ってたの?」
「知っていたよ。早朝、ロンから話があった」
「何で止めなかったのよ! ロンとタンヤオに任せておけば良かったのに」
僕に対してセーラがイラついて話をしているところに、ロンが割り込んできた。
「ババア、それはオレが無理矢理連れていった。ジンのせいじゃない。それにな、彼はシスターの代わりに子供達の盾になったんだよ。彼がいなければ、たぶん子供らは死んでいたよ」
「もう!! 彼のことも大事でしょ! アンタが盾になればよかった」
「そうだな。オレが盾になればよかった」
僕はセーラにお願いをした。
「セーラ。この事件の首謀者を探しに行かないか。ビラリにいるって」
「そいつを探して何になるの? 彼の怪我が治るわけでもあるまいし」
「いや、孤児院がまた襲われる。たぶん同じことが繰り返されるよ」
「ふぅ。わかったわ。あたいも協力するわ」
「ありがとうセーラ」
朝食を食べ終え、出発の準備をする。次に行くところはビラリだ。そこでエール商会について調べていこうと思う。
◆
馬車に乗りビラリに向かう。馬車で移動すること半日、目的地ビラリに着いた。
「ロン。これからどうするの?」
「ジンには悪いが、王様特権を使って正面から調査しないか?」
「わかった。ロンは付き人って感じでいい?」
「そんな感じでいい」
僕達はホテルに荷物を置き、ホテルの支配人にエール商会の場所を教えてもらった。支配人いわく独占的に流通を仕切っているエール商会の評判は悪いらしい。そのエール商会に僕達は行くわけだ。
(独占禁止法とかの法律がこの国には無いのか……)
◆
支配人に教えてもらった場所に着く。そこにはいかにもって感じの豪華な建物があり、タンヤオ以外はエール商会の中に入る。
「主、わらわも行きたいのじゃ!」
「タンちゃん。いい子にして外で待っていてくれないか? あとで最中買ってやるから」
「ふぉふぉふぉ。わらわはいい子じゃ! 1箱買ってくるのじゃ!!」
「ああ"、てめえナメてんのか?」
「卑怯だ! あんな形で店を潰すなんて、あんまりだ!」
「俺らは客を考えて安く売っているんだ。それができないお前の店が悪いんだろ?」
「いつも、周りを潰してから値上げするじゃないか? 地元のことを考えてない!」
「しらん。商売で儲けることは悪いのか? お前の店も儲けて、そのおかげで生活できていたんだろ?」
「おう、お取込み中悪いな。ちと、国王が視察したいと言って、ここにに来たんだが、アポイントメントは必要だったか?」
「国王?」
「そう。新しくできたシャロー王国の国王様だ」
「お、お見苦しいところをお見せしました。応接間までご案内いたします。おい!! そこのお前、この方々を応接間まで案内しろ」
受付にいた人とは違う従業員が来て、僕達は応接間に通される。
「ロン。良かったの? あの男の子大変そうだったけど」
「あそこで揉めたら、調査がしづらくなる。あの子には悪いが仕方ない」
ロンと話をしていると、人相の悪い男が応接間に入ってきて、僕達を品定めするように見てきた。
「これはこれは国王様。遠路はるばるエール商会までありがとうございます。私、ビラリ支店、支店長のデュアーと申します」
「ロンだ。国王様の側近をしている。王様が国のために、この国の流通がどうなっているのか知りたいって言っていてな。良かったら教えてくれないか?」
「そうですか……申し訳ございません。なにぶん企業秘密なもので、教えることはできせん」
「そうか。時間を取らせてすまなかった」
「いえいえ。もし良ければシャロー王国についてどんな国だか教えていただけますでしょうか?」
「うーん。そっちが教えてくれないからな。ジン国王どうする?」
「うん。ロンの判断に任せるよ」
「そうか。支店長、シャロー王国は観光業が主要産業だ。今のところはそれしか言えないな」
「いえいえ、そうでしたか」
支店長は不敵な笑みを浮かべていた。
「あっ、支店長。最中ある? 1箱欲しいんだけど」
僕達は最中を受け取ったあと、外に出る。外にはタンヤオの他にさっきの子がいた。
「主、それが言っていた最中なのか?」
「そうだぞ。ジン、これ持っていてくれ。トイレを使いたいって騙して、今からタンちゃんと内部を見てくる」
「わかった」
「じゃな。ババア、ジンとお嬢の護衛よろしくな」
そう言って、ロンとタンヤオを引き連れてエール商会の中へと再び入っていった。
(僕がやれることは……)
「ねぇ、君。この町でエール商会がどんなことをしているか教えてくれない?」
男の子に事情を聴くと、エール商会は様々なものを安く売り、まずは商売敵を潰すそうだ。その後、前に売っていた価格より極端に価格をあげ、売り上げが悪くなると撤退。町では以前からあった店が潰れているので、生活用品が手に入らなくなる。そう、市民生活への影響力が大きいのだ。
(利益を求めるのが商売だから仕方ないけれど、市民に役に立つ店としてあって欲しいなぁ)
僕達はホテルに戻り、ロンとタンヤオの帰りを待つことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おう、すまない。こいつがお花を摘みたいって言っていてな」
「ん? 主、ここに花は無いのじゃ。どこにあるのじゃ?」
「タンちゃん。トイレにあるんだ」
「ふぉふぉふぉ。そうなのか。主、行こうではないか」
(こいつバカだったな。お花を摘みたいってトイレに行くのだということを知らなかったのか……。しまったオレとしたことが)
「そこを真っ直ぐ行って、突き当りの右側にあるよ」
「サンキュー」
従業員に言われた場所に向かうふりをして立入禁止の部屋を探した。すぐに立入禁止の文字を見つけ、その部屋の中に入る。
「主、立入禁止とは何ぞや?」
「入っちゃいけ――いや、秘密の場所だ」
「ふぉふぉふぉ。面白い、お菓子が美味くなる秘密がわかるのか」
オレはあたりをつけ、次々と資料を見ていく。そして、
「そういうことか」
「ん? どうしたのじゃ?」
「やっぱり国境沿いの土地を買い占めている。それと――」
「ん?」
「神のお告げ通り、エル坊はキーパーソンだった」




