第20話
僕達は王城に行き、今度は門番に通され中に入ることができた。そして王子が準備するまでの間、2階にある客室で待つことになった。
「しかしまぁ、オレにお礼言うんだろ? こんなに待たせやがって、ホントしょうもないな」
「まあそう言わずにさ、この国の王子なんだから」
「お前、国王だろ。権力振りかざせよ。オレを待たせるとは何事だ!! って」
「そうかもしれないけどさ」
ロンとそんなやり取りをしていると、部屋の扉が開き、王子が姿を現した。ミネルバも一緒だ。
「君がロンか?」
「そうだぜ、王子」
「この度はミネルバを救ってくれてありがとう」
「まあな。大したことじゃないが、この国は奴隷制度を認めているんだろ? そんな制度がなきゃ、そこの姫さんも攫われなかっただろうよ。なっ、王子、さ、ん」
「……そうかもしれん」
「かもしれんじゃなくて、そうなんだよ。いったい何人不幸にすればいいんだ? オレは大っ嫌いだね。奴隷制度を黙認しているお前も、お前の親父もな」
「無礼な!!」
王子はロンを殴りかかるが、ミネルバが「やめて!」と王子を止めていた。
「で、お礼の言葉はもらったが、帰っていいのか?」
「いや、父上――国王が会ってみたいと言っている」
「おい、ジン。どうする?」
「うーん。僕としてはシャロー王国と友好関係を結びたいから会ってみたいかな」
「へいへい、わかりましたよ。なぁ、王子どこに行けばいいんだ?」
「国王とは謁見の間で会える」
「いつ行けばいい?」
「少し待ってくれ、国王に確認してくる」
「1時間とか待つなら帰るぞ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ようやく完成したな」
「そうだな、これで国王からたくさん報奨金がもらえる」
「ははは、そうだな」
「ちょっと、そこの人間。わらわは迷子になってしまったのじゃが、ロンとかジン王? とか、どこにいるか知らぬか?」
「誰だ、お前?」
「わらわか? わらわはタンヤオだ。で、どこにいるか知らぬか?」
「お前、知っているか?」
「あっ、王子の客じゃないか?」
「なるほど。それなら2階の客室にたぶんいるぞ」
「うー。それじゃ、わらわはわからん! お主ら、連れていけ!!」
「バカ! こっちに来るな!!」
ダン! (コロコロ)
「あー、なんてことだ。これじゃどれが不老長寿の薬かわからない」
「はぁ。だから、同型のポーションの瓶にいれるなって言ったろ!」
「ん? どうしたのじゃ?」
「どうもこうも、お前のせいで失敗作と完成品の瓶が混ざっちまった。どうすんだよ、失敗作ヤバい薬なのに」
「そうなのか?」
「あぁ、これじゃ国王のところに持っていけん」
「ほう。じゃあ、わらわが貰ってもいいのじゃな?」
「勝手に持っていけ。それと案内してやる」
「おう、助かるのじゃ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ロン、そういえばタンヤオどこにいったの?」
「甘いものがあるかもって、食堂へ探しにいったぞ」
「そうか。国王との謁見までに間に合えばいいけど」
ロンと暇だから〇×ゲームをしていると、扉が開きタンヤオが現れた。
「主、お土産じゃ」
そう言って、タンヤオは幾つかの瓶をテーブルに乗せた。
「瓶が、1つ、2つ、いっぱいなのじゃ!!」
(3つ以上数えられなくて、いっぱいって言う民族、確かいたな。アフリカ大陸だっけ?)
「タンちゃん。これ何?」
「飲み物なのじゃ」
「そうか。8本あるけど同じものなんか?」
「うー。わからん」
「まあ、いいか。タンちゃん、1本くれ」
「ほい」
「サンキュー」
ロンとタンヤオは、瓶に入っている液体を飲んでいた。するとそこに王子がやってきた。
「国王が準備できた――お前ら何飲んでいるんだ?」
「タンちゃんが見つけたもんだ。美味くなかったぞ」
「――っ!!」
「どうした?」
「その瓶は錬金術師に渡した特注品だ」
「へぇ、だから何?」
(はぁ? 錬金術って水銀とか硫黄とか猛毒を使っているだろ。ヤバいぞロン)
「国王の命で、錬金術師は不老長寿の薬を作っていたんだ」
「ほう」
「動物実験で、失敗作を飲むと必ず死ぬことがわかっている」
「はぁあ? タンちゃん、そうなのか?」
「怪しい人間がいらんと言ったので貰ってきたのじゃ!」
(タンヤオ。ロンが死んだらお前のせいだ)
「まあいいや。どうせいつかは死んで、神と会うわけだし」
(そうだよな。ロンは魂を賭けるくらいなヤツだもんな)
「タンちゃん。面白そうだから、残りの瓶持っていこうぜ」
「ほほう。面白そうなのじゃ」
「じゃあ、オレ2本持っていくな。タンちゃんは4本」
「面倒なのじゃ」
そう言ってタンヤオは1本の瓶を飲み始めた。「甘い!! この瓶美味いのじゃ!」と言って残りの3本も飲み干した。
「……謁見の間に連れていっても」
「あぁ悪い、王子。案内ヨロシク」
ロンは王子の使いの者の後を歩く。僕達はその後に続いた。謁見の間の扉の前に着くと持ち物チェック。なぜか瓶は引っかからずOKだった。
謁見の間に入ると正面に玉座があり、僕達は片膝をついて待った。人の歩く音がしたあと、静寂の中威厳のある声が聞こえた。
「面を上げい」
玉座を見ると、ふてぶてしく傲慢な感じのする中年男性がいた。国王だろう。そしてその両脇には女性がいる、きっと王妃と側室だろう。
「お主か? 王子の婚約者を助け出したのは?」
「はい」
「名はロンで間違いないな」
「はい」
「ジョブは?」
「無職です」
(修道士と言わないって、ホント嫌いなんだね)
「そうか。ん? お主の持っている瓶はなんだ?」
「不老長寿の薬です」
「献上してくれるよな」
「いや、これは――」
「主。そんな美味しい物を王にやるのは、もったいないのじゃ」
タンヤオがロンから瓶を強奪し飲む。先ほどのようにタンヤオには何もおこらない。
「その者たちを、みな拘束せい!!」
王の言葉に護衛の騎士達が動く。僕達はあっという間に捕まり、ロンは瓶を奪われた。
「国王陛下。この瓶はどうなさいましょうか?」
「持ってこい」
「わかりました」
騎士は王のもとに行き、瓶を渡す。
「まったく、余計なことをしおるからに」
そう言い、国王は瓶に入った飲み物をいっきに飲み干した。すると、
「うっ、うっ、な、なん、じゃ、こ……」
国王は悶え苦しみ、周りの騎士達は呆然とする。その隙をみて、僕は騎士を振りほどき、シャルのところへ。
「あっ、不老長寿の薬の失敗作も混ざっていたみたいだぜ。国王、へ、い、か」
ロンの言葉には反応せず、国王は白目をむいて息絶えた。
(ん? ということは――)
「ロン。じゃあ」
「あぁ、当たりを引いたみたいだ」
騒ぎに気がついたのか、王子とミネルバが謁見の間に入ってきた。
「父上!!」
王妃らしき女性が国王を抱きかかえているところに王子は行く。王妃は王子をみて首を横に振った。
「貴様!! まさか飲ませたのか!!」
「おいおい、言い掛かりはよしてくれ。オレは瓶を強奪され、勝手に王様が飲んだんだぜ」
「母上、本当ですか?」
「ええ」
王子の目からは涙がこぼれる。そんな王子をミネルバは優しく抱きかかえていた。
「帰っか、ジン」
「えっ」
「ここに長居しても意味がないだろ。お礼の言葉をもらったし」
後味が悪かったが、ロンの言葉で僕達は謁見の間をあとにした。
――――――――――――――
〈おまけ〉
「ポンポン痛いのじゃぁぁぁぁ!!」




